第1話
「……で、例の彼氏がさぁ、急にめっちゃ嫉妬してきて、うわ〜こいつこういうタイプだったかヤベーってほんとドン引きしたんよ」
「えぇ……まじメンタルガキっしょ、そういう男〜」
少し風が肌寒くなってきた学校の屋上で、クラスメイト2人のいつもの過激女子トークが繰り広げられている。へぇ面白いなあ、色んなこと思うなぁって、ちょっと遠くから眺めながらメロンパンを食べつつ、会話は基本受け身だ。
「咲希はどう?ゲーセンとか行くけど放課後……って、その顔はまた『アレ』っすか?いっそがしいなぁほんと」
はは……と引きつって笑うだけで事情を分かってくれた。ありがとう友よ。
「そうだよ〜チヨ吉、ニウちゃんにはね、やんなきゃいけない『フリゲー』の任務が毎日あるんだからっ」
フリゲーって……私が告白をフってること言ってたりするのか。確かにこの2人には一度だけクラスの男子の話をしたことはあるけど……その様子だと私のやってることが最近は2日か3日おきの日常になってるって既に知っているようで。
放課後どこかに呼び出されるイベントは高1の時からだから情報漏洩も何も、全体公開みたいに私に関することがみんなに共有されてしまっているのだろう。
でもそんなサバゲーとかフリーゲームみたいな感じで言わないでほしい、真剣な相手に丁重にお断りするのは毎回大変なんだから、……なんてこと言えば言うほどマウントでしかないのだから黙って笑っているのが一番だ。
「いや、モテ女すぎるわ。もうずっとさあ、校門のところにいつも他学校の連中いっぱいいるじゃん?スカウトも来たことあるってほんと?」
え〜そうなの?よく知らないけど〜と適当にごまかした。高校1年の頃、送迎バスが到着する駅前から尾行していたのだろう、クラスメイト達と喫茶店にいたらそれらしき事務所の人に名刺を渡されたのは本当のことだ。そのあたりから情報が漏れているって分かるとちょっと複雑な気分になる。
「違うよ、他の学校の男子とかはたぶん私じゃなくて秋葉さんを見る目的でいるんじゃないかな?」と、おそらくの事実を言うと2人は途端に盛り上がりはじめる。
「そ、れ。咲希もクソ可愛くてエグいけどあの方もマジクソ美人すぎて神がかってる。高2で同じクラスになれたの最高過ぎでしょ。本人否定してるけどHISUIすぎて隠しようもないし芸能人ってちげえな〜って思っちゃうわ。あたし、ここたんに相当話しかけてるから友達認定されてるね。おめぇもバンバンいけよ未佳〜」
「いやぁ〜秋葉さんはオーラありすぎて近寄れないから。クラスのみんなも世界遺産だと思って接してる感じっしょ。あ~でもレアだけどさ、笑った顔がメロすぎなんですよ〜はぁ……」
ウワサが本当かは分からないけど友人たち(高良 千代と曽田 未佳)によると、どうやら同じクラスの秋葉 ここあさんと私、丹海 咲希は、この高校で人の心を弄ぶ「2大魔女」と呼ばれているらしい。どうしてそんな。
お昼を終えて教室に戻り、集まっている男子や女子達とチャイムが鳴るまで暇をつぶす。周りが色々とおしゃべりして、私は当たり障りなく笑って、次の授業の教科書を廊下のロッカーを開けて取り出していると「丹海さん、これ……」と、見知らぬ男子から通りすがりに小さなメモ書きを渡される。
丁寧な文字で『放課後いいですか?体育館の裏の所で待ってます』と書いてあり。ブレザーの内ポケットから今日の午前中にもらった他の男子からのメモを取り出して並べると、出だしから文面がそっくりそのままで『3階の渡り廊下』という箇所が違うだけ。決定的なのはメモ紙の紙質も同じということ。ここ数ヶ月こんなのばっかりで。
あれだ、もうすぐ高3で卒業前に〜みたいな気軽なノリで男子の仲間内の告白チャレンジみたいなものに巻き込まれてないか?と思いたくなるし、実際そうだからあんな悪名が広まっているのだ。片っ端からフリまくる『フリゲーの咲希』という酷いイメージが裏では本当に定着しているのかもしれない。断っているのは本当だから何も言いようがないけど……「魔女」はひどいし、みんな便乗して参加するとかそういうのはやめてほしい。
