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2人の魔女  作者: しゃま
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第2話





バスが駅前に到着し、そこから自転車に乗って帰る秋葉とお別れした。私は改札を通って4つ先の駅まで電車に揺られる。今日は色々あったな……なんて振り返っている自分が珍しかった。普段はそんなことなくて、適当に音楽聴いたりスマホとか触って虚無モードだったから。



ここのところ、ずっとそんな風に時間の渦に飲み込まれていた気がする。電車に乗ってバスに乗って、みんなの話や相談を聞いて、勉強して。楽しいけど楽しいだけじゃないから、そこを心は一つ一つ情報の処理を済まさなきゃいけないわけで。とっくに限界が来ているから無の表情になるのだ。



そして告白を断ることまで日頃のルーティンになっていたから、私の精神は放っておくと危ないところだったのかもしれない。ストレスに関する大切なことを教えてくれた彼女に感謝しよう。そう思いながら自宅まで歩いていった。



 



郵便ポストの中を全部回収し、取り出した鍵で玄関を開け、カーテンを閉めてから部屋の電気をつける。お風呂のスイッチを押し、着替えながら今日の夕食を考える。

と言っても、和食が好きだから簡単に魚を焼いてみそ汁を作って副菜を足すだけなんだけど。準備が簡単なので好きという理由が9割だ。



ひとりで夕食を終えると甘いものが食べたくなった。今日は色々あったからな……と、帰りにコンビニで買ったホワイトチョコの板を何個か折って口に入れる。あまりスナック系は好きじゃないし、必要以上に欲しいと思わないからそれが髪に良いのかもしれない。髪先を触られたのを思い出してもっと綺麗にしておこう、とお風呂へ向かった。



頭から脚まで丁寧に洗う。鏡には湯に濡れた私の髪と顔と上半身がいて、はっはあエロいな、と思うけど、私は鏡がある時くらいしか見れないのだから常にこれを見る周りの方がオトクじゃないか。スマン調子に乗った。



そんな傲慢な不満をもしも解消したいというのであれば、1日ずっとスマホの内カメラか3面ミラーを自分に向けていればいい。でもそれは現実的ではないからどうするべきか?と余計な考えを馳せていると、それ以上に満たされるものが眼前にあれば万事解決だとひらめく。



それ以上のもの……煌めいていて自分を魅了するもの。思い浮かぶのは……秋葉だ。彼女が常に目の前に映り続けていたらどうか?満足するだろうか?あの憂いを帯びた美しい顔と長い腕に飽きるまで包まれていたら…………それを体験できる奴は幸せ者だ、うんと大納得して湯船の時間は終わる。私は何を考えているんだろう。




  


お風呂を上がって、テーブルに用意した母のための食事を眺める。9時になっても帰ってこないから、今日は食べないのかもしれない。


 

……母親は社交的だ。いつも色んな友人達と女子会のようなものに集まっているらしく、話が盛り上がるのか何なのか平均的に夜まで帰ってこない。でもごはんは食べたいというので一応用意している。



……父親は仕事が毎日長引く、らしい。朝しか顔を合わさないし、本当に仕事の理由で帰宅が遅いのかどうかそんなことは知らない。昔、何かのきっかけで母と激しく口論して以来、彼はこの家との心の関わりを切ったみたいだから不倫していたって驚かないくらいには信用していないし、冷め終わっている。



この2人の関係は、一枚の紙の上でつながっているだけなんだと小学生の頃から知っていた。だから「どうしてそんなことを続けているんだろう?」と中学生になってからは不思議に思っていたし、今は「社会って面倒くさいね」と彼らに同情してさえいる。



もともとはっきりとしていたものが今、表に出てきてお互いの線が交わらなくなっただけで……これ以上私が思うことは何もないけど、この家に早く帰りたくはないというのが正直で当然な今の感想だ。

 


昔は、キッチンでもう少し母親を待っていた。一緒に食べることが目的だった。でも、今は彼女が帰ってきても部屋に居ることにしている。



世の中には分かり合えない人というより、ハナから相互理解する気もなく「まだ分からない」とその場で足踏みしたいだけの人がいて、暴論ではなく両親はそれに当たるんだと思う。なぜなら……彼らは私に「迷惑」をかけているから。


 

