第51話 知謀の扇と烏丸の茶房
歳久の口元が、わずかに嘲るように歪んだ。
「五歳の童が、己ひとりの知恵でサボンを作り、専売の割符を書き、木崎原の合戦で三千の伊東を狭隘地に嵌めたと? 笑わせるな。そのような化物がこの世におってたまるか」
「化物ではありませぬ。ただの、くたびれた男の成れの果てです」
俺は自嘲の笑みを浮かべ、淡々と紡ぎ始めた。
「俺には、この身体に宿る前の、別の世の記憶がございます」
歳久の眉が、ピクリと動いた。
否定も肯定もせず、ただ相手の観察を続ける、冷徹な分析官の沈黙。
「ここより四百年以上先。日の本が戦乱を終え、刀を捨て、鉄の車が地を走り、空を鉄の鳥が飛ぶ遠い未来の世です。俺はそこで、名もなき卑小な商人――企業の建て直しや、物の流れを滞りなく回す手配師をしておりました」
「未来の、世じゃと?」
「特別な英雄でも、天下を治める名将でもありませぬ。日夜、数字の帳簿と睨み合い、現場と上役の板挟みになり、過ちを犯せば怒号を浴び、ただ生き延びるためだけに身を削っていた男です。そして、冷え切った机の前で、心臓が止まって死にました。二十七歳の冬のことです」
板敷きを撫でる風が止まった。
歳久は微動だにせず、俺の瞳の奥を、網膜を焼き切らんばかりに見つめている。
「目覚めた時、俺は内城の北の丸におりました。日当たりが悪く、隙間風が吹き抜けるオンボロ屋敷の片隅です。十五歳の母上が、着古した小袖の袖で泣いておられました。蔵役人は配給を削り、冬を越す炭も米もない。五歳の肉体は短く、歩くことすら覚束ない。その時、俺の頭の中にあったのは、蒲生家の再興でもなければ、島津の乗っ取りでもありませぬ」
俺は自らの両手を見つめた。
十四歳の、まだ薄く、少しずつ節くれ立ち始めた少年の掌。
「ただ、死にたくなかった。飢え死にも、討ち入りによる犬死にも御免でした。温かい飯を食い、母上を守り、安全な畳の上で天寿を全うしたい。その生存の目的を果たすために、前世で培った物の作り方と商いの仕組みを引っ張り出しただけにすぎませぬ」
「サボンも、和紙もか」
歳久の声が、微かに低くなった。
「はい。椿油の性質も、アルカリの灰汁抜きも、シラスを濾過に使う理屈も、未来の世では初歩の手習いにすぎませぬ。木崎原で使った孟宗竹の防壁も、隘路で敵の足を止める配分も、兵站と物資の滞留を解消する計算にすぎない。だから、歳久兄上がどれほどくぐり衆を放って北の丸や獅子目を洗おうとも、影など見つかるはずがなかったのです。最初から、この十四歳の頭の中にしか存在しないのですから」
静寂が、再び部屋を支配した。
荒唐無稽。
狂人の戯言。
熱病に浮かされた小倅の妄想。
常人であれば、そう一蹴して刀を抜くか、嘲笑して席を立つところだ。
だが、島津歳久は動かなかった。
その鋭利な頭脳が、猛烈な速度で過去十年のすべての記録を照合しているのが、肌を刺すような空気の張り詰めで分かった。
なぜ五歳の童が、大人の商人すら手玉に取る契約を結べたのか。
なぜ一度も城外へ出たことのない童が、南蛮品を凌駕する石鹸を調合できたのか。
なぜ加久藤の狭隘地で、わずか十五名の手勢を率いて三千の敵の動線を完璧に制御できたのか。
なぜ大隅の不毛なシラス台地を見て、絶望する農民を尻目に迷わず唐芋の苗を挿し込めたのか。
すべてが、ひとつの狂った仮説によって、恐ろしいほどの精度でパズルのピースのように噛み合ってしまう。
「信じよと申すか」
歳久の喉仏が、ごくりと上下した。
「死した後の魂が、時を遡り、我が弟の腹に宿ったなどという天変地異を……この歳久に信じよと申すのか」
「信じる必要はございませぬ」
