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二十七話

 一度、自室に戻り結晶天使の子供をお風呂に入れてから魔力を与えた。歴代の余りまくった魔力を結晶化させた魔晶石を。そうしたら、やはりと言うべきか……グリモワールを作った時代の魔晶石が好みのようで……。どうしよう……すごい量が消費されていくよ。

 魔晶石が大量消費されていく中考え抜いた結果、宝珠を作ることに決めた。直径二十センチくらいの玉から永遠に魔力が放出される宝珠だ。これなら腹減りにはならないだろう。今、魔力を全解放しているが垂れ流しになっている魔力が全部子供に向かっている。これにはもう乾いた笑いしかでないよ。特大の魔晶石を作って渡すもバリボリと食べる結晶天使の子供。涙が止まりません。

 取り合えず、小さくなった魔晶石と結晶天使の子供を抱き抱えて修練場に向かった。

 と、その前に居間で拡大作業を行って異空間の構造を変えた。グリモワールを作った時代に作らせた騎士が常駐する小城(居住棟、執務棟、修練棟の三つの棟からなる本城よりも二回り小さい城。それぞれ三階建てになっている)の中の作りにした。



「あれ?ラフィエル?」

「カイト様」


 私が修練場に行くと受付に見知った熾天使がいた。それに驚いた私に向こうも気が付いた。


「こっちに来てたんだ」

「はい。本日の受付担当なので」

「そっか」


 そう言えば修練場と図書室の受付は天使達にお願いしていたんだった。すっかり忘れていた私は熾天使もといラフィエルに言われて思い出した。


「あ、じゃあ……ラフィエルにも頼もうかな?」

「何をですか?」

「あのね、新しく女の子達を連れてきたんだけどその教育をシンジュと一緒にしてほしいんだけどいい?」

「わかりました」

「ありがとう、ラフィ」


 私はラフィエルを見て少女達の教育をラフィエルにもやってもらう事を思い付いた。シンジュ一人じゃ大変だもんね。なんて考えながらラフィエルに言うとオーケーが貰えた。まぁ、基本的にラフィエルとかは断らないけど。

 教師がもう一人ゲットできた私は意気揚々と健康診断に使われている修練場に顔を出した。


「や……」


 修練場の扉を開けた瞬間、地獄絵図だった。それに見た私は静かに扉を閉めた。すると、中からユナンが顔を出した。


「何をしているのですか。早く中に入りなさい」

「いやいや、ユナン。あんな地獄絵図に私は加わりたくないよ」

「貴女の検査はしません。その結晶天使の子供です」

「あ、ハイ」


 駄々をこねる私に呆れ顔のユナン。その姿は嫌がる子供と母親のようだった。ユナンの言いたいことを理解した私は素直にへっぴり腰で修練場の中に入る。採血されて気を失っている者や注射をするのに喚いている者、お嫁にいけないとか言って嘆いている者もいた。いやいや、お前はお嫁じゃないだろ。と内心突っ込みつつ、結晶天使の子供の身長体重を測りに行った。


「**様、その子って結晶天使?」

「よくわかったね、ジュード。てか、名前が言えてないから。今の私、カイトだから」

「ハイハイ、カイト様だね」


 私が結晶天使の子供を身長計で測っているとジュードが気が付いて近寄ってきた。古すぎて発音されていない名前に、そう言えば私の名前を教えてなかったことを思い出した。教えるが適当にあしらわれた。でも、構いすぎると素晴らしい笑みで私を見るので我慢する。


「それにしてもこの結晶天使……生まれてから放置されてたのかな?魔力の溜め方を知らないようだね」

「……あ、そう言えば結晶天使って魔力を元に宝石を作り出すことができるんだったよね。忘れてた」


 ジュードに言われて結晶天使の特徴を思い出した。翼も結晶化していてとても美しいのだが、それを構築する魔力の溜め方は親から教わるはずだ。私から搾り取る魔力は溜まるどころか放出されている。それを感じたジュードが気が付いたのだ。


「魔力の溜め方を覚えるまで結界張って循環させるのが良いね」

「結界張りはジュード君に任せるよ」


 魔力吸収を妨害する結界を張って結晶天使に触るジュード。触診はジュードの十八番で一瞬で細かい細胞まで解析するその能力は医療部随一。そのジュードが言うのだからそうなのだろう。


「……そう言うのはカイト様の方が良いんだけどね」

「私の魔力をバリボリ食うんだから無理に決まってるでしょ。制御装置外して喰われてるんだから」

「……わかった」


 私が任せると告げたらジュードが呆れながら言う。でも、私から垂れ流しにされてる魔力が帯になって結晶天使の子供に流れている。既に私があげた魔晶石が消えていた。それを見て溜め息を吐いたジュードは結晶天使に結界を張った。結界を張られて違和感があるのか手をグゥパァグゥパァと握ったり開いたりを繰り返していた。そして、嫌な顔をして私の魔力をバカ食いした。

 いやいや、食わんといて。


「まぁ、今のところはカイトに引っ付かせてれば大丈夫かな」

「わかった」


 テキパキと結晶天使の子供を診察していくジュード。診察されてる間大人しくしている結晶天使の子供。それを見ながら頷いた私。


「僕も居るし、何かあれば医務室に来てよ」

「ん」


 全部終わらせたジュードは私の頭に結晶天使の子供を乗せた。

 ジュード君、何故私の頭に乗せる?そして、何で君も居心地良さそうに私の髪を掴んでるかな?


「野郎共はどうなった?」

「体力測定ならまだだよ。血を見てぶっ倒れるんだから無理だよ」

「まぁ……確かに」

「明日にしたら?」

「そうするよ」


 私が男達の様子を聞くとジュードは呆れながら言った。その後ろで蠢く塊がいた。それを見た私は見なかったことにしてジュードの提案を受け入れた。


「カイト様」

「あ、シンジュ。ありがとうね。ジュード、女性陣はどうする?」

「隣に用意してあるよ。ルセア様」

「ご案内致します」


 修練場の扉から顔を出したシンジュが私を見つけ近寄ってきた。シンジュ以外居ないのを見るところ廊下にいるのだろう。女性の健康診断をこの野郎がたくさんいるところでやらんだろうと言う思いをこめてジュードに聞くとルセアに話が振られた。ルセアがシンジュと一緒に修練場を出ていった。

 あれ?ルセアって確か……。うん。言わないでおこう。


「あ、そうそう。あの男達なんだけどさ。龍族だね」

「へぇ〜、龍族なんだ。じゃあ、相当過酷にして良いよね」


 ジュードがカルテを見て思い出したように言った。龍族と言えば私の知るものだと文武両道の種族だ。ドラゴン族より体は強くないが人間よりは遥かに丈夫。それに加えて魔力を持っているので攻防どちらにも向くタイプになる。ただ、本人の性格により差異はある。明日の体力測定次第でトレーニングメニューが決まる。


「大丈夫だとは思うけど……」

「サーシャの実験台にすればいいよ」

「……そうだね」


 扱く気満々の私に顔を顰めるジュード。だけど、サーシャの実習ができることに笑みを浮かべた。それに内心合掌した私。




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