秋葉と接していて思った、心を守らなければいけない、と。私は……こういう人たちとは違うから。今後もっと自分のために時間を使わなければいけない。


 

何も変わるつもりのない関係は「呪縛」でしかないのなら、その縄をほどいて自分から自由になろう。もうその一歩は出ていて、私も彼らの線とは交差しない。






 


次の日のお昼休み、チヨ吉と未佳に失礼のないようなまともな嘘をついて、今後しばらく放課後は遊べないと話した。



「え……咲希もしかして……彼氏できた??やばぁ!!エグいってっ!!スクープすぎんじゃんっ!!2人で撮ったやつ見せてよ!!」



えぇ……図書室で進路の情報収集と勉強する、ってところからどうやってそこに飛躍するんだかよく分からない。



「ほんと?ほんとに?相手絶対イケメンっしょ?うわ〜美男美女の神降臨きた〜っ!誰よっ?誰なんっ?」



この時、私の中で珍しくいいことを思いついた。図書室ウソ話と並行して、この友人たちが興奮している彼氏話にも乗っかると交際のウワサが自然と広まり、男子達がおそらくやっている告白ゲームなるものに終止符が打たれやしないか?我ながら天才だ。



正直なところ、本人的には本当に困ってるんだからもう手段は選ばない。終わらせられるなら……やるか。

ええと…………な、な〜んだバレちゃったぁ?実はさ、違う高校なんだけど最近知り合ったんだよねぇ〜はは……と急方向に舵取りしてノープラン大航海がはじまる。2人は寒空の屋上でテンションブチ上がって「ひえぇ!!!マジでぇぇっ!!!」と叫び出す。



「どどどどんなっ??見た目は??背は??似てる芸能人は??というか相手芸能人??」

 


えーとね〜そうだね〜、と、もったいぶるフリで考える。告白ゲームを完全に止めるにはこの高校全体に完璧に広がるデカい話じゃないと。う〜ん芸能人ねぇ……と思っていたらまたひらめきが降りてきた。……そうだ秋葉だ。



「えとね、見た目はクール系で〜身長は高いよ。すごいかっこよくて優しくて〜本人は言わないけどたぶん芸能人のむす……息子じゃないかな〜?よく知らないんだけどね〜はは」



なぜか2人して無言で、私と自撮りをはじめた。手が震えてハァハァ言っている。



「……よし。これで親友証明完了。これを彼氏に見せて下さいまし咲希様……あわよくばお近づき賜りたいので……」



「……げ、芸能人……さっすがビジュ最強、どこまでも無双するデフォルト優勝高校2年生……かーっ!!羨ますぃ〜っ!!」



……とりあえず情報(ネタ)は渡した。あとは一気に伝わってほしいので「え〜と2人とも、このことはみんなに言っても大丈夫だけど、もし何か色々聞かれたらまだ付き合ったばかりらしいよって答えてね」とつけ加えた。……まあ、これだけ言えば数日以内にはウワサが定着するかもしれない。そうすればもう「フリゲー」とか「魔女」とか勝手なこと言われたり巻き込まれたりとかはしない。たぶん。


 



……と思ったら、その日の午後にはかなり知れ渡っていた。2人の交友&LINEネットワーク怖すぎる。



クラス内で質問攻めにあうだろうというのは想像できた。でも何となく、触れてはいけない的な視線で私を見る人もいて……廊下にいる男子達の雰囲気も、なんだかメモを渡して来るような感じではなくなった気がする。……みんなごめんね、嘘で色々申し訳ない。それでも、私の精神を守らねばならないから許してくれ。



まあでも、今までより楽だった。そうだよね〜芸能人と付き合ってるなんて聞けば反応そうなるよね〜と、心なし悠長にロッカーを開けて教科書をしまって扉を閉めて……とやってたら、すぐ側に芸能人みたいな秋葉が立っていてぎょっとした。美人は時にホラーになるんだからやめてくれ。



「丹海、トイレいこ。」



おそらくトイレではない要件だということを察して、その場に立ち止まらずにすぐに移動する。このあたりから離れて、渡り廊下の真ん中で立ち止まり、秋葉はくるっと振り向いて

 


「……本当?」



と、ドラマのワンシーンのような見事な質問顔で聞いてくる。ああ、クラスの子たちが言ってる推しとか神という気持ちはこれか……と分かって。色々圧倒される前にすぐに「どこまで聞いたの?ウワサを」と聞いてみたら