俺は淡々と首を振った。
「ただ、これでお分かりいただけたはずです。俺には、島津の本家を奪う野心など微塵もありません。跡継ぎの座など真っ平御免です。前世でも今世でも、組織の頂点に立って矢面に立つことの不条理を、俺は嫌というほど知っています。俺が欲しいのは、権力ではない。生きて飯を食い続けるための、盤石な領地と平和だけです」
俺は伏せていた顔を上げ、歳久の双眸を真っ直ぐに射抜いた。
「だからこそ、歳久兄上。俺のこの知識と、大隅の港と、これから生み出す富のすべてを――島津が天下の荒波を乗り切るための防壁として、兄上に預けたいのです」
歳久は息を呑み、固く結んだ唇を開くことができなかった。
怜悧を極めた軍師の仮面の下で、世界そのものが音を立てて崩壊し、再構築されていく戦慄が、その瞳の中で激しく渦巻いていた。
密室に落ちた静寂は、どれほど続いただろうか。
差し込む一筋の陽光が、畳の上をわずかに東へと滑っていった。
遠くで響く人夫たちの掛け声も、浜風が運ぶ潮騒の音も、障子一枚を隔てたこの空間からは完全に遮断されていた。
島津金吾歳久は、微動だにしなかった。
青い月代、冷徹に研ぎ澄まされた双眸、膝の上に置かれた白檀の扇子。
だが、その扇子を抑える右手の甲には、青白い筋が浮き上がっていた。
呼吸の音すら聞こえない。三十五歳の冷徹な軍師は、網膜に焼き付いた十四歳の少年の姿を、頭蓋の奥にある無数の引き出しと猛烈な速度で照合し続けていた。
五歳の童が、内城の廊下で差し出してきたサボン。
くぐり衆をどれほど放ち、北の丸の床下から日陰の生垣まで洗わせても、出てきたのは甚兵衛の素振りと弥三郎の小銭勘定と童の泥いじりという空振りの報告ばかりだった十年間。
大口の城番・新納忠元を唸らせた、木材手形を蹴って粗鉄と連歌集を要求した冷酷な等価交換。
そして木崎原――加久藤の搦手で、わずか十五名の手勢を使い、隘路の幅と兵の滞留時間を計算し尽くして敵三千の足を止めたあの合戦。
未来。
四百年先。
生き延びるため、飯を食うための、物の流れの計算。
「ふ」
不意に、微かな吐息が漏れた。
歳久の薄い唇の端が、歪に吊り上がる。
それは冷笑でも、嘲笑でもなかった。
理路整然と組み立てた知謀の城壁が、遥か上空から降ってきた巨大な隕石によって、跡形もなく粉砕された男の――乾ききった自嘲の笑みだった。
「くく……ははは……」
低く漏れ出た笑い声が、次第に喉を震わせ、やがて板敷きを揺らす大笑いへと跳ね上がった。
「はははははッ! わははははははッ!!」
外の蝉時雨をかき消すほどの高笑い。
歳久は膝の上の扇子を掴むと、激しく畳を叩き、身を折って笑い転げた。
額に落ちた乱れ髪を払うことすら忘れ、目尻に涙を浮かべながら、喉が裂けんばかりに笑い続けている。
表の板戸の向こうから、「ひぃっ!? 歳久様が狂われたァッ!?」と弥三郎の引き攣った悲鳴が聞こえたが、歳久は気にする風もなく笑い続けた。
やがて、呼吸を整えながら上体を起こすと、歳久は扇子の先で涙を拭い、呆れ果てたように俺を見据えた。
その瞳から、あの底冷えのする疑惑の氷が、完全に消え去っていた。
「降参じゃ。降参じゃよ、崇清」
歳久は嘆息し、パチンと扇子を打ち鳴らした。
「兄上の言う通りであったわ。『黒幕などおらん、あいつ本人が途方もない化物なんじゃ』とな! 儂はこの十年間、幻の老軍師の影を追いかけ、一人で暗闇に向かって相撲を取っておったわい!」
「信じて、いただけたのですか」
「信じるも信じぬもあるか」
歳久は鼻を鳴らし、机の上の青竹の器を顎で指した。
