二十五話
時は遡り、カイトに奴隷達を押し付けられ広場に残されたリュツィフェールとミカエリス。二人の顔は顰められていた。
「逃げられましたね」
「仕方ありません。馬車に戻りましょう」
リュツィフェールとミカエリスを先頭に奴隷達を囲むように他の執事が配置され移動した。奴隷達はこの街に拠点があるのだろうと思っていたのに向かう先は外門。それに奴隷の一人が口を開いた。
「このままでは外門だぞ。良いのか?」
「えぇ、馬車は外にありますから」
奴隷の質問にリュツィフェールが答え、そのまま外門に向かった。外門に出てから人気の少ない場所まで行くとリュツィフェールとミカエリスが足を止めた。
「ここら辺で大丈夫でしょう」
「では、展開します。【転移】」
「!?」
いきなり止まったと思えば、いきなり魔法を施行するミカエリスに奴隷達は驚いた。そして、転移した先は森の中。それに困惑する奴隷達。リュツィフェール達はそれを気にもせず歩き出す。奴隷達がはぐれまいと付いていくと開けた場所に出た。そこは湖のようだった。
「お、帰ってきたのか」
「はい。先に戻りました。後程、カイト様が戻りましょう」
リュツィフェール達が戻ってきたのを出迎えたのはエーベハルトだった。クリス達と遊んだのだろう。水に濡れていた。
「んで?後ろのは……奴隷か?」
「えぇ。カイト様が買い漁りました」
「ふーん」
リュツィフェール達がぞろぞろと連れている男達にエーベハルトは値踏みするような視線を向けた。それにミカエリスが良い笑みを向けて嘘を吐く。執事達とリュツィフェールも笑っていた。
「カイト様の好みです」
「……」
ミカエリスの更なる嘘に吐いた。それに半眼するエーベハルト。それを笑うリュツィフェールと執事達。悪魔の笑みが見え隠れする。男達は誰だか知らぬ人物に内心合掌した。
「お帰りなさい。リュツィフェール、ミカエリス。皆さんもお疲れ様です」
「ただ今戻りました。シド」
リュツィフェール達が戻ってきたことに気が付いたシドが近寄ってきた。その腕にはタオルがかけられていた。
「昼食如何しますか?」
「カイト様が先にお風呂と体力測定をしておけと言っていました」
「そうですか。わかりました。お夕食は多めに作りますね。あ、お風呂は沸いてますから」
「ありがとうございます。シド」
シドはエーベハルトにタオルを渡しながらリュツィフェールに問いた。それにリュツィフェールが答えると笑みを浮かべたシド。これから行われる体力測定の過酷さを考えたシドの優しさだった。それを後に知ることになる男達だった。
「中に入ってください」
「この人数が入ると思っているのか?」
「馬鹿にしないでもらいたい」
中身亜空間な見た目馬車に男達は怒る。言いたいことはわかるけどな、と言ってエーベハルトは苦笑した。すると、中からミーアが出てきた。扉の前に人が居たのに驚いたミーアは後ろに倒れ込んだ。
「!?」
「ミーア、大丈夫ですか?」
「何!?この人達!!」
倒れたミーアを起こしたリュツィフェールは服についた埃を叩く。ミーアはリュツィフェールに男達の事を聞いた。男達も子供が居たことに驚いた。
「この人達は奴隷ですよ」
「……奴隷ってあの奴隷ですか!?無償で飲まず食わずで働かせられるあの!?」
「……」
隠してもすぐにバレるとふんだリュツィフェールは素直に言うと斜め上の聞き方をしたミーア。それに男達も無言になった。執事達は爆笑していたが。
「ブッハハハハ!!」
「ミーア、どんなテレビを見ていたんですか?それは奴隷とは言いません」
「え……じゃあ!!ご奉仕的なあれ?」
「……」
腹を抱えて笑う執事達を他所にミカエリスが苦笑した。そしてミーアから飛び出たとんでもない言葉に全員が黙った。
「ミーア、いかがわしい事は言わないように。肉体年齢を考えてください」
「ハイ」
ミカエリスの綺麗な笑みにミーアは素直に頷いた。
「あぁ、そうです。ミーア、この奴隷達をお風呂場に引きずっていってくれませんか?」
「え?」
「うん。良いよ」
「は?」
「お兄さん達早く入って!!」
リュツィフェールの素敵な笑みを見ていない男達は驚きの声を上げ、リュツィフェールの素敵な笑みを見たミーアは頷いた。それに驚きの声を上げる男達。そして、ミーアに急かされる男共。なんとなくミーアの言葉がキツかったのは気のせいか。男達はプクーと頬を膨らませるミーアに背を押されて一人ずつ入っていく。そして、中の構造に驚いていた。
「お兄さん達、お風呂場はこっちだよ。早く」
「……」
男達を押して歩くこと強制させて風呂場に案内するミーア。歩く事を強制するのは案内とは言わないがミーア的には案内だ。男達が動かないから。
「この籠の中に脱いだ服を入れて。このタオルを風呂場の中に持っていって良いタオルだよ。着替えは……」
「着替えは持って来たよ。支給品だからどれも同じ。サイズがない場合は言ってね」
脱衣所に入ってミーアが指を指し説明する。誰も反応してないが気にしない。聞いてないなら周りに聞け、と内心で思っているミーアは何も言わなかった。
普段なら着替えを持ってくるのだが、大人数の着替えがどこにあるかわからないミーアが言いあぐねていると人が入ってきた。手に大量の服を持って。
「あ、君がミーアちゃんかな?リュツィフェールに後は頼まれたから扉にこれを掛けてきてくれないかな?」
「……」
入ってきた人は入り口の近くにある台に服を置いて男達の中にいるミーアを見付けて話し掛けた。お風呂の使い方を教えてくれるのに感謝したミーアだが、渡されたドアプレートを見て沈黙した。
野郎入浴中 覗くべからず 特にカイト
ミーアはそれに触れず頷いて脱衣所から出ていってドアノブにドアプレートを下げた。すると、中から鍵が閉まる音がして開かなくなった。それに満足気に頷いたミーアは外に向かった。
そして開かずの扉となったお風呂場から野郎の悲鳴が絶え間なく響いていた。