「……丹海が、格好良い芸能人と付き合いはじめて…………かなり進んでるってところまで」



おいおいめちゃくちゃになっていた。えぇ……さっきの何とも言えない目線はそういうことだったのか。みんなに嘘をついた代償は大きすぎるがこうなってしまっても私にやれることはないのでそこはもう放置する。今は彼女を無駄に赤面させた奴に重大な罪を問うべきだろう。元を辿ればそれは私だ。はは……



ごめん、それ嘘なんだと打ち明ける。これまでの告白ラッシュの件はふせておいて、男子とかが結構言い寄ってくるんだよ〜って言うのも何だか感じ悪いし、『私ね、付き合うとかそういうの分からないし抵抗ある方だからさ、遠ざけてもらえるようなことをわざと友達に話したんだ』と本当のことを伝えた。


 

「え……じゃあ『かなり進んでる』っていうのも……デマ?」


 

秋葉はまだ頬を赤らめている。そこぉ、切り取って言わないでほしい。伝言ゲームの途中で誰かがそんなことを言ったのだ、噂って本当に噂だなと痛感する。

そうだよ、全部作り話だから信じないでね。と言ってもまだ、あごに手をやりそうな複雑な表情をして



「……芸能人、は大変だからやめたほうがいいよ」



と、なんだか意味深なことを言いはじめた。向こうから割と踏み込んできたので、この際だから聞いちゃおうと周りに人がいないことを確認して小声で『ウワサといえばさ……秋葉がHISUIっていう歌手とよく似てるって、子どもじゃないか?っていうの、本当?』と思いきって質問した。今日の私は攻めてるね。



あまり音楽関係に詳しくない自分でも名前は知っているくらいに有名な人だ。みんな聞きたいけど聞けなかったことなんだろうし、私が代表してインタビューしよう。かといって他に言いふらしたりはしないし、とにかく仲良くなってきて全く触れないのもどうかって思うところあるじゃん、と開き直っていると、秋葉は表情を動かさずに口を開いて……



「芸能人…………とは、付き合ってないの?」



ってまだその話をしてるんかい。私はそんな人たちと一度もお近づきになったことなんてないよ〜なれたらすごいし、いいなって思っちゃうけどね〜?と、そのままの本音を公言していたら秋葉は私の耳に顔を近づけて



『私といると、なることに……なるかも』


 

と、そっと明かした。……え、どういうこと??やっぱりウワサは合ってるってこと??と結構大きめな声が出てしまったら、彼女は少し苦笑しつつ唇にしーっと人差し指をつけてうなづく。……ひえぇ、まじでぇ!!



本当に限られた人にしか教えてないよ、とトップシークレットをこちらに預けてきた。……まじか、私は芸能人の関係の者とお友達になれるのか。これこそ全校生徒に言いふらしたい最強のネタだろう。私の余計なウワサ話のことなど頭から一瞬で吹き飛んだ。


 



一連のイベントのせいで残りの授業は何にも頭に入らず、それはクラスの男子も女子も同じみたいだった。みんなごめんね、嘘の話で盛り上げさせちゃってさ。でもそういう過度な装飾みたいので人の心に非日常の潤いを与えたりするのも悪いことじゃないでしょ、と芸能人でもない自分に言い聞かせていく。



帰りのホームルームを終えると、特に女子がわっと駆け寄ってきて質問タイムがまたはじまる。秋葉はそのうちにさっと教室を出た。

広めた内容が原案者のものとは違う過激な方向に改ざんされていたので、チヨ吉と未佳にもう一回「確認」をして、あとは適当に受け答えし、何となくはぐらかす。こういうのが私の特技なのかもしれない。それはそれでどうなのか。



ようやくみんなが帰る時になったから、じゃあねと図書室の方へ行くフリをしてこっそり一階へ向かう。すると保健室前の廊下にはほとんど誰もおらず、チャンスだ。私は秋葉からあらかじめ渡されていた鍵ですぐ隣の倉庫室の扉を開け、中に入った。



彼女の説明通り、その部屋は保健室とつながっていて一番奥にドアがあった。静かに開けるとカーテンで包まれた保健室の3番目のベッドがあり、秋葉はふとんの上に座って脚を伸ばして雑誌を読んでいた。


 