「これほどの菓子を作り、あのような防護の竹舟を浮かべ、痩せたシラスに草を植えて平然としておる小倅の正体が未来の死に損ないの商人だと言われてみよ。そちらの方が、南蛮の妖術だの蒲生の怨霊だのという講釈より、よほど筋が通って腑に落ちるわ」
歳久は居住まいを正し、鋭い眼光を俺に向け直した。
もはやそこにあるのは、領主と被疑者の関係ではなかった。
盤面を動かす、二人の対等な知謀の相棒の眼差しだった。
「よい。そなたに島津を覆す野心がないことは、骨の髄まで理解した。ならば話を進めよ。先刻、そなたが口にした天下最強の出先機関とやらの絵図面をな」
「お待ちしておりました」
俺は畳の上に、広げてあった絵図面を滑らせた。
描かれているのは、京の都――禁裏御所と、その目と鼻の先にある五摂家筆頭・近衛家の屋敷、そして烏丸通の一角だ。
「この冷たいかるかんカスタードは、極上の甘味ですが、最大の弱点があります」
俺は指先で器をトントンと叩いた。
「生ものです。卵と豆乳を練り上げた羹は、薩摩から都へ船と馬で運べば、途中で確実に腐る。運べないなら、どうするか。都の現地で、最終の仕上げを行えばよいのです」
「現地で、菓子を焼くだと?」
歳久が眉をひそめる。
「ええ。烏丸の近衛邸のすぐ隣に、小さな町屋を借ります。表向きは、獅子目で漉いた極上の蒲生和紙と、高須の塩、そしてあのサボンを商う小綺麗な店です。だが、その奥に小さな竈を据え、毎朝出来立ての菓子を蒸し上げる」
俺は図面の上に、丸を一つ描き足した。
「薩摩からは、日持ちのする自然薯の粉と米粉、それにサトウキビの砂糖だけを運ぶ。そして烏丸の工房で、新鮮な地卵と豆乳を使って、冷たい黄金のカスタードを挟むのです」
「待て」
歳久が右手を挙げ、鋭く遮った。
その顔には、長年中央外交を担ってきた男特有の、苦い渋面が張り付いていた。
「そなたの言わんとすることは解る。出来立てのこの菓子を近衛の奥向きや宮中に差し出せば、公家どもや女房衆は狂乱して飛びつくであろう。だがな、崇清。都に人を張り付かせ、常駐の屋敷を維持する銭を、一体どこから捻出する気じゃ」
歳久は扇子の親骨を強く握り締め、吐き捨てるように言った。
「儂とて、信長が上洛して以来、都に島津の目を置かねば大友に勝てぬと何度も考えた。だが、蔵役人の伊集院忠棟が頑として首を縦に振らんのだ。『前線の大口や飯野に送る硝石と米すら足りぬ時に、都の雅な茶房に毎年百貫文の銭を垂れ流す気か』とな」
「忠棟殿の仰る通りですよ」
俺は即座に首肯した。
「忠棟殿は極めて優秀な財務官です。戦時において、回収の見込みが立たない固定費の垂れ流しを拒絶するのは、組織の金庫番として百パーセント正しい」
「ならば、どうする! サボンが稼ぎ出す外貨は莫大じゃが、忠棟はそれを一文残らず前線の鉄砲玉と兵糧の買い付けに回しておる! さらに、都に島津の常駐拠点など作ってみよ。あの借金まみれの近衛家や貧乏公家どもが『島津は金蔵を持ってきた』と群がり、際限のない無心で蔵の底が抜けるわ!」
「ええ。だから、本家の蔵の銭は、一文たりとも使いません」
歳久が、息を呑んで固まった。
「忠棟殿が管理している既存のサボン利益は、全額そのまま、前線の鉄と米に使わせてください。烏丸の拠点は、完全なる現地独立採算で回します」
俺は懐から、薄削りの木板を取り出し、歳久の前に差し出した。
そこに墨で書かれていたのは、前世の店舗開発で叩き込まれた、損益計算の骨子だった。
「烏丸の店で売るのは、都では絶対に手に入らない極上の蒲生和紙と、宮中御用達のサボン、そしてこの出来立ての生菓子です。公家町や堺の豪商を相手に、暴利とも言える高値で売り捌く。家賃、原材料費、雑費。それらをすべて差し引いても、毎月二十貫文以上の純利益が現地で残ります」