昼過ぎの憂鬱な授業がはじまり、周りと同じく私も頭が下がったり上がったりしてノートの文字が日本語のはずなのに筆記体になっている。窓の外でも見て目を覚まそうと横の席の方を見ると、窓際に座って頬杖をついたまま眠る秋葉さんがいた。
長い髪が11月の風にさらさらと揺れ、横顔から脚先まで午後の光を浴びて。これは……告白できない、と思った。高校生活においておそらくこれまで誰にもされていないでしょうし、今後もそんな猛者は出てこないだろう。そう思わせるほど神、というか神々しくて、教室で彼女を見るたびに未佳の言う通りオーラみたいなもので圧倒される。
だから、そういうことなのだ。あちらにいる秋葉さんの代わりにみんな、こちらへやってくる。
ものすごく思い上がりのような事を言ってるかもしれないけど全く外れてはいないだろう。それくらいの言葉にはできない空気感を彼女は身にまとっていて、受け身な私は自ら近寄ったりはしなくて……そんな印象と関係性は一緒のクラスになってからずっと変わらないままだ。
帰りのホームルームが終わり、いつものようにしばらくみんなとあれこれ色んなことを立ち話する。周りで笑い合っている男子達のかなりは私にフラれているというトンデモな状況だ。それなのにお互い何ともなく自然なのはなぜだろう?私があまりにもあっさりニコニコしすぎなのか?でも気まずい感じになるのは嫌だし。こんな時の正しい在り方を誰か教えてほしい。
そろそろ帰りの送迎バスの時間だと、みんながそそくさと教室から移動しはじめたので同時に私も「じゃあね」と反対方向にてお別れする。表向きは図書室に寄るという雰囲気を出しているんだけど、実際は別棟の体育館側へ行く。別れ際にチヨ吉と未佳が意味深な笑みで手を振ってきた。まあ実際、こんなコソコソしなくてもバレてるから。それに毎回触れないあたり、友人含めうちのクラスのみんなは人ができているというか優しい。
廊下に出るとちらほら、秋葉さん待ちであろう別クラスの男子とかがたむろしている。彼女は終礼後にさっさと帰ったと思うが、こういう強めのファン?みたいのが割といらっしゃって、美人でなおかつ芸能人の噂のある人って大変だなと思う。
早速、体育館裏へ行く。何回もここへ来ているので申し訳ないけど何の緊張もドキドキもない。先程の例の男子からの告白に対し後腐れのないように簡潔に「ごめんなさい、付き合うとかはできないので……」とお断りする。
彼氏とかいる感じですか?と聞かれた。もうこれまで何十回もしているやりとりだけどテンプレで「いないけど……今後もそういう予定はなくて、ごめんね。」と伝える。なるべく穏便に話してるのに残酷な慣れが見え隠れしてないか?私は本当は魔女なのかもしれない。
気を取り直して、次は……3階渡り廊下だ、と、さっさと階段を駆け上がる。向かうとしっかり待っていらしたのでまた同様の文句で済まして。本当に気が滅入りそうになったので一階の自動販売機コーナーでレモンティーを買い、その場で一息ついた。
グラウンドから音楽室から、あちこちから活動の声や音が響いている。私も何かしらの部活に入ろうと思ったけど何だかしっくりくるものがなくて諦めた。好きな事を自発的にするのが活動だとすると私のそれは何の生産性もなくただお喋りを聞いたり話したりすることくらいなので、そうして同じようにいつまでも相手してくれるような奇特な人が複数人いればクラブとして成立するのかも、なんて、疲れてるな自分。
その後もぼうっとたそがれていると、うちのクラスの女担任がおっ、と言って通りかかった。
「……いいところに咲希。あのさ、頼んでもいい?」
保健室に届けてほしいとプリントの入ったクリアファイルを手渡された。ちょっと強引だなあと思っていたら少しニヤニヤして
