十一話
朝から辛い目にあったぜ……。
リュツィフェールに私の暴食が見付かり三時間の説教を受け現在、居間にて反省中の札を首から下げて正座していた。そして、私の手が届かない所に桃が鎮座している。そんな異様な光景が繰り広げられていた。
「……何があったんですか?」
「あんな大人になってはダメですよ」
「……」
いやいや、シドさん。ミーアの質問に答えられてない上に良い笑みを向けて注意するなよ!!ミーアの顔がひきつってるよ!!
二階から降りて子供達や大人組に唖然とされ、クリシュナには大爆笑され、マーラには無言を貰った。
エーベハルト達は朝食を食べてそれぞれ行動を始めた。エーベハルトとアルシュタートは修練場に行き、アルバートとセフィリナは二人に付いていった。クリスとサーシャは図書室に向かい、リーリナはミーアと一緒に居間で勉強中だ。
「カイトさん、これってどうなるの?」
「それはね……」
リュツィフェールの仕置きで今も正座中の私に勉強が行き詰まったミーアが質問してきた。その質問に答えると修練場からセフィリナとアルバートが図書室からクリスとサーシャが出てきた。心なしか落ち込んでいるように思える。
「何があったよ?」
「……お前達にはまだ早いって……」
「……本がわからない……」
「あー……」
なるほど。エーベハルト達は教えるのに向かないタイプか。これは仕方無い。私が手を打ちますか。
「セフィリナとアルバートはクリシュナに頼んでみな。魔法は……魔法か……微妙だな。魔法特化型はいるけど……教えるのはな……」
私が師を誰にするか考えていると問題にぶち当たりブツブツ言い始めた。それにセフィリナとアルバートはクリシュナを探しに行き、クリスとサーシャは大人しく待っていた。
「クリス、サーシャ、リーリナ、ミーア。皆で端に集まってどうしたのですか?」
「あ、フィオリーナ。この世界の魔法ってどんな?」
「え?どんなと言いますと?」
二階から降りてきたフィオリーナが私達を見て何事かと近寄ってきた。そこで私は思い出した。フィオリーナ達、エルフじゃん。と言うことは魔法を知っていてもおかしくない。ならフィオリーナに聞いた方が早いと質問した私。質問の仕方悪かったけどね。
「んとね、媒体が必要な魔法と術式が必要な魔法と感覚が必要な魔法と道具が必要な魔法かな」
「そう言うことですか。そうすると感覚が必要な魔法ですね。詠唱するのに魔法書は必要ですが、慣れてしまえば無詠唱であったり略した詠唱でも使えますから」
「なるほど」
私の言いたいことを理解したフィオリーナは納得がいったように答えてくれた。
そうかそうか。この世界は媒体無しの感覚で覚える魔法か。それは教えるの難しいわ。人によって魔力の量や質が違うからな……。威力も疎らになるだろうし……。困ったもんだわ。
「ただ、あの里に伝わる魔法を教えてあげられないのが残念です」
「うーん……フィオリーナの言う魔法を蘇らせる事は可能だけど、威力が半減するんだよね。んー……魔法のインクと魔法ペンと古代紙を使えば大丈夫かな?」
どうやら、あのエルフの里には伝承系の魔法があるようだ。しかし、朱雀・フェニックス襲来(先の出来事)で燃え尽きてしまった。それを教えられなくて残念だと困った顔をするフィオリーナ。
それを復活させることは可能だけど、方法によっては威力が下がる。一番良いのは記憶の共有だけど、人類種にはそれは無理だしね。
私は不思議ポーチから魔法のインクと魔法ペンと古代紙を取り出した。それにフィオリーナとリーリナとミーアとクリスとサーシャが首を傾げた。
「フィオリーナ、手を貸して」
「?はい」
「ありがとう」