「純利益、じゃと?」
「はい。つまり、本家から仕送りを送るどころか、都の公家や商人から毟り取った銭を、余剰金として毎月鹿児島の忠棟殿へ上納してやるのです。『金を出せ』と言えば忠棟殿は怒り狂いますが、『金を送ってくる』と言えば、あのそろばん侍は喜んで公認の判子を押しますよ」
歳久の喉が、ごくりと鳴った。
怜悧な頭脳が、俺の提示した数字の辻褄を、戦慄とともに検算している。
「さらに、公家どもの無心に対する防壁です」
俺は図面の奥、小さな部屋を指差した。
「銭を無心されたら、絶対に貸してはなりません。『当家はただの貧しい菓子屋でございます』と断ればいい。その代わり、店の奥に畳敷きの小さな茶房――談話室を設けます。そこに近衛家の若君や、公家たちを招き、極上の茶とともに、この世でここでしか食えない冷たいかるかんカスタードを振る舞うのです」
俺は薄く笑い、歳久の目を真っ直ぐに見据えた。
「金銀など、公家連中は見飽きています。彼らが欲しているのは、飢えた腹を満たす至高の快楽と、自らの文化的自尊心を満たす優雅な社交場です。『この菓子を毎日食いたければ、今日信長から届いた書状の写しを寄越せ』『大友が朝廷に何を吹き込んだか教えろ』と持ちかければ、連中は喜んで天下の機密を漏らしますよ」
歳久は、両手で顔を覆った。
指の隙間から漏れ出たのは、狂気じみた愉悦に満ちた呻きだった。
だが、その指がすっと開かれ、再び冷徹な分析官の光が瞳に宿る。
「待て、崇清。一つ、致命的な穴がある」
歳久が低く言った。
「その菓子を竈で作る職人、そして茶房で公家どもを相手にする手代じゃ。都の民間から雇い入れれば、必ず他国や豪商の間者に金で抱き込まれる。菓子の製法を持ち出されるだけならまだしも、奥の茶房で交わされる機密が筒抜けになれば、島津の喉首を差し出すようなものじゃぞ」
「さすがは歳久兄上。お見通しですね」
俺は頷き、笑みを深めた。
「当然、都の町人は雇いません。兄上の手飼いのくぐり衆から、手先の器用な者を三人、菓子職人と手代として送り込んでいただきたいのです」
「くぐり衆を、菓子屋に化けさせるだと?」
「ええ。製法と作業手順は、俺がこの頭の中の知識を全部叩き込んで完璧に仕込みます。島津に命を捧げ、拷問を受けても口を割らぬ忍びが、白前掛けをして竈でカスタードを練り、表で公家や女房衆の噂話に耳を澄ませる。これほど安全で、これほど完璧な情報収集ラインが他にありますか?」
「くぐり衆に……菓子を練らせる……」
歳久は呆然と呟き、やがて喉の奥から震えるような笑いを漏らした。
「この儂の手駒を、菓子職人に仕立て上げると申すか。だが違いない。奴らならば絶対に裏切らんし、毒見も防諜も一手にこなせる。これ以上の適任はおらぬわ」
歳久は息を深く吐き出し、手元の白檀の扇子を広げ、ゆっくりと胸元を扇いだ。
白檀の甘く清涼な香りが、初秋の空気の中に静かに漂う。
「ふふ。よい」
歳久の口元に、一切の迷いを削ぎ落とした、美しく獰猛な軍師の笑みが刻まれていた。
「乗ったぞ、崇清。その烏丸の茶房とやら、この歳久が生涯を懸けて差配して見せよう。大友の策動も、信長の中央集権も、すべてその菓子の皿の上で転がしてやるわ」
歳久は身を乗り出すと、扇子の先で、俺の額をコツンと軽く小突いた。
「その代わりじゃ、崇清」
「何でしょうか」
「あの冷たい黄色い泥の菓子、もう二つばかり持ってまいれ。あれを食わねば、知謀の回転が鈍って敵わん」
「承知いたしました」
