二十六話
少女達が泣き止み、ユナンとルセアが少女達に濡れタオルを渡していた。
「そろそろ夕方になるし、馬車に戻ろうか」
「馬車はどちらにあるんですか?」
「近くの森の湖だよ。湖の近くまで転移するからね」
私が太陽の位置を確認して馬車に戻ることを提案した。すると、一人の少女が質問してきた。私が答えると少女達が首を傾げる。
「わーぷ?」
「転移魔法だよ。ここから別の場所に一瞬で移動するんだ。ただ、この魔法は自分の中で移動したい場所をハッキリイメージしないと失敗する危険な魔法なんだ」
おや?この世界に転移魔法は存在しないのか?それかこの子達が知らないだけか?後でエーベハルト達に確認してみるか。
新事実発覚に私は驚きながらも少女達に説明した。転移魔法を使用するリスクについても。
「失敗したらどうなりますの?」
「どこに出るかわからない。もしかしたら山の山頂に出るかもしれない。海の中に出るかもしれない。大地の中に出るかもしれない。火山の中に出るかもしれない。どこに出るかは誰もわからない。だから、魔法の使い方が未熟な者は使ってはいけないんだ」
そうなのだ。失敗したら大変なのだ。私も一度転移に失敗してその生を終了させたことがある。あの時は星の中核に入ってしまい、失敗したと思った瞬間意識はシャットアウトした。あれは苦い思い出(記憶)だ。それ以来、私には変な能力が追加された。それが今の転移魔法を補助する能力。知らない土地なのにその情景が頭に浮かぶ。それにより転移魔法の失敗は無くなったが。
「ですが、貴女様は使えるのですよね?」
「まぁね〜。これでも熟練の魔法使いですから」
私がやるなら笑い話となるが他の奴がやるとそうはならない。なので、あえて熟練と言っておく。使いたいと申し出ればキッチリ仕込むつもりだ。テストもして筆記もして合格しなければ使わせない。それほど危険な代物だ。
「カイト様、ドヤ顔は良いので早く戻りましょう」
「……ハイ。じゃあ、行くよー。【転移】」
私が少女達にドヤ顔を見せているとユナンに突っ込まれた。グリモワールの関係者は私に容赦ない。ドエスの集まり。それに打ちひしがれる私はユナンに催促され湖の近くに転移した。
湖の近くに転移したのでそこから歩いて湖まで行った。すると、片付けをしているシドの姿を見付けた。
「今帰ったよ〜」
「お帰りなさい、カイト様」
酔っ払いの如く言った私をスルーしたシド。これがリュツィフェールやミカエリスなら突っ込みを食らうか失笑もんだったよ。なんであんなこと言ったかな?私。自己反省をしつつ、改めて挨拶をした。
「ただ今、シド。他の子達は?」
「修練場で健康診断をしてますよ」
ん?耳がおかしくなったのか?シドは何て言った?
「ん?健康診断?」
「はい。カイト様がご購入された奴隷達の体力測定をしようと修練場にジュード達医療部員が準備をしていたのですが、それを面白がったエーベ達もやりたいと駄々をこねまして。急遽健康診断をやることになりました」
オイ、何をしているエーベハルト。お前は餓鬼か。アルバートやセフィリナと同い年か。良い年こいた大人が駄々をこねるんじゃない。
エーベハルト達の行動に頭を抱えつつ、良い機会かとも思った。一度、フィオリーナと子供達の健康診断はやりたかったし。私は苦笑をして頷いた。
「わかった。後ろの子達は新しい子達だからよろしくね」
「畏まりました」
私が後ろにいる少女達を見て言うとシドも視線を向けて頷いた。
「じゃあ、中に入って」
「……この人数は入りませんわ」
「大丈夫だから入った入った」
戸惑う少女達を無理矢理馬車に押し込めた私。だって中に入ってくれないと困るし。そうしたら、入った少女達は愕然としている。まぁ、驚くわな。たぶんアイツラも驚いただろう。
取り合えず、お風呂場の使い方を教えるために私はお風呂場に誰もいないことを確認した。あ、後トイレも使い方を教えないと。
「取り合えず、今日はやることないから先にお風呂の使い方を教えてあげるね。教えるのは私じゃないけど」
「誰なんですか〜?」
お風呂場から居間に戻った私が告げるとのんびりした声が聞こえてきた。まぁ、二十人もいれば誰だかわからんか。後で全員集めないと。因みに結晶天使の子供は私の頭に引っ付いている。
私は教師を喚び出す為にグリモワールを開いた。
「シンジュって言うすごい美人のお姉さんだよ。【いでよ 我が真珠至宝 真珠】」
「お久しぶりでございます。カイト様」
グリモワールから喚ばれたのはグリモワールにいる女性の中で一番美人なシンジュ。彼女は女性に必要な知識を全面的に詰め込んで育てられた至宝中の至宝。小悪魔的な事だってお手の物。でも、そんなことをしたら私からお叱りが来るけどね。
「久しぶり、シンジュ!!愛してるよー!!」
「私も愛しておりますわ」
久々に会えたシンジュに抱きつく私。私の戯れ言に付き合ってくれるシンジュ。ちゃんと心得ておりますね、シンジュさん。満足した私はシンジュから離れて少女達の方を向いた。少女達は唖然としていたけどね。
「この人が君達に色々と教えてくれるシンジュだよ」
「初めまして、私はシンジュと申します。よろしくお願い致します」
私が紹介すると我に返った少女達が頭を下げた。シンジュが改めて自分で自己紹介をした。
「じゃあ、シンジュ。後はお願いね。服とかは私の新品の衣装部屋から選んで良いから」
「はい、わかりました。カイト様。では、皆さん。参りましょう」
シンジュが少女達を連れてお風呂場に入ったのを確認するとドアノブにドアプレートを引っ掛けた。すると、中から鍵がかかり開かない事を確認して私はその場を後にした。
数分後、ミーアが通り掛かりお風呂場のドアノブにドアプレートが掛かっているのに気が付いた。それを見たミーアは沈黙した。
女性入浴中 覗いたらぶっ殺す 特に野郎共 堂々と入ってきたらその場で処刑だ
ミーアは何も言わずその場を立ち去った。