他の生徒は誰もいないようだ、カーテンを通り抜けて先生にこんにちはとあいさつをする。デスクに向かったまま「見つかったら困るでしょ、私に構わないで」と白衣の先生は書き物をしながら忙しそうだ。戻ろうと思ったら「ああそうだ」とベッドの方へ歩いていく。



「あなたたちに特別ね。なんかゆっくりするには狭そうだから」



窓の側に四角い小さな木のテーブルとイスが2つ置いてある。美術室で使ってないものを持ってきたらしい。でも……わざわざそんなことしてもらっていいのか。



先生は、静かにスマホを触る秋葉をじっと見て



「う〜ん、最高。」



なんて言い出した。それを説明するかのように



「安子先生は私の母のファンだから。何でもお願いしたら聞いてくれるよ」



秋葉が突然言い出してえっ!?ってまた声が出た。そういうことなのか、この特別待遇は……納得だ。って、やっぱりお母さんはあのHISUIという事で確定か、ほぉ……と、安子と2人して彼女を眺めていたら「……なに?」と少し恥ずかしがってこちらを見つめてきた。いや……これは沼るでしょ。



「私がここに不在の時に他の生徒が来ても構わないでいいから。あとは適当にしなさい」

 


安子は秋葉を見て満足したのか、入口近くのデスクへ戻っていった。うちの高校内はスマホ禁止だけど、どうやら普通に許可しているようなので早速かばんから取り出して、イスに座って……



「こっち。空いてるよ」



と、言われましても。ベッドに座っている秋葉が隣を叩くけど、ちょっと狭そうだ。いやいいよ、2人だときつくなっちゃうでしょ、ここでいいから、と言ったら微妙に不機嫌な顔になり、微かにほっぺたをぷぅと膨らませて



「そこじゃリラックスできない。寄せたから。はい」



とまた隣を叩くので、仕方なく靴を脱ぎ、お邪魔します……とスカートがシワにならないように座る。距離が近い故に、彼女から発せられるハーブのような大人な香りを感じて勝手にオトクな気分になった。まるで彼氏になったような……いや、彼氏だったら私より秋葉か。自分より2センチくらい背が高いみたいだし。って何を考えてるんだ。



「大丈夫?狭くない?」



うん、大丈夫だよ、ありがとうと言ったら、私のことを数秒間見てからパッと前を向くのでなぜ?と覗き込んだらさらに左を向かれた。



「丹海……表情、すごいから」



前々からそれを言うけど一体何なのか。分かりやすいって意味なのかもしれない。確かに私はババ抜きとかそういうポーカーフェイス事をするのは無理で、思ったとおりに表に出すことしかできないのだと思う。秋葉の方が表情変えないからオトナですごいよ、と褒めると



「ありがとう……でも、丹海みたいになりたい」



って、お褒めの言葉をいただいた。……まあ世界なんてそんなものだよね、お互いに憧れて、なりたいって思ってて。


……私が秋葉になったらね、可愛い女の子を集めて部活動を作るよ、って言ったらすごい笑った。そんなツボ?


なんでそんなこと……と聞いてくるから、そりゃ秋葉の絶対的美貌があれば何でもいうこと聞いてくれるじゃん、だから部長として「来ない?」って好きな子をスカウトすれば確実でしょうし、秋葉相手ならみんな楽しくて素敵なことおしゃべりしてくれそうだもん、と、話せば話すほど笑ってくれた。めっちゃ可愛いんだが?



『秋葉が私になったら何するの?』


気になる質問をしたら、しばらく黙ってから「悪女になる……」と言われた。えぇ……どういうこと?と聞くと「丹海の顔なら……何人と同時に付き合っても周りが許してくれそう」なんて、とんでもないようで私と似ているようなことを考えててこっちもあははと笑ってしまった。



そんなの今の秋葉だってできるでしょ?みんなの心をとっくに掴んでると思うけど……って伝えると、ちょっと寂しいような切ないような目で遠くを見て。



「みんなをみんな、愛せるわけじゃないけど……仲の良い子たちと私が……一緒にいられたらいいのに」



それは……私も小さい頃、思ったことがあった。小学生のとき、遊んでいる最中にふとその場で立ち止まったのだ。「このまま『今』が終わるのは嫌だな」って。



分かるよ、そう思ったことあるもん、と言うと彼女に勢いよくこちらを向かれて。それでじっと私を見るから見つめ返すとまた前を向いて、覗き込むと「表情、なんで……」と言いながら左を向く。なぜ?はこっちだ。



