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十三話

「はぁ……」

「カイト、大丈夫か?」

「あぁ、平気だよ。私がオーディンごときに負けはしないよ」

「そうじゃな。あのアホごときに負けるブーリ様じゃないの」


 私がソファに座って力を抜くとエーベハルトが近寄ってきた。無駄な体力を消耗しただけだから大丈夫。傷は一切負ってない。そして、フリッグまでに貶されるオーディン。相変わらずで良かったよ。その尻に引かれ具合が懐かしいや。


「俺、お前に聞きたいこと山積みなんだが?」

「私もアホに聞きたいこと山積みだよ。まぁ、アホに確認してから私の方話すよ。こればっかりは順を追って説明しないとこんがらがるし」


 半眼して私を見るエーベハルトにイズンから貰ったアップルパイを食べながら答えた。あー、イズンのアップルパイ相変わらず美味い!!バクバクと食べる私に呆れた視線を寄越すエーベハルト。溜め息吐くなよ。酷いな。


「あ、そうそう。ブーリ様。はむ。兄さんに気を付けてくださいね。はむ。処女の危機ですよ。はむ」

「フレイア……食べながら喋るな。行儀が悪いぞ」

「兄さんってば、はむ、ラグナロクの後、はむ、ブーリ様を復活させようと、はむ、様々な方面の、はむ、魔法を修得しました。はむ。なので、はむ、今の兄さんは、はむ、ブーリ様を捕らえて、はむ、閉じ込めるなんて、はむ、造作もないです」

「……フレイア、何が言いたい」

「私の、はむ、封印を、はむ、解いてください」

「私にも世界にも利益はない」


 フレイアはアップルパイを食べながら私に忠告する。だからと言って、フレイアにフレイを抑え込む力はない。なので、フレイアの封印を解くという取引は成立しないのだ。それにあの時にかけた封印は世界のためを思ってしたことだ。残念ながらフレイアに利益はあっても私にはない。むしろ、世界の毒にしかなりかねないので却下する。

 これ以上、イズンのアップルパイがフレイアの腹の中に消えるのを阻止するために私は大量確保した。その量にエーベハルト達は無言だった。


「……ほんに甘い物が好きじゃのぅ。見ていて胸焼けがしてくるわ」

「私の活力源だ。諦めてくれ」

「ブーリ様に食べていただけて嬉しいですわぁ」

「それで肥らんのが凄いのぅ……」

「……肥える言わんでくれ」

「気のせいじゃ」


 フリッグが私が食べるアップルパイの量を見て呟いた。昔からだ。諦めてくれ、フリッグ。その意味を込めてフリッグに言った私。その間に数個カットされたアップルパイを口に突っ込む。イズンはその食べっぷりを笑うだけ。フリッグは食べても太らない私に毒を吐いた。


「カイト様」

「ん?あ、御疲れ、リュツィフェール。ありがとね。エリスは?」

「ミカエリスは最後の一人と戦闘中です」


 外から行った時と変わらないリュツィフェールが戻ってきた。その手には大量のパピルス紙を持っていた。私はリュツィフェールからパピルス紙を受け取り確認した。だいぶ殺られたらしい。絵がへばっていた。それを内心笑い、リュツィフェールにミカエリスの事を聞いた。するとまだ戦っていると言うリュツィフェール。それに眉を顰めた。


「最後の一人?」

「豊穣の神フレイです」

「あぁ、遠慮なく殺せって言っといて。たぶん、何割か力を解放しないと殺せないかもだけど」

「おや、珍しい」


 あのミカエリスが手こずるなんて何処のどいつだ。なんて思っていたら私の中で一番の問題児だった。それを聞いた瞬間、私は能力解放の許可を出した。そして、遠慮なく殺せとも。それにリュツィフェールは驚いた顔をした。


「私でさえ、フレイを完全消滅させるのにピアス二つは外すしね」

「ほぉ……貴女がそう言われるのでしたら、手強いのですね」

「手強いと言うかしぶとい。瀕死にしても何度も立ち上がるから段々面倒になる。その生命力はゾンビ並みだよ」

「それはそれは。愉しそうですね」

「パピルス紙を回収してくれれば何しても構わないから」

「畏まりました」


 本当に昔からフレイには手を焼かされている私から語られるゾンビ並みの生命力を発揮するフレイに興味を示したリュツィフェール。その顔は悪どい笑みを浮かべていた。私が何をしても良いと言う指示を出すと更に笑みを深めたリュツィフェールはまた外に向かった。


悪魔やつらに興味を抱かせたか。まぁ、それでも死なないだろう」

「……いや、どんな奴だよ。ソイツ」

「一言で言うなら変態。いや、変態しかアレを言い表せる言葉はない変態の中の変態だ」


 私の呟きにエーベハルトが突っ込んだ。変態変態と連呼する私にアルシュタートが顔をひきつらせながら聞いてきた。


「どういう意味で変態か聞いても?」

「え?聞きたいの?子供達が居る前で語らせたいの?」

「止めてください!!私達の教育によくありません!!」

「流石、ミーア。よくわかったね」


 アルシュタートの問いに私が問い返すとミーアが即座に反応して妨げた。それに私はミーアを賞賛した。


「カイト様!!」

「はい?」

「何なんですか!?これ!!」


 リュツィフェールが出ていってからそんなに時間は経っていない。それなのにミカエリスが小綺麗なボロを引きずって中に入ってきた。珍しいことにミカエリスはキレていた。そう昔、私がフレイと対峙した時……ゾンビ並みの生命力を持つフレイにブチキレて世界崩壊をさせた時並みの私……のようにキレていた。ミカエリスは私に気を失ったフレイを突き付けて叫ぶ。その後ろでリュツィフェールがいた。


