十話
なんて思ったのも束の間。
ネフィリムを出発してから数時間後、問題が勃発した。
「ひーまー」
「暇だ」
お子様組とエーベハルト、アルシュタートが暇だと騒ぎ始めた。まぁ、お子様組はまだわかるがエーベハルト、アルシュタート。お前達まで子供と騒ぐな!!
お子様組の子守りをしていたクリシュナとマーラに面倒を見られているエーベハルトとアルシュタート。それに私は頭が痛くなった。
「これは……修練場でも作ったら如何ですか?」
「そうだね。ミーアは部屋だろうけど……勉強する部屋とか図書室も作るよ」
私は急いで異空間を拡大した。追加で勉強する部屋と図書室、修練場を作り出した。
「居間に全員集合」
放送をかけた私は居間で仁王立ちをした。すぐに全員が集まった。
「集まったようだな。では、説明する。先程、拡大作業を行った。追加されたのは修練場と勉強する部屋と図書室だ。修練場は左側に図書室と勉強する部屋は右側に追加した。それぞれ受付に人がいるから説明を受けるように。私からは以上だ」
「早速使って良いか!?」
「ダメ。もう夜だし夕食食べたら風呂入って即寝ろ。修練場と図書室は明日からだ。鍵かけてあるから開けるなよ。焦げるからな。解散」
「……」
私が説明を始めるとエーベハルトの目が輝いた。子供達は首を傾げていたが。そして、今にも行きたそうなエーベハルトに釘を刺す。そう、今はもう夜で騒ぐ時間ではない。今、シドとリュツィフェールが夕食の支度をしているから出来上がりを待つだけなのだ。恨めしそうに私を見るエーベハルトに更に釘を刺して私は自室に戻った。
私が自室に戻り程なくして夕食になった。とは言っても私は夕食に参加しない。自室から繋がる図書館でレメゲトンの調査をしなくてはならない。私はフェニックスのパピルス紙片手に図書館を練り歩く。パピルス紙に書かれた言語の世界を特定しなければ話にならないからだ。そして、ある書架で足を止めた。
「見付けた。イブリズ銀河団の侵略惑星ザグリエルで作られたレメゲトンか……。厄介だな……。全く……碌な事をしない星だ。既に滅びていると言うのにその亡霊に脅かされなければならないなんて胸くそ悪い」
私は一冊の本を取り出した。表紙が真っ黒い本を。中を開けばパピルス紙に書かれている言語と同じ。それに顔を顰めた。本を本棚に戻し、私は図書館を後にした。
私が自室に戻るとクリシュナとマーラがいた。クリシュナは私が戻ってきたのに気が付いて笑みを向けた。マーラはクリシュナの膝枕でお休み中。てか、人のベッドで寝てんじゃねぇよ。
「セフィリナ、アルバートが剣を習いたいらしいよ。クリスは魔法。サーシャは回復魔法。リーリナはミーアと同じことをしたいって」
「剣ならエーベハルトかクリシュナが教えればいい。魔法は……アルシュタートあたりができるはずだ。アレは隠しているが厄介事の塊だ。できてもおかしくない。回復魔法はシドに習えば良い。ミーアのはマーラが教えれば良い」
「言うと思ったよ」
クリシュナが夕食の時の事を報告してきた。それに簡潔に答えた私に肩を竦めたクリシュナ。
「じゃあ、僕も寝るよ。お休みー」
「……人のベッドで寝るなよ……」
いそいそと私のベッドに潜り込んだクリシュナはマーラを抱き締めて眠りについた。それを見て私は溜め息をついた。
私は自室から出て居間に行く。居間には誰も居なかった。それに眉を顰め、外に出た。馬車の扉を開けると血の海ができていた。先頭の方を見ると巨大な物が横たわっていた。
「三体目か」
「はい。どうやらヘカントケイル族のコットスの様です」
「そうか」
三体目は巨人の一人であるヘカントケイル族コットス。神に分類される五十頭百手の巨人。私はミカエリスにより屠られたコットスに合掌した。ミカエリスは返り血を浴びずに立っているところを見ると巨人であることが災いしたのだろう。巨人とかってデカイ分動作が遅いし。そこを狙われたに違いない。本当に容赦がない。ミカエリス(本人)は生き生きしてるし。
コットスの体が消えて一枚の紙が血溜まりに落ちた。それを拾い、血を浄化させた私は紙を見て顔を顰めた。
「羊皮紙か……テオゴニア……ザグリエルの言語で無いのを見ると違う星か……頭が痛いな……」
「この世界は何なんでしょうね。神や悪魔の召喚魔術書がある上に召喚できる人物がいる事実。他の者達が見過ごすとは思えませんが……」
「今考えられる可能性は二通りだけど、信憑性が全くない上にどちらも証拠がないから断言できない」
違う星のグリモワールが出てきたことに私は頭を抱えた。コットスを倒したミカエリスさえも不審に思う。あーもー、本当に厄介事だな!!
私は馬車に戻り、ミカエリスは馬車を走らせた。
居間に戻った私はソファに座り、桃を出して図書館からグリモワールに関連する魔術書、神歴書、宗教本、伝承等を呼び寄せ、桃を片手に読み耽た。
日の出より早い時間。エーベハルトは鍛練をするために自室を出た。昨夜、カイトが追加で作ってくれた修練場を早速利用するために二階から一階に降りる為、階段に差し掛かるとエーベハルトの視界にとんでもない光景が映った。
「!?カイト!?」
エーベハルトの視界に入ったのは居間を埋め尽くす大量の本の山と何かの種子の山。床が見えず腐海と化していた。その中心であるソファにカイトが座り桃を食べながら本を読んでいた。
エーベハルトの声が聞こえていないのかカイトは反応しないのでエーベハルトは再度カイトに声をかけた。
「カイト!!」
「ん?あ、エーベ、お早う」
「お早うじゃない。なんだ、この山は!!」
「調べ物だよ。ちょっと待ってね。片付けるから」
カイトはエーベハルトに気が付き顔をあげた。シャリシャリ言う桃を食べながら。暢気に挨拶するカイトにエーベハルトが事情説明を求めるが、カイトは詳しい事は言わず本を消して種子を消そうとした瞬間、カイトは動きを止めた。それを不審に思ったエーベハルトはカイトに声をかけようとした瞬間、後ろから不穏な空気を感じ取り固まった。エーベハルトとカイトはぎこちない動きで不穏な空気が漂う方向を向くとそこには真っ黒い笑みと真っ黒いオーラを出した大魔王様がいらっしゃいました。
「カイト様」
「ギィヤァァァァ!!ごめんなさいィィィ!!」
リュツィフェールに名前を呼ばれたカイトは泣きながら土下座をした。エーベハルトはリュツィフェールの真っ黒いオーラと笑みに冷や汗が流れ、リュツィフェールに説教をされているカイトに合掌した。




