十二話
「シド、何が起こってるんだ!!」
「どうやら戦闘に巻き込まれた様ですね」
カイトが結界にぶつかり、エーベハルト達は外で戦いがなされているのに気が付いた。シドはカイトに壊された結界を張り直し、スモークフィルムで戦闘を見えなくした。
「戦闘?なら、僕達も行くよ。いくらなんでもカイトだけじゃ危険だ」
「その必要はありません。むしろ貴殿方は邪魔でしかありません」
エーベハルトとアルシュタートが武器を手に持ち、カイトの援護に行こうとしたがリュツィフェールに止められた。だが、リュツィフェールの制止を振り切り結界を出ようとしたエーベハルトとアルシュタートに声がかけられた。
「あらぁ?行かれてしまうのですかぁ?残念ですわぁ。アップルパイを用意しましたのにぃ」
「そなた達が行った所でブーリ様にフルボッコにされるのが落ちじゃ。止めておくがよい」
「!?」
残念そうな柔らかい声と呆れたような声が食堂から通じる扉の方から聞こえてエーベハルト達が振り返った。そこには金髪の癖毛が美しい優しそうな美女と黒髪のストレートが美しい強気な美女がいた。お茶の用意をして。
シドとリュツィフェールは存在を知っていたので無視をしていたが。
「だ、誰ですか!?」
「妾はフリッグ。ブーリ様を投げ飛ばしたアホの妻じゃ」
「私はぁ、イズンですわぁ。詩の神ブラギの妻ですわぁ」
テーブルにお茶の準備をし始めた優しそうな美女もといイズンと強気な美女もといフリッグにミーアが突っ込んだ。それにのほほんとイズンとフリッグは答えた。
「ほれ、そこの童二人もお座り。ブーリ様に殺されたくないのならば従うがよい」
「童じゃない!!」
紅茶とアップルパイを配るイズンとエーベハルトとアルシュタートを呼び寄せるフリッグ。子供扱いするフリッグにエーベハルトは叫んだ。アルシュタートも顔がひきつっていた。
「ブーリって誰かな?」
「先程、吹っ飛ばされていた女子の事じゃ。あの方は妾達の創主ブーリ様じゃ。女子でも変わらずの独裁者っぷりじゃのぅ」
「男性のブーリ様も素敵でしたがぁ、女性のブーリ様も素敵ですわぁ。フレイが襲いたくなるのもぉ、わかりますわぁ」
「あれはただのブーリ様狂いじゃ。理解せんでよいぞ、イズンよ」
アルシュタートの問いにフリッグはアップルパイを食べながら答えた。イズンも紅茶を飲みながらのほほんと言う。それにフリッグが突っ込みを入れた。
「でも、兄さんがブーリ様に狂ったのって、はむ、ブーリ様の美しさに惹かれて、はむ、館に不法侵入したのが、はむ、原因じゃん。はむ、ブーリ様に、はむ、お仕置きされて、はむ、ブーリ様の、はむ、女王様気質に、はむ、見入られたんだよね〜」
「それはただの変態じゃ、フレイア。そして、食うか喋るかどちらかにせい」
「はーい。はむはむはむ」
「全く……どうしようもない兄妹じゃな。そなたら童はこのどうしようもない兄妹のようになるでないぞ。将来碌なエルフにならぬからな」
何処からか現れた女もといフレイアがアップルパイを食べながら話に参加してきた。それにフリッグは呆れ、クリス達の頭を撫でた。
「リュツィフェール!!ミカエリスの援護に行け!!……って!!フリッグ!?イズン!?フレイア!?なんでお前ら茶してんだよ!!」
戦闘を終えたカイトがリュツィフェールに声をかけるために振り返った。そして、ソファに座ってお茶をしているフリッグ達を見て驚いていた。
「お疲れ様じゃの、ブーリ様。妾達は戦闘に参加したくなかった故、ブーリ様の気配を察し避難させてもらったのじゃ」
「ブーリ様ぁ、アップルパイ如何ですかぁ?」
「あー……貰おうか、イズン。取り合えず、リュツィフェールはミカエリスの援護な。私も行こうかと思ったがくれてやる。一人残らず狩れ」
「畏まりました」
フリッグとイズンの言葉に脱力して戦意喪失したカイトはリュツィフェールに全てを任せてソファに座った。リュツィフェールはカイトの命に従い、外に向かった。