「なんだかお疲れじゃない。あちこちの男子が盛り上がって喋ってたけど。ほら、ゆっくりしてるとまた話かけられちゃうから早くしなねっ」
ちょっと、訳ありにウインクして立ち去らないでほしい。ええぇ……ここまで知られてるって、当人達がもう直接言いふらしてるんでしょうけど先生方は何人フったという人数まで把握してしまっているのかも。もう笑うか……はは……
ニウ〜何やってんの〜?また告られた〜?と、3階の窓から吹奏楽部の友人らがキャイキャイ大声で呼んで、そのあと男子もこちらを見下ろしてくる。違うよ〜何でもないよ〜と、笑って手を振りながらゆっくりと立ち去って、校内に戻ると自然と真顔に変わる。だいぶメンタルやられてないか。
はぁ……とため息をつきながら軽くノックして保健室の扉を開けると、デスクに向かって書き物をしていた白衣の先生がすっと立ち上がり、近くに寄って興味深げに私を眺めてきた。
「もしかして…………あなたが丹海さん?」
そうですけど?と言うと、無表情でまた自分の椅子に戻り、簡素な丸椅子を目の前に持ってきて軽くたたく。
「はい、ここに座って。熱は?」
あの……私そうじゃなくて、これを渡す用事を頼まれたので、とクリアファイルを手渡しても変わりなく。
「……顔色少し悪いわね。ちゃんとお昼ご飯とか食べてる?」
全然大丈夫です、食べてますと言っても何だか帰してくれなさそうな感じ。私がそれ以上何も言わないからなのか、手持ち無沙汰に持っていたボールペンをクルクル回して、そのうち白衣のポケットに戻した。
「うーん、他の生徒のプライバシーもあるから言いづらいけどねぇ、どうしようかと思うけど……」
デスクに頬杖をついて、壁を見ながら喋りだした。
「あなたのことで悩んでるって子がね、お昼休みとかにたくさんここに相談しに来るのよ。椅子が足りなくて、保健室利用書をいつも補充しなきゃいけないくらいにはなってるわね。」
……私がお断りしている相手は、男子だけではなく女子もいる。正直どちらかというと神経をつかうのはこっちで、後々の関係に少しでもひずみが出ないようにとできるだけ明るく、繊細な言葉を使った。けれど。好きとか恋というのはたぶん、そんなやりとり一つで気持ちを終わらせられるようなものではないのだ。それ関係に実のところ疎いからあまりよく分からないけど。
私はとりあえず「ここにまで影響が……はは」と苦笑いをした。先生は壁を見たまま「まあ、これなら分かるわね……」とつぶやいてからこちらに向き直してじぃーっと長い間見る。無表情で何かを探すような、うかがうような視線の意味が分からずじっと見つめ返すと
「いいわ、あなたもそこで休みなさい。」
と、奥のベッドが並べてある方を指さした。3番目の所だけカーテンで隠れているので誰か寝ているようだ。先生に体調全く問題ありませんと伝えてもまるで聞いておらず。しかも唐突に
「送迎バス、最終便で帰るんでしょ?」
と言われた。どうしてそんなこと知ってるんだろう?と怪訝な気持ちになっていると、せんせい〜と誰かが保健室の扉をコンコン叩いている。彼女はすぐに立ち上がり、ちょっと待っててね〜と大きめの声を出しながら私を奥から2番目のベッドの方へ押しやるように連れていく。
なんだ?と、ちょっとした反抗心が出てきて先生、やっぱり私帰りますと言っても無視され。いいからここのカーテンを広げておきなさいと結構強めに言われてさらにムッとした。入室待機している生徒は複数人いるのか、そのうちの一人が「こんにちは〜」と勝手にドアを開けて――
その時、一番奥のカーテンのすき間がガバっと空き、私はそれに食われたように一瞬で内側に取り込まれた。……気がつけば誰かの腕の中にいる。大きな声をあげそうになったら見たことのある顔にしーっと言われて。……秋葉さんに抱きとめられた私は、完全に少女漫画になった。
あ〜消毒のにおいする〜、ねぇせんせ〜聞いてよ〜と、女子達ののんきな声が聞こえる。何とか冷静を取り戻し、どうやら先生の言っていた「相談」の生徒ではないようだと思っていたら、そのうちの一人がベッドだ〜♪私も寝よっかな〜と言ってこちらへ駆け寄ってくる。
