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二十四話

「お兄さん、この子私が買い取るよ」

「……貴女、何者なんですか?」

「しがない異世界人さ」

「奴隷を買い漁る時点でしがなくないですよね」


 お兄さんの強烈な突っ込み入りました。お兄さんは完全に私を疑ってますよ。でも、異世界人なのは本当ですよ?貴方が信じるかは別にしてですがね。


「異世界人なのは本当だよ。それを疑われると話が進まないから疑わないで貰いたい事項なんだけど」

「……。なら、この子達を集めて何をする気ですか?」

「教育だよ。外に出しても恥ずかしくないように勉強させるの。もちろん、自分の好きにしたいことをすれば良い」

「そんなこと信じられません」


 このお兄さんメンドクサイ。もしかしてアレか?ここにいる子達を売る気無いのか?だったら、お兄さんごと買ってやる。


「お兄さん、名前は?」

「……レナートですが」

「……なんだ。案外普通だな」

「悪かったですね」


 もっと凄い名前期待してたのに。つまらないな。一般人が怒っても怖くないよ。

 お兄さんもといレナートをおちょくる私にユナンとルセアが溜め息を吐いていた。失礼しちゃうな。


「もう、面倒だからさ。お兄さんごと買ってあげるよ。衣食住は全て保証する。子供達は全員勉強!!お兄さんは適当に好きな事をすれば良いよ!!」

「は?……頭大丈夫ですか」


 ……本当にメンドクセェ。こう言う奴嫌い。イエスかノーで答えろ、コノヤロウ。


「この子達を手放す気が無いんでしょ?だから、反対するんじゃないの?突っ掛かるんじゃないの?」

「……」

「売る気がないなら私を連れてこないでよ」


 ハッキリしないレナートに八つ当たりをする私。それに黙るレナート。そして、私は止めをさした。完全に黙ったレナートの目は揺れていた。すると、一人の少女がレナートを庇うように前に出た。


「レナート様を虐めないで!!」

「私達が貴女様の元に行けば宜しいのでしょう!?」

「……」


 一人が叫ぶと部屋にいた少女達がレナートの前に出た。全員涙目だった。それに私が蒼白になった。少女を泣かせてしまったこととやり過ぎたことの二重の意味で蒼白になった。後ろから見えない圧力がのし掛かってきた。ゆっくり後ろを振り向くと素敵な笑みを浮かべた。ユナンとルセアがいた。


「カイト様……」

「カイト様、今回は貴女がいけません。虐めすぎです」

「スミマセンデシタ」


 私はレナートと少女達に土下座した。それにキョトンとした少女達。土下座した私の上に座ったユナンは少女達に笑みを向けた。


「貴女達はどうしたいですか?カイト様の元に来るかここに残るか貴女達が決めてください。私達はそれを強制しません」

「……本当に私達が決めてもよろしいんですの?」

「構いませんよ」

「……」


 ユナンが私の代わりに少女達に問いた。優しい声音で聞くユナンに警戒しつつも聞く少女。チラリとレナートを見た少女の一人がユナンを見た。


「私を貴女様の元に行かせてください」

「宜しいのですか?」

「構いません。レナート様には随分良くして頂きました。次は私が恩返しをする番です」

「そうですか」


 少女の一人が覚悟を決めた。それを受け入れるユナン。レナートは少女の覚悟に親離れの時を悟った。


「私も」

「あたしも」

「私もお願いします」


 少女達が次々と名乗りを上げた。それにレナートが苦笑する。


「では、他の子達にもこの事を伝えて来てくれますか?」

「はい!!」


 少女達が部屋から出ていき、部屋に残ったのはユナンとルセアと私とレナートだった。


「あの子達をよろしくお願いします」

「もちろんです。私達にできる精一杯の教育を行います。私達が島に着いて落ち着いた頃、遊びに来てください。その時にはまた人が必要な筈ですから」

「その時は是非行かせて頂きます」


 レナートはユナンに少女達の事を頼んだ。それに頷くユナン。なんかもうユナンに任せるわ。あの子達。私は恐がられてるだろうし。

 結局、レナートの所にいた少女達全員を引き取ることになった。でも、レナートは自分も行くことをよしとしなかった。なのでせめてもの恩返しにとレナートに代金を渡そうとした。でもレナートは受け取ろうとしなかった。なので少女達が受け取るように泣き落としてレナートは渋々受け取った。この子達、女優になれるよ。完全に嘘泣きだったよ。恐ッ!!

 全員の身仕度を終えて妓楼の前に集まった。レナートに挨拶をするためだ。結晶天使の子供は私が抱っこしている。


「レナート様、私達立派なレディになってきます!!」

「この方をぎゃふんと言わせてみせますわ」

「……君達なら尻に敷けると思うよ」


 レナートに向かって抱負を述べる少女達に私は遠い目をした。この子達は強くなるよ。野郎共を尻に敷く姿が容易に想像できる。レナートは少女達の言葉に苦笑した。


「風邪を引かないように気を付けるんだよ」

「はい」

「ちゃんと言うこと聞くんだよ」

「はい」

「たまにはお手紙書いてね」

「はい!!」


 レナートも少女達も泣きそうになっている。今まで一緒にいた家族と離れてしまうのだ。寂しくないはずはない。でも、泣くまいと頑張る少女達。その姿にレナートも泣き出しそうな自分を叱責した。


「いってらっしゃい」

「行ってきます!!」


 少女達はレナートに笑顔を見せて家を後にした。この家族の住む家にいつ帰れるかわからない、けれど、レナートの為に新しい一歩を踏み出した少女達。その寂しさを胸に閉じ込め、胸を張り気丈に振舞い歩いていく姿にレナートは涙を溢した。

 私とユナンとルセアは静かにお辞儀をして少女達の後を追った。レナートも静かにお辞儀をして少女達が消え行くまでその後ろ姿を見送った。


「ッ!!」

「うッ……」


 家から見えなくなった裏路地で少女達が立ち止まった。少女達の目には溢れんばかりの涙が溜まっていた。少女達も泣くまいと頑張っていたが限界だった。


「泣きなさい。そして、泣き終わったら前を見なさい」

「うわぁぁぁぁん!!」

「レナートさまぁぁぁ!!」


 私の言葉を皮切りに少女達は泣き出した。少女達の気が済むまで目一杯泣かせる事にした私は結界を張って目隠しをした。少女達が泣き止むまで私とユナンとルセアは見守ることにした。



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