第5話 「放課後・立ち食いそば」
入学式も終わり、なんのイベントすら起こらなかった
帰り道
「りりっぺ、今日はマックじゃないの? 意見聞かせてー」
「うむ。今日は立ち食いそばなのである」
「なんで?」
「青春だからである」
「……意味分かんない」
私は券売機の前で、真剣な顔をして食券を購入した。
放課後の女子高生なら、ハンバーガーショップで友達と駄弁る。
それも青春だろう。
しかし――。
「私は、あえてこちらを選択する」
立ち食いそばのカウンター。
その向こうには、仕事中に一時のオアシスを求めるサラリーマンたちが並んでいる。
「ほら、ゆっきー」
「何?」
「社畜のサラリーマンを眺めながら食べる、立ち食いそば。これぞ青春なのである」
「その青春、嫌すぎない?」
「何を言う。数年後には、私もあちら側に分類されることは確定しているのである」
「勝手に決めないでよ」
「だからこそ、今のうちに謳歌しておくのだ」
私は出来上がったそばを受け取り、カウンターへ向かった。
ずるっ。
「……うむ」
温かい。
出汁が染みる。
そして、目の前には今日も仕事に勤しむ大人たち。
(数年後、私はあちら側に立っているのだろうか)
ネクタイを緩めながら黙々とそばを食べる男性。
スマートフォンを確認しながら、急いで食事を済ませる女性。
誰もが、それぞれの一日がここにある。人間ドラマ劇場である。人それぞれ、個人のストーリーが。
(……ふむ)
「どうしたの?」
「いや……」
私は箸を止めた。
「青春とは、今しかできないことではなく、今しか見えない景色を眺めることなのかもしれない」
「……急にまともなこと言うじゃん」
「もちろんである」
「じゃあ、少しは感動した?」
「うむ」
私はそばをすすった。
「大人になったら、もっと高いそばを食べたいのである」
「そっち!?」
ゆっきーのツッコミが店内に響いた。
(まあ、それもまた人生の構造なのである)
私は残った出汁を飲み干した。
今日の青春、完食である。
そして、電車帰り ふむ、この時間ならばポール角は確定なのである。
「りりっぺ、またポール角の事考えてるでしょ? あんな支えに頼るんではなく、こう体の軸を正道に保ち、、、、」
「シャラップである.私は、ゆっきーと違い、武闘派ではなくインテリジェンスなのである。」
「りりっぺ、私に失礼だよ、せめて、体育系女子か運動系 活発女子って呼んでよ」
「この空手バカチンがー!」
「何よ、 りりっぺはただの運動音痴じゃん」
そして、朝に買ったハードグミを2人で分け合いながら、
帰路に着いたのである
次話に続く