私はフィオリーナから手を貸してもらい握る。そして、フィオリーナの記憶に意識を接続して魔法を検索した。それに数件ヒットして確認すると……あれ?案外怖いぞ。これを書き出すのはともらわれるぞ。
「フィオリーナさん。植物系の魔法が里に伝わる魔法ですか?」
「?はい。そうです」
「ソウデスカ。後で書き出しときます」
うん、改良しよう。アレは視覚的にもよろしくない。何かあった時のために原本として保管しといて改良しよう。そうしよう。
私は心に決めて魔法のインクと魔法ペンと古代紙をしまった。そして、グリモワールを取り出した。
「さて、魔法の先生だったね。大体の系統がわかったから……!?」
「!?」
グリモワールを開きながら適合者いねぇよ……とか内心毒づいていたら馬車が緊急停止した。それに驚き慌てて怪我をしないように結界を張った私。フィオリーナはミーアとリーリナを抱き締めていた。そして様々な所から人が出てきた。
「何事ですか!?」
「皆さん、怪我はありませんか!?」
「何があった!?」
「カイト!!何があったの!?」
「何事!?」
リュツィフェールが食堂から、シドが洗濯室から、エーベハルトとアルシュタートが修練場から、クリシュナがマーラとアルバートとセフィリナを連れて庭から出てきた。
「取り合えず、私が見てくるからリュツィとシドはフィオリーナ達をよろしく」
シドとリュツィフェールが私の言葉に頷いて結界を張った。それを見て外の状況を確かめるために私は外に出ようと扉を開けた瞬間、吹き飛ばされた。何が起きたのかいまいち理解できなかった。
「我がスレイプニルがいると思えば、雑魚か。つまらぬ」
「グハッ!!」
至極残念がる声がしたと思ったら首を絞められた。このままではヤバイと思った瞬間、投げられ何かにぶつかった。
「【回復の恵みをここに】」
「何をしているのです。みっともない」
「ゴホッ!!ッ……悪い。シド、リュツィフェール」
どうやらぶつかったのはシドが張った結界だったようだ。私はシドに回復の魔法をかけられ遠退きかけた意識が戻ってきた。口に溜まった地溜まりを吐き出してリュツィフェールからの叱責に笑みを浮かべた。
「アハハ、笑っちゃうな。何が目的でこの馬車を狙ったのか聞いても良いかな?オーディン。事と次第によっては貴様らを廃さねばならぬ」
「!?」
私は現状を理解した。私の目の前にいるのは悪趣味な金ぴかの兜と鎧を着た眼帯野郎。もといオーディン。オーディンを見た瞬間、私は笑いが込み上げてきた。
私に逆らうなんて愚かなことをしたね!!死の時だよ!!愚息よ!!
私はゆらりと立ち上がりニヤリと笑った。そして、オーディンの顔を蹴り飛ばし踵落としを繰り出してそのまま頭を踏みつけた。それは一瞬の内になされ、オーディンは避けることができなかった。私の速さに付いてこれる奴はいない。故に私を誰だか理解したオーディン。私に頭を踏まれながらも抵抗を見せる。
「ブー……リ……様……」
「おや、今更ですか。オーディン。この、私を、傷付けたのです。死を覚悟なさい。【グラビエンス】」
「ギャァァァ!!」
息絶え絶えのオーディンが名を呼ぶ。私の遥か大昔の名前を。それに嗤う私はオーディンの体に重力魔法をかけた。重力に押し潰されて血をばら蒔くオーディンの体。その激痛に悲鳴を上げるオーディン。その声が煩かった私は頭を踏み潰した。
「野郎の悲鳴など聞きたくありません。その口を閉じなさい。愚図が」
「ッー!!」
頭を潰され最後の悲鳴を上げて静かになったオーディン。もはやただの肉の塊となったそれから私は足を退けた。まぁ、神の肉体は人間と違って中身が無いからすぐに浄化される。そして、一枚のパピルス紙が残った。それを拾い上げ書かれている絵を睨み付けると絵は怯えた。