カーテンは完全に下まで隠さないから、立っている2人の足が見えてしまうかも。それを察知したのか、秋葉さんは私の両肩をぐっと押して大胆にベッドへダイブした。その衝撃で靴が脱げて床に落ちたり飛び乗る音が響いたけど幸い気づかれていないようだ。いやいや、どういう状況なのこれ。
『ちょっと、潜ったほうがいいかも……』
2人してベッドの上でうつぶせになっていると彼女がそう小声で言って。へ?と返事する間もなく、秋葉さんは勢いよく薄い布団を自分たちの頭の上にかぶせた。強い夕陽に照らされ内側に光が差し込む中、私はなぜかクラスメイトの彼女と見つめ合っている。
『ふとん被らないとシルエットがカーテンに映っちゃうから……』
一連の出来事に動揺を隠せないまま、そんなのだいじょうぶ……と普通に声を出しかけたらまた一生懸命しーっとされた。必死な顔もすごい、何しても絵になる人だな……と黙ってしばらく見つめていると、秋葉さんは静かに私の顔の前に両手をかざし視界を遮った。なぜ…………?
暇つぶしの生徒達はまだ長々と喋っている。そろそろまあこれくらいは平気でしょうと、頭だけふとんから出て枕に顔をやると秋葉さんも同じように一緒に…………っていやいやいや、完全にアウトだ。今のこれを誰かに目撃されたなら彼女のガチ勢全員に命を消されるぞ。はは……ついに死ぬのか私……
簡易ベッドは一人用なので当然身体は寄せ合っていてあちこち当たっているし、何だか良い匂いもする。と思ったらいつの間に私の髪の先を触っていて
『すごい、傷んでない。髪に良い食事を摂ってたりする?』
と真剣な顔でひそひそ聞いてきたから『うーん、家ではいつも私が料理しててやってるからかな……』と答えたらすぐに『私もだよ』って返ってきて、あまりの意外さにそうなのっ?と小声ながらも驚いてしまった。
なんだ、秋葉さん、普通に喋れる人じゃん。と安心する。何だか美人とか芸能人とか、色々フィルターをかけたままだと通じ合えるものも通じ合えなくなりそうだ。私が求めてるのはそういう所を通してじゃなくて、本当は心からのおしゃべりがしたいのだ。今、気づいた。
そのうちにカーテンがシャーっと引かれ、終わったよと先生が現れる。
「……あら、あなたたち仲がいいわね。他のベッドをこれ以上は使えないから、2人はここでよろしく。」
急によく分からないことを言われた。秋葉さんは割とびっくり、え……?と起き上がり固まっていたが、数秒間私を見てから何かを理解したのか、分かりましたと答えた。
「これから風邪が流行るからね、どうしてもベッドが足りない時は奥の所に行ってもらうしかないわね。……そろそろ帰りの時間じゃない?はい、帰る帰る。」
校門には人影も誰もいなかった。なるべく、最近はこの時間まで校内で暇をつぶすことにしている。
そこから近くの送迎バス乗り場に向かう。この「6時の最終便」を逃すと駅まで20分歩いて帰ることになるから、私も秋葉さんも割と必死に走る。他の数人の生徒も急いで一斉に2人乗りのシートに座るとバスは出発した。
「……だいぶ前から、放課後は保健室に行くことにしてるんだ。あそこなら限られた人しか来ないから、いたいならここにいなさいって先生が許可してくれて。」
秋葉さんは静かに話しはじめる。それから私を見てごめんねと言った。
「多分だけど、丹海さんが遅くまでいるのは門のところとかにいる色々のアレ……避けてるからだよね?私の関係で迷惑してること、丹海さん可愛いし影響は絶対ゼロではないだろうなと思ってたから、いつか2人で話したかったんだけれど…………できなくて、」
そう言って、ずーん、となぜか沈んでしまった。それに対し、私は超絶最高の褒め言葉をもらった気がして浮かれ上がる。
