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その日、山部赤人は甲斐国から駿河国を経由して沼津の港より出港、伊予国へと向かう旅の途中であった。
季節は夏、6月のそろそろ本格的に暑くなろうかと言う時期、赤人は熱心に筆を執っていた。
ある出来事に感動し、歌を書かずにはおれなくなったのである。
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甲斐の国、駿河の国とあちこちの国をまたいでそそり立つあの富士の高嶺は現在、雲も通れぬ、鳥も近寄れぬ様であった。
山頂では燃え盛る火が雪が掻き消し、またその雪を火が消し去っていくその凄まじき変化の様は……なんと例えたら良いのであろう。




