第14話 「帰宅ルート・因果図」
前書き
高校生活二日目。
まさか、初日に出会ったクラスメイトたちと、放課後にファミレスへ行くことになるとは思っていなかった。
しかも、五人組になった。
さらに、全員の生活圏まで妙に近い。
(……これは偶然なのか?)
そんなことを考えながら、今回もりりっぺの脳内構造分析は、勝手に暴走していくのである。
第14話 ローカルネットワーク
さて、ファミレスからの帰り道。
帰りの駅の改札前。
ここで自然に、
「お疲れ様ー、じゃあね!」
と、それぞれの路線へ散らばっていくのが、健全な高校生グループの王道というものである。
駅に着いたがいいが、聞くところによると、サムライガール春と、しれっとファミレスで支払いに仮想通貨支払いを提示して、割り勘支払いを何気に誤魔化したトークンガール早苗と、聞き手の受け身型のリベロ女子こと、担い手ガールの姫。
普通ならば、駅に着く。
各方面にばらけ、上下に住居が散るはずの構造なのだが……。
ほぼ地元が同じ。
隣の中学とか、その隣とかである。
(……この駅の改札、どこかに抜け穴はないものか)
各々がそれぞれの沿線に吸い込まれ、スマートに解散していく。
そんな青春のテンプレ的光景を微かに期待していた私の希望は、駅のホームに吹き抜ける謎の香ばしい焼き鳥の香ばしい風と共に、綺麗に散り去った。
「うむ、急に焼き鳥が食べたくなったのである。」
(近々、お鳥貴族様でお持ち帰りをしようと
心に決めたのである。タレに塩にスパイス3種盛りの味は鉄板である。チキンが私を呼びせるのである。)
(鼻腔を擽る仄かな甘みが食欲を〜、みたいな
ソムリエ作品みたいな台詞は私は言わないのである.
私は、ワインの漫画を見て、ソムリエとはあんな感じに
味わいを物語風に伝えると、勘違いしていた過去がある。
A I先生により、あれはないですよ、と、教えてもらい学んだのである。)
サムライガールこと春。
ファミレスのレジ前で突如『キラートークン』を爆誕させ、現代の決済システムに喧嘩を売った早苗。
そして、すべてを静かに受け流すリベロ女子・担い手ガールの姫。
普通、ここまでキャラの濃さが渋滞している面々であれば、生息地はきれいに分散しているべきなのだ。
学区の壁。
沿線の壁。
学歴の壁。
それらによって、互いの生活圏は不可侵領域に保たれるはずである。
だが、現実はどうだ。
隣の中学。
そのまた隣の中学。
地図を広げれば、私の自宅を中心とした半径数キロの極小エリアに、この脳筋と変人どもの実家が完璧に網の目のように密集している。
(……詰んでいるのではないか?)
逃げ場など、最初から用意されていなかったのだ。
学校の初期配置ガチャに外れただけでなく、放課後の帰宅ルートまで同じローカルネットワークで完全に同期されている。
私の『シルバーチャリンオッツ』の1円玉すら届かない、あまりにも強固な地元の因果図。
これは偶然の産物か?
それとも、私の人生の構造を根本からバグらせるための、神様による悪質なチュートリアルなのだろうか。
(いや、考えても無駄だ)
私は諦念を乗せ、自動改札機にICカードをタッチする。
背後から聞こえてくる、
「ねえ、明日の朝練さー」
という声を聞き流しながら、私は今日も、この逃げ場のない因果のレールの上を帰路へと歩き出すのである。
この出会いも、人生による因果なのか?
(……待て)
自動改札機を抜けた瞬間、私の脳内センサーが不穏な波形を捉えた。
「明日の朝練」――。
その単語の裏に隠された、さらなる構造的欠陥に気がついてしまったのだ。
隣の中学。
そのまた隣の中学。
そして、このローカルネットワーク。
もしや、このエリア自体が、何らかの「特殊な磁場」を帯びているのではないか?
普通の人間が住むには密度が高すぎるこの空間は、もしかすると、全国から選りすぐりの「スタンド使い(あるいは脳筋)」を強制的に引き寄せるための、行政の極秘プロジェクトの一環なのでは――。
(いや、そこまで考えるのは、私の脳が疲弊している証拠だ)
しかし、事実として、彼女たちとの因果はここで途切れないのである。
明日も、明後日も、そしておそらくこの高校生活の三年間、私はこの半径数キロの因果図の中から一歩も逃れることができないのだ。
(これが……私の選んだ「青春」の初期配置)
改札の向こう側、夕闇に溶けていく彼女たちの後ろ姿を見送りながら、私は小さく息を吐く。
『シルバーチャリンオッツ』の1円玉は、今日も静かに募金箱の底へと沈んでいく。
(……明日も、プロテインの話を聞かされるのだろうか。確かに色々な味があり、ゆっきーに飲まされまくったのだか、味は、ファミレスのハイブリッド飲料よりも美味しかったのである。粉っぽくなく、意外といけるのである)
絶望と諦めが混ざり合う帰り道。
仕方なし。分岐が決まれば、対策を無数の分岐の対策を考え、即座に切り替えるのみであるのだ。
私の高校生活2日目の幕は、こうして静かに、しかし確実に、カオスな方向へと閉じていくのであったのである。
次話に続くー
あとがき
第14話まで来てしまったのである。
まだ高校生活二日目である。
……なのに、もう五レンジャーである。
スタンドまで出てきた。
そして、地元まで近かった。
(作者にも、これからどうなるのか分からないのである)
基本的な流れだけ決めて、あとはりりっぺに任せてみようと思う。
果たして、この五人組はこれからどうなってしまうのか。
私にも分からない。
それでは、また次回。




