三十二話
結局、昼までに走りきらなかった野郎共は私が終了時間を知らせる為に仕掛けたペイントボールにやられてお開きとなった。お風呂に入り昼食を食べた野郎共はマルスにすがり付いて教師をお願いしていた。その人数が過半数以上であったので仕方無くマルスに教師役を変わってもらい、私は暇になった。
「酷い酷い!!皆して私を虐めるんだ!!」
「虐めているのは貴女でしょう」
「トレーニング内容はマルスだって変わんないよ」
「貴女がやるのとマルスがやるのでは違いますよ。鬼畜度が」
私は食堂で桃をやけ食いしながら三時のおやつを作るシドに愚痴っていた。まぁ、怒ってはいないが腑に落ちないだけ。気に食わないだけなのだ。むくれる私にシドは溜め息をついた。
「桃のやけ食いも程ほどにして服を作ったら如何ですか?」
「……そうする。スフェラ頼んだよ」
シドの言う通り暇をもて余すよりも服を作ってストレスを発散したほうがよさそうだ。私はシドにスフェラを渡して鍛冶のアトリエに引きこもる事にした。誰も相手にしてくれない寂しさを紛らわす為に黙々と服を縫い続けた。
服を作り終えた私は夕食の時間になってもベッドで不貞寝をしていた。
「カイト様」
「……」
ユナンを心配させているのはわかっているが、私を邪険にした奴等が悪い。ベッドに座ったユナンの腰に抱き着いた私。それに苦笑して私の頭を撫でるユナン。私だって人肌と言うか優しさが恋しいんだよ!!鬼畜はお腹一杯なんだよ!!
私がユナンに甘えていると自室の方の扉がノックされた。それに私は機嫌を降下させた。それに苦笑したユナンは遠隔操作で扉を開けた。私はユナンを睨み付けるが本人は微笑むだけ。そして、寝室の扉がノックされた。
「レオンハルトです。夕食をお持ちしました」
「お入りなさい」
「!?ユナン!!」
入室を求めた声はたぶんあのイケメンだ。入室の許可を出すユナンに非難の声を上げる私。しかし、私の反論は虚しく寝室にあのイケメンが入ってきた。
「夕食はそこのテーブルにお願いします」
「はい」
イケメンもといレオンハルトはユナンの指示に従い夕食をテーブルに置いた。
「カイト様、私はお茶を入れて参ります」
「ユナンが行かなくても良いだろう。他の奴にやらせろ。エメリナ、茶を入れろ」
「畏まりました」
ユナンから不穏な空気を感じ取った私はユナンの行動を制御するようにユナンの腰を強く抱き締めた。そして、何処かに行こうとしていたユナンから仕事を取り上げ今日の部屋を担当しているメイドのエメリナに行かせた。エメリナはすぐに現れ寝室に取り付けられている給湯室に行った。
「幼子ではないんですから」
「うるさいよ、ユナン。君は私の傍にいれば良いんだ」
我が儘を言う私にユナンは呆れたように溜め息を吐いた。
「夕食が冷めてしまいますから、食べましょう。カイト様」
「別に食べなくても死なない」
「ダメですよ。魔力がすっからかんなんですから。レオンハルト、カイト様をベッドから引きずり出して抱っこしたまま座ってください。一人で座らせたら逃げられてしまいますから」
「はい」
ユナンは私の腕を外して離れ、レオンハルトに命じた。私はレオンハルトから逃れようとベッドの反対側から降りようとしたところを捕まえられた。
「はーなーせー!!」
姫様抱っこをされた私は暴れてみるがびくともしない。この綺麗な筋肉が憎らしい。恨みを込めてレオンハルトを睨み付けるが本人はどこ吹く風。そして、そのまま椅子に座ったレオンハルトは私を膝に座らせた。
「お茶をお持ちしました」
「ありがとうございます」
エメリナがお茶を持ってきてテーブルに置いた。ユナンはそれを準備して何故か私の大嫌いな薬膳粥を一匙掬った。え?嫌がらせですか?暗に私に死ねって言ってるのかな?私は薬膳粥を見て顔を顰めた。
「はい、カイト様。あーん」
「いや、一人でたべ」
「あーん」
「ユナンのくちう」
「あーん」
「……はい。頂きます」
嫌がる私に匙を近付けるユナン。どんなに拒んでもユナンの笑みが黒くなるだけで。諦めた私は大人しくユナンに食わされた。
「ありがとうございます。レオンハルト。もう離して良いですよ」
「私そこまで子供じゃない……」
一応、ユナンに反論してみるものの私の言葉などあって無いようなものだった。レオンハルトも私の頭を撫でて横抱きにしてベッドまで運んだ。どこまで私を甘やかす気だ。
「ふーんだ」
ユナンとレオンハルトの態度が気に入らず私はまた不貞寝した。しかし、二人はそんな私の姿に笑みを浮かべていた。本格的に寝入ってしまった私。レオンハルトに夕食のトレーを下げさせたユナンが私の傍に居ていた。