俺が苦笑して頭を下げると、板戸の向こうで息を殺していた弥三郎が、安堵のあまり「腰が抜けたァ……」と盛大に畳に倒れ込む音が響いた。
島津の最高知性が、完全に味方となった瞬間だった。
軍事の義弘、武闘の家久、そして外交・知略の歳久。
大隅の泥濘の中で、後の天下を揺るがす「蒲生島津」の背後に、最強の政治的防壁が、いま鉄の楔となって打ち込まれた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、これまでずっと崇清を疑い続けてきた歳久に、ついにその答えを明かしました。
「五歳の童が、いったい誰に教わったのか」
「背後に誰かいるのではないか」
「蒲生家や南蛮人、あるいは別の勢力が、この童を操っているのではないか」
歳久がそう考えるのは、ある意味では当然でした。
サボンを作る。
専売の仕組みを考える。
商人と契約を結ぶ。
痩せた土地に唐芋を植える。
そして木崎原では、まるで兵法を知り尽くしたかのように敵の動きを制御する。
普通に考えれば、「五歳の童が全部やりました」では説明がつきません。
だからこそ歳久は、この十年間ずっと「見えない誰か」を探していた。
ところが蓋を開けてみれば――
見えない誰かなど、最初からいなかった。
そこにいたのは、四百年以上未来からやって来た、二十七歳で死んだ「ただのくたびれた商人」でした。
……という、本人にしてみれば壮大なのか地味なのかよく分からない正体でした(笑)。
そして今回のもう一つの重要な転換点が、歳久との関係です。
これまでは「領主・歳久が、謎の弟・崇清を監視している」という構図でした。
ここからは違います。
崇清は、自分一人で島津を動かそうとはしない。
歳久もまた、崇清を疑い続けるのではなく、その知識と発想を「島津という組織」の中でどう使うかを考える。
つまり今回から、二人はようやく同じ盤面に立ちます。
そして、その最初の一手が――
烏丸の菓子屋です。
天下を揺るがす情報網の第一号が、まさかの菓子屋。
しかも、その店員がくぐり衆。
白前掛けをした忍びが、朝から卵を割り、豆乳を温め、かるかんカスタードを蒸し上げながら公家の噂話を聞いている。
……歳久が乗り気になるのも無理はありません(笑)。
さて。
ここから先、物語は少し寄り道をします。
次回から三話にわたって、歳久外伝を挟みます。
今回の会談だけでは描き切れなかった、
「歳久は、この十年間、崇清をどう見ていたのか」
「なぜそこまで執拗に背後を探ったのか」
「くぐり衆は北の丸や獅子目で何を見ていたのか」
そして――
「歳久から見た崇清とは、いったい何者だったのか」
そのあたりを、歳久側の視点から掘り下げます。
本編だけを追っていると「歳久、疑いすぎだろう」と見える部分もあったかもしれません。
しかし、歳久には歳久なりの十年間がありました。
今回、崇清本人の口から語られた「前世」という答えを知ったことで、その十年間の出来事が、歳久の中でどう組み替えられていくのか。
そこを三話かけて描きます。
そして三話が終われば、再び本編へ。
舞台は薩摩から京へ。
烏丸の小さな菓子屋から、島津の情報戦が始まります。
……もっとも、その情報戦の最大の原動力が、
「冷たい黄色い泥の菓子をもう二つ持ってこい」
という歳久なのは、どうにも締まりませんが(笑)。
それでは、しばし歳久の十年間にお付き合いください。
あと今回、言葉にしておきます。作者は島津四兄弟はバケモノレベルの優秀な人だと思っています。この物語でこの人たちが崇清のカマセになることはあり得ません。
次の三話は、**「歳久が見ていた崇清」**の物語です。
次の投稿は19時です。




