二十八話
「カイト様!!」
「やぁ、カイト様」
「あ、マルスじゃん。こっちに来てたんだ」
名前を呼ばれ振りかえるとフレイと見知った好青年―マルス―がいた。それに驚いた私はフレイを無視した。
「カイト様!!そんな奴より私を見てください!!」
「……あーハイハイ。居たんね、フレイ。気が付かなくてすまんかった」
私の正面から抱き締めてくるフレイの頭を撫でながら言った。役者もビックリな棒読み具合だった。それにマルスは大爆笑。
「相変わらずだね、フレイ」
「カイト様はあげません!!」
「うん、別にいいよ」
マルスが微笑ましそうに言うとフレイがマルスを睨み付けて言い切った。それにマルスは笑みを浮かべて毒を吐いた。
君も相変わらずで良かったよ、マルス。
遠い目をしながらマルスとフレイの会話を聞いていた私。
「すまない、少し宜しいですか?」
「良いよー……ってイケメンじゃん。どうしたの?比較的元気な奴等を連れて」
後ろから腹にくる声で聞かれ振り返るとあのイケメンがいた。後ろには元気な野郎共を連れて。それにキョトンとした私。マルスとフレイもこちらを向く。
「ー……」
「?」
イケメンはマルスを見て言い淀む。それに私が首を傾げ、マルスを見ると苦笑した。
「実はね、風呂場で一悶着あって僕が全員シメたんだ」
「そうか。お前なら連帯責任とか言ってやりかねんな」
喋った途端に良い笑みを浮かべたマルスに私は半眼した。そして、棒読み。何をした、お前達とイケメン達を見ると顔を反らされた。言いたくないのはわかるけどね。
「言いたくないなら言わなくて良いよ。でも、マルスに注意されたことは胸に留めておいてね」
子供のように口を閉ざすイケメン達に私は苦笑して言った。更に黙るイケメン達。しかし、反らす視線は揺れていた。
『夕食の時間です。食堂にお集まり下さい』
シドが館内放送をかけた。それにそんな時間かと内心思った私はイケメン達に声をかけた。
「夕食の時間だから、全員集めて。食堂に案内するから」
「はい」
イケメン達は素直に頷いてそれぞれ呼びに行った。すぐに集まった男達を連れて食堂に向かった。
食堂には既に女性陣とエーベハルト達が集まっていた。私は男達に受付に連れていって一人ずつ夕食の入ったトレーを受け取らせて座る場所を指示した。全員が受け取って座ったのを見ると私は拡張魔法を使って喋る。
「えー、本日も一日が終了になりますが……あぁ、わかってるから睨むな。文句とか言いたい奴もいるだろうが説明は全部夕食を食べた後な。んじゃ、いただきます」
「いただきます」
グダグダと言い出した私を睨み付ける一部の野郎(エーベハルトとかエーベハルトとかエーベハルトとか)の圧力に溜め息を吐いた私は夕食の合図を出した。
私がこの世界に来て一番驚いたのは食事前と後の挨拶だった。この習慣は極僅かな一部の挨拶だったのでないと踏んでいたのにエーベハルト達やフィオリーナ達がやってるのを見て驚愕した。それを現在、大人数でやると……小学生みたいだと思ったのは私だけの秘密だ。
私も夕食を食べようと受付に行くと何故かシドに笑みを浮かべられた。
「カイト様、あちらに用意いたしました」
「へ?……」
ルセアに話しかけられ振り向くとルセアの後ろにピンクの山が見えた。もしかしなくてもあれは桃の山だよね?え?あんなに食べるの?私が唖然としているとジュードが話し掛けてきた。
「魔力の消費率が全体の六十パーセントを切ってるんだよ。普段なら止めるけど緊急事態だからね。常に食べてないと魔力欠乏症で倒れるよ」
「魔力欠乏症とか……!!」
「そんなキラキラした目しないでよ。死にかけてるんだから」
ジュードの説明に私は目を輝かせた。だって!!魔力欠乏症とか私に一生関係ないと思ってたのに!!そんな私に呆れた顔のジュードと苦笑を浮かべるルセア。
魔力欠乏症ってそのままにしておくと魂を消費して死ぬんだよね。私以外だったら確実に危ないよ。皆はすぐにお医者さんにかかってね!!
「じゃあ、遠慮なくいただきまーす!!」
バクバクバク。どこの大食い選手だと言うような速さで桃の山を消費していく私。
実はこの桃、私好みの固く甘いだけじゃなくて魔力回復の役割も持っている。だから、他の奴等が魔力を摂取し過ぎないように注意している。でも、今日はお許しが出たので遠慮なく食べる。桃を頬張る私の上で結晶天使の子供が私の魔力を未だに食べている。この子の限界ってないのかい?桃を食べて回復してもすぐに無くなるんですが。
そんなイタチごっこを見てしまった哀れな奴等は箸が進んでいなかった。御愁傷様。私は
シャリシャリ言わせながら食べ続けた。