そんなことないよ〜こちらこそごめんねだよ、お話したいなと思ってたけどそういう機会とかがうまく作れなくてさ、いやほんとに人まかせだからダメっていうか、私は全然大丈夫だよ、とにかく秋葉さんの方が毎日勉強どころじゃないことたくさん振り回されて落ち着かないのにすごいし私だったら耐えられないから、神だね、うん神だ。といつも以上に饒舌に語ってて、その様子のどこかが秋葉さんのツボにヒットしたのか口を押さえて笑いをこらえはじめた。ミステリアスだけど……面白い人なのかも。
「私は……そんな、丹海さんが思っているような人ではないかもしれない。」
と秋葉さんはまた、憂いの瞳で道路を眺めて。
……不思議だ、彼女といるとしばらくの沈黙もおしゃれだし、なんだか自然で気にならない。また受け身のモードに戻っていたら、彼女は私にかなり接近するまで顔を覗いてきて
「……ストレスって、見えないところでたまっていくから。そういうのは身体によくない。先生も私と同じように気にしてるし、丹海さんも一緒に居るといいよ、放課後。」
と、両手で私の手を取った。……なんだろう、表情や言葉は全然飾っていないのに温かさが熱い。印象としては近寄りがたくて怖そうだった。けど、話してみるとすごく優しくて。その意外性に心がぎゅっとなる。
正直、私も人目のつかないところでゆっくりしたいとは思っていた。他のクラスの全く知らない人たちに毎回あれこれ話かけられたり、スカウトに尾行された事もあってあまり陽の明るい内は帰りたくない。それに……まあとにかく、秋葉さんも同じ理由があって心配してくれているんだろうから。
うん、そうしようかな……と言おうとしたけど、あれ?それってあのベッドで一緒にいるってこと?6時まで?いつかバレたら間違いなく殺られるやつじゃん、はは……と私が妙な引きつった顔をするから、丹海さん大丈夫?ってさらに顔を覗きこまれて気を使わせてしまった。不安顔も美しすぎる。
えーと、あそこで時間を過ごすってことだよね?と聞くと秋葉さんとは目が合わなくなり、
「うん……丹海さんが大丈夫なら。私は全然平気だけど」
と、うつむきながら自分の指を眺めては弄くったりしている。可愛いかよ。
こんな美女を毎日放課後の何時間も独占して許されるわけないけどさ、同じ諸事情があって同じ空間に避難しているという理由なら、ガチ勢もみんなも懐に手榴弾を収め戻して見守ってくれるかもしれない。
現実問題、うちの学校内で確実にプライベートを保障できる空間というのはせいぜいトイレくらいしかないから、そこに2人……なんてのはやってみても面白そうだけど当然無理な話で。それに比べて保健室というのは逃げ場として優秀だと思うし、よくひらめいたなって感心する。
私は秋葉さんの右の肩に手を乗せて、ありがとう、私もご一緒させてもらうよ、たぶん邪魔だと思うけど……と言うと、
「そんなことない。よかった、丹海さんの様子見てると色々……心配になったから。」
ホッとして微笑んでくれた。これは……メロつく。
何だか距離が縮まった気がした。さん付けもよそよそしい感じがあるので、名前、ここあって呼んでもいい?と聞いたらすっと沈黙がはじまる。え……?まだそこまでじゃなかった………?
「……秋葉って呼んでくれれば。下の名前あんまり好きじゃなくて……女の子過ぎて自分に合わないというか」
と言われ。少しの間があってから私も口を開く。
……誰にも言ってなかったけど、私もそう。下の名前、あまりに女子だから好きになれないんだよね。丹海って言われる方が気が楽で実は……とぶっちゃけてたら急に目が開いてこちらを見て
「え、すごい。」
と、あごに手をやりながら感動していて。じゃあ秋葉、明日からよろしくねと言うと、なぜかまた私の顔の前に両手を静かにかざして遮ってくる。
「丹海……は、表情がうますぎる。」
何のこと?って思ったけど、とにかく仲良くなれたからよかった。秋葉にそう言ったら再び顔を隠されて……というやりとりを、バスが駅に着くまでお遊びみたいに何回も何回もやり続けた。……なにこれカップルか?
つ・づ・く




