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三十三話

「あ、レオン。カイトどうだった?」

「機嫌は良くないですね」

「あー……そっか」


 夕食の時間になっても降りてこないカイトを心配したエーベハルトとアルシュタートがカイトのお気に入りでもあるレオンハルトを行かせた。カイトとそんなに一緒の時間を過ごした訳ではないエーベハルトとアルシュタートがなぜ心配しているのかと言えば昼間のやり取りでカイトの傷付いた顔を見てしまったからだ。夕食の時間になっても現れないカイトに地雷を踏んだと確信したエーベハルトとアルシュタートは食べ終わった後、レオンハルト達を説教した。それには少女とスフェラも怒っていた。女心をわかってないと。


「あんな奴がこんなことで傷付くようなタマか?」

「そうだぜ。俺達を殺す気だった奴に」


 理不尽な説教に怒りを隠せない野郎共がカイトの悪口を言う。頭のない奴等だ、とリュツィフェールは溜め息を吐いた。


「本当にカイト様は貴殿方を殺そうとしたのでしょうか?」

「は?」


 カイトの悪口を言う野郎共にサーシャが呟いた。それに全員が反応する。


「嬢ちゃんはアレを見て何も思わないのか!?」

アレが本物ならば死んでいたでしょう。しかし、アレは近くにいた私やジュード様、カイト様には目もくれず貴殿方を追っていきました。いくらカイト様でも本物の熊を言うこと聞かせるのは難しいと思います」


 サーシャに噛み付く野郎共。しかし、サーシャに正論を言われ黙るしかない。


「じゃあ、嬢ちゃんはアレが偽物だと言うのか?」

「はい。或いは召喚魔法ではないかと」


 サーシャに弱い反撃をする野郎共。ダメージはほとんどない。


「召喚魔法?」

「マルス様、カイト様の召喚魔法で動物を召喚することは可能ですか?」


 サーシャの言う召喚魔法というものがどの様な物か理解できない野郎共は首を傾げる。サーシャはマルスにカイトが使用する召喚魔法を確認した。


「カイト様のグリモワールに熊はいないと思うけどな……。リュツィ、グリモワールに熊って居たっけ?」

「……ホワイトタイガーとかライガーとかタイゴンとかレオポンとかユキヒョウとかオセロットとかピューマとかバーバリーライオンとかホワイトライオンとか」

「全部肉食だから!!」


 カイトの召喚魔法を思い出せないマルスはリュツィフェールに確認するも挙げられるのは肉食動物のみ。それにマルスは突っ込んだ。


「カイト様が飼育していた動物は肉食だけですから。まぁ、例外で真っ白い草食の赤子くらいに小さい熊は飼っていましたけど。誰かさんに似て桃が大好物でしたね。良く樹に登って食べてましたよ」

「へぇ〜……って違う違う」


 リュツィフェールはカイトが今まで飼育していて今、グリモワールに存在する霊獣と呼ばれる存在になった動物を思い返してみるが、該当は草食の熊一匹。しかも人間を襲えない弱小種。それが人間を追いかけるとは思えない。リュツィフェールが素直に言うとマルスは頷いたが違うことに気が付いた。


「そうですね……私やミカエリスが統括する中に熊単体の悪魔はいませんよ。何かしら他のと混ざってますし……。それか人形しかないのもいます。修練場で使ったとするなら、それは幻または人形でしょう。あの方は人形遊びもしますから」

「天使組は?」

「……天使に熊なんていたら怒るでしょう。あの方」


 リュツィフェールは自分とミカエリスが統括する悪魔で検索をかけるもヒットする悪魔はいない。マルスは一応、シドにも確認したが苦笑したシドが否定した。


「……そうだね。悪魔に醜いとか言ってシメるくらいだもんね」

「悪魔は醜いのが標準なんですがね」


 カイトの美意識に遠い目をするマルスと困った顔をするリュツィフェール。シドは苦笑した。


「では、カイト様が所有する召喚魔法には熊はいないと?」

「言っても過言ではない。ただ、カイト様は創ることもできるから一概にノーとは言い切れないかな。微妙な所だよ」


 話が纏まったのを察したサーシャがマルスに問う。マルスはサーシャに曖昧な返事を返した。正解とも不正解とも解らぬ答え。真実はカイトしかわかり得ぬ。だが、ただ言えることはあるとマルスは言う。


「でも、カイト様は殺すためにわざわざ助けないよ。君達が奴隷のままいれば何れは死ぬんだし。それかレオンだけ買うでしょ」

「……」


 マルスの言うとおりだ。必要ない奴を買うほどカイトも愚かな事はしないだろう。マルスにそう言われてしまうと野郎共も黙るしかなかった。


「カイト様も君達を強くしてあげたいと思ってるんだよ。そのための走り込みだしね。ま、君達がそれをどう取るかは勝手だけどね」

「……」


 マルスに釘を刺された野郎共。これでは悪口を言えなくなってしまった。顔を歪ませ食堂から出ていった野郎共。それはカイトに対しての罪悪感か、それともストレスの捌け口にすることができなくなった事か、本人達しか知りえなかった。


「……」

「リュツィフェール」

「えぇ、わかってます。アレを使いましょう。伝えておきます」


 野郎共の姿を見て重症と判断したリュツィフェールは密かに悪魔を使い何かをしようとしていた。それを知るのはリュツィフェールとシドのみであった。


「なんなんですの!?あの人達!!」

「そうですわ!!カイト様をなんだと思ってますの!?」


 少女達が騒ぎだした。口々に野郎共の愚痴を言い出し始める少女達にシド達は苦笑してお茶の準備を始めた。こうなると長くなるだろうとシド達はふんだのだ。そうして女子会はシンジュに止められるまで続いた。

 これを見ていたレオンハルト、エーベハルト、アルシュタート、フィオリーナ、アルバート、クリス、セフィリナは女子の恐ろしさを知った。




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