のどが乾いたのでベッドを降りて、買っておいた紙パックの飲み物を取り出す。秋葉のもあるよ、飲もうよと誘うと「私も持ってきた」ってかばんから饅頭や最中を出してきて、いいねぇ渋いねぇ〜と評価したら「和菓子好きだから」と照れていた。着物とか超絶似合いそうだ。



2人で椅子に座り、小さなテーブルを囲む。ねぇそういえば私たち「2大魔女」って呼ばれてるらしいよ、知ってる?なんて聞くと、うなづいて「私そんなじゃない、丹海の方がそれっぽいよ」と褒めてるようなそうでないような事をおっしゃった。えぇ……私そんな悪女なの……?



それらが全部顔に出てしまっていたのか「ごめん、良い意味でだから」とかクスクス笑ってフォローされる。くうぅ、笑えば済まされる魔法やら魅了やらを使っているのはそっちでは。そうつぶやいたら「丹海だってそうでしょ。すごく可愛いし。私なら引っかかっちゃうかも」ってまたクスクス悪いこと言われた。本当に鍋で惚れ薬でも作って盛ってしまおうか。



 


こうして、誰かとお茶をするのは久しぶりだ。どんな他愛のない話でも心が満たされる気がする。



レモンティーとココア、どっちがいい?と問う間に前者に手を伸ばすので、ココア嫌い?って尋ねると飲んだことない……なんて、秋葉は子どものような受け答えをした。


  

「名前が嫌いだから、飲まないって決めてる」


 

ふ〜ん、とパックにストローを刺して私が飲む。へぇ、チョコレートのように濃厚ではないけど、飲みやすくてそれほど甘ったるくない万人向けの味だ………心で食レポをしていると、試しに飲んでみたいと言ってきたのでどうぞと手渡す。



とても無表情でそれを一口吸って、すぐ返してきた。ダメだったのかな?



「……こんな味だったんだ、…………おいしい」




そうだよ、ココアなんて嫌いな人ほとんどいないよ、みんな好きだよ、と言ったらなぜか「ありがとう」と言われた。夕陽の中、すべての時を止めるように



  


「丹海が……一緒でよかった。」




 

笑顔(まほう)を魅せてきて。

幼い頃に、ひとつ願っていたことが思い起こされないわけがない。



  

――「こういう瞬間がずっと続いてほしい」と純粋に思う。子どもじゃなくて、17歳の私が思うのだ。





『…………私も、秋葉に会えてよかったよ。これからも一緒に………………』





    


……………………………………………………………………………


  

…………………………………………………………………


     

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……………………



……………



…… 



……………



……………………


  

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……………………………………………………… 


 

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……これは…………思い出、だ……私の……





 

 

――振り返っていた。

  短い人生の中で、一番に大切だった記憶を。



 




  

 

―――――


 



 

 


 

私は気がつけば、静かに立っていた。誰かの説明が頭の中で聞こえて、地球は終わったんだという情報が自然と理解されて浸透して、そして……




――『にう、おきて、丹海…………』




……そうだ……私の名前は……丹海 咲希。


 


……それからこの声は…………どちら様…………?



 

――『忘れちゃったの?私は丹海のこと、思い出したのに。』






  






 

 

突然視界が回転し、暗闇の中で意識を戻した。 


 

 

目を開けるとそこには眠っている秋葉がいて。私はベッドの上で彼女の長い腕に抱かれ、横になっている。



う〜ん、と眉を寄せて彼女が目を覚ます。静かに瞳に私を映し出して、そして少し申し訳なさそうに笑った。


 


「丹海……よかった……ごめん………忘れてて」


  

 

声を聞いて、なぜか私の目が潤む。



 

再会したからだろう、長い夢を越えて。

失ってはいけない名前と、大切な友人ともう一度。


 


秋葉は私を抱きしめた。両目から涙が流れてきた。



 

一度死んだからかもしれない、また会えたからかもしれない。分からない。すべてが溢れて止まらなくて、私はもう一度生まれてきた赤ちゃんみたいにずっと泣いた。

  



  




 


 



つ・づ・く 

 



 


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