三十話
「あ、そうだ。そこの少女達よ、この子の名前知ってる?」
「わかりませんわ。レナート様が連れてきたときには既に衰弱しておりましたから……」
「んー……そっか。ありがとう」
結晶天使の子供の名前を聞こうと近くにいた少女に話し掛けたがわからず仕舞いだった。さて、困ったぞ。名前を考えなくてはならんのか。
私は一度食堂を出て自室に向かう。結晶天使の子供は私の頭の上で眠っている。私は本棚から名前の本を取り出した。
「むー……スフェラ……」
本を見ながら唸っているとバシバシ頭を叩かれた。痛くは無いけどね。
「どうしたの?」
「……」
バシバシと叩き続ける結晶天使の子供。結晶天使の子供が目覚めてからずっと思っていたが喋らないね。この子。
「何?」
「……」
私の頭から机に移動した結晶天使の子供は本に書いてある名前を指差した。
「宝石?」
「……」
私が指を差された名前を言うと本をバンバン叩いた。え?違うの?……もしかして……。
「スフェラ?」
「!!」
名前を呼ぶと嬉しそうに頷いた結晶天使の子供。スフェラで名前は決定だな。
「よろしくね、スフェラ」
嬉しそうに頷いてからまた私の頭に登った。なんか、定位置になり始めてるよ。
「魔力も安定してきたし、もう大丈夫かな」
今、結晶天使の子供もといスフェラの私の魔力食いは止まっている。そして、ジュードの結界で溜められた魔力が上手く循環している。これなら他の子達と遊べるかな。
「じゃあ、食堂に戻ろうか」
私は衣装部屋から服のサンプルを取り出し、不思議ポーチに詰め込んで食堂に戻った。
「カイト!!どこにいってたんだよ!!」
「部屋だよ。スフェラの名前を考えに行ったのと服のサンプル持ってきたんだよ」
食堂に戻ると何故かエーベハルトが仁王立ちしていた。あれ?何か私、エーベハルトに怒られる回数が多いな。
「ミーア、スフェラを頼んで良い?」
「え?子供に幼子預けるの?」
「ミーアなら大丈夫でしょ?」
「……わかりました」
私はミーアにスフェラを渡した。ミーアの顔は不満そうだったけどしぶしぶスフェラを抱っこした。そして、空いているテーブルに服のサンプルを置いた。
「じゃあ、好きな組み合わせを選んでね。女子はそっちね。紙に組み合わせを書いて提出して」
一人一人に紙と書くものを渡して放置した私。しかし、私の元に不満そうなアルバートとセフィリナがやってきた。
「ズルい!!おれたちにもつくれー!!」
「ぼくもあたらしいふくがほしい!!」
あー……子供の我が儘か。わかるけどね。でも、お前達はすぐに着れなくなるだろ?でかくなるんだから。
「アルバート、セフィリナ。お前達、これから大きくなりたくないのか?」
「なりたいよ!!えーべよりおおきくなるんだ!!」
「なりたいもん!!」
「じゃあ、今はやめといた方が良い。あの服は着てしまった者の成長を止めてしまう恐ろしい服だ。今のまま大きくならないのは嫌だろう?」
「いや……!!」
「じゃあ、今は諦めな。大きくなったら作ってやるからな」
私の嘘八百が効いたのかアルバートとセフィリナは私に服を作るよう強要しなくなった。ただ、近くで話を聞いていたミーアには白い目で見られたが。
全員の服が決まり、解散となったその日。私は昼間の執事達を集めて食堂にいた。
「さて、明日の朝までに全員の服を作るよー」
「えぇ!?」
「文句を言わずに手を動かせ」
残念ながら外組の執事達は内組の執事達と違い裁縫とか慣れてない。それを長時間、食堂から出れずに黙々とやらされる苦痛に耐えられるのか。これが私の仕置きだ。文句を言ったら十倍にしてやる。私は執事達の四苦八苦する姿を見てニヤリと笑った。