「何って変態」

「私とリュツィフェールの必殺技受けても起き上がるなんてどんな神経してるんですか!?」

「お前ら必殺技まで出したんか」


 平然と答える私にミカエリスは更に叫ぶ。必殺技まで受けて生きてるフレイもフレイだけど受け流されてるミカエリスもミカエリスだな。


「だって中々死なないんですよ!?」

「……変態って絶滅しないんだね」

「変態だから仕方ないよ」

「変態だしね」


 ミカエリスの叫びにミーアが呟いた。それに私が変態と言えば納得したミーア。よくわかっているね、ミーア。変態は全世界共通でしぶといんだよ。


「カイト様!!」


 全く取り合わない私に痺れを切らしたミカエリス。その叫びに今まで気を失っていたフレイが起きた。


「……ブー……リ……様……」


 フレイは私を見て目を見開いた。そして、ミカエリスの手を逃れ私に近付く。


「ブーリ様!!」


 私に抱き付いたフレイ。抱き付く前のフレイの目が捨てられた子供の目をしていたので私は動けなかった。しかし、それが間違いであったことをすぐに認識した。


「……フレイ」

「はい、ブーリさまッ!?」

「テメェ、何しやがる!!この変態がッ!!」

「ナニって……こづグホッ!?」

「言わんで良いわ!!この変態!!今すぐ滅びろ、変態!!死にさらせ、変態!!滅するが良い、変態!!」


 ソファに座る私に抱き付いたフレイ。私の太ももに顔を押し付け、スカートの裾から手を入れて太ももを撫でるフレイ。そいつの頭を喚び寄せたグリモワールの角で殴った。それが直撃しても平然として起き上がったフレイに足蹴りを食らわせ床に這いつくばったところを更に足蹴りした。


「あぁ……!!ブーリ様!!」

「……真正の変態……」


 私に踏まれ悦楽の声を上げるフレイ。それにミーアが呟き、その場にいる全員がドン引きした。


「はぁ……フレイ」

「なんですか?ブーリ様」

「お前のパピルス紙渡してくれないか?」

「もちろんです!!」


 フレイとのやり取りは永遠に終わらないので私は仕切り直してフレイにお願いをした。それにフレイは嬉しそうに頷いてパピルス紙を渡してくれた。


「妾達のも渡しておくぞ」

「ありがとう」


 フリッグからパピルス紙を三枚貰った。フリッグ、イズン、フレイア。これで神書スカンディナビアが完成した。

 私はスカンディナビアをグリモワールに取り込む事を決めた。私は端の方に移動してグリモワールを開いた。


「【ソロモンの名の元に グリモワールに新たなるページを増やさん 神書スカンディナビア】」


 私が詠唱するとパピルス紙は私の手から離れ舞い上がりグリモワールの表紙に吸収された。そして、中を開くと新しくページが増やされていた。


「では、妾達は戻るとするかの」

「またアップルパイ作りに参りますわぁ」

「ブーリ様、兄さんをよろしくね」

「連れて帰れ、コノヤロウ」


 フリッグとイズンとフレイアが還っていった。フレイを置いて。私的には連れて帰って欲しかったが……。私に抱き付いて離れないフレイを引き剥がせた勇者は誰もいないので諦めた私。仕方ないのでオーディンに確認したかった事をフレイに聞いた。


「フレイ、この世界にはどうやって来た?」

「喚ばれました。神書スカンディナビアに流された魔力で強制的に。元々神書スカンディナビアは召喚用に作られた魔術書ではなく、私達……私とブーリ様の事を書いた物語集です。それなのに呼び出せたのはそれに何か特殊な力があると考えられます」


 私の問いに答えるフレイ。その顔は不服と言った表情をしていた。神は異様に気位が高いから無理矢理従わせられたのが嫌だったのだろう。


「ソイツから何を命じられた?」

「ジューン王国を廃国にすることです」

「廃国か……」

「私達は召喚されたことにより、逆らうことができずジューン王国の首都を目指していました。その途中でこの馬車を見つけブーリ様にお逢いできました」

「そう……」


 フレイの言葉に私は眉を顰めた。廃国か……国を滅ぼせとか言われたんだろう。んで、その途中で私達を見付けたと笑みを浮かべ回りに花を咲かせながら言うフレイ。襲撃したの間違いだろう。それに苦笑した私。


「ただ、気になることがあります。あの人間から死臭と死疫の臭いがしました。それに悪魔の気配もしましたし」

「死臭と死疫と悪魔……」

「はい。あれは国規模の大量殺戮を行ったのでしょう。世界を多い尽くす程の闇を抱えています」


 フレイの話とフェニックスと朱雀の襲撃は同じと見て良いだろう。そして、悪魔はレメゲトンから召喚してるのを使役しているのだろう。それを使い国を滅ぼしているのだろう。それで人間が呪っているのだろう。ただ、その人間の目的がわからない。世界を崩壊させるのが目的なのか、それとも別に目的があるのか。謎である。



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