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高崎駐屯地

現実でも防衛関連予算による鉄道整備の検討が始まったみたいですね。ただ、欧米諸国などでも行われている、防衛予算の範囲を広げることで対GDP比防衛予算の底上げを狙ったものであって根本的に鉄道を活用しようという動きには見えませんが…。北海道や日本海東北、山陰などの路線が保全されると嬉しいですね。作中でもこの動きに合わせて路線網の保全を取り入れようかなとも思います。

 官舎を駆けだした網干は、5分ほど走って駐屯地の正門へ辿り着く。「陸上自衛隊 高崎駐屯地」「自衛隊輸送集団 高崎車両地区」二段になった銘板を横目に警衛に身分証を呈示し、鉄道輸送隊の隊舎へ急ぐ。駐屯地内では12後支(第12後方支援隊)高崎派遣隊の隊員が走り回っていた。


「隊長!」


目線の向こうで手を振るのは門司曹長だ。


「新津さんから、災派(災害派遣)になるそうです。」


「オッケー。曹長、車両点検もう始めて。線路も。」


「了解!」


敬礼の後駆け出した門司を見送り、隊舎へ入り新津、三島と合流する。


「まだ詳細は分かりませんが東海道方面は恐らく全滅です。」


「プッシュ型支援を始めるだろうから輸送経路の確保ないし啓開が必要だ。どうします?」


ホワイトボードに走り書きで情報を整理し、運用計画小隊長の利府3尉を呼びだす。


「機関車の整備ローテーションから考えると、2方面までなら1日1往復の経路を確保できます。」


「2方面か、どうする、当然だけど東海道線は使えないだろう?」


利府を加えた4人で輸送計画を立てていると、扉を叩く音がした。入ってきたのは新橋2佐だ。


「失礼、仮だが緊急時輸送計画の書類があるから持ってきた。」


新橋は小脇に抱えたファイルを開くと、いくらかの資料を机に広げた。


「…東海櫛の歯作戦?」


櫛の歯作戦とは、東日本大震災において政府が実施した高速道路啓開の方式のことである。比較的被害が軽微でかつ主要な内陸部の道路(=東北自動車道)を真っ先に通行可能にし、そこから櫛の歯のように沿岸部へ延びる各自動車道を整備していくという作戦により、迅速な経路確保と輸送が可能となった。


「防災庁と国交省(国土交通省)の合同立案の計画だ。そしてこれが、仮だが輸送集団の作戦への参加概要。」


国土地理院の地図を加工した図面上に、輸送ルートが数パターン書き込まれていた。


「上越線並びに日本海縦貫線、中央本線、篠ノ井線、湖西線、山陽本線、加古川線。まだ詳細は上がってないが使えるもしくはすぐ使えるようになるルートがあるだろう。各パターンでどう輸送するか計画を立ててほしい。それと、私は明日から東京の災害対策本部に行かなければならなくなった。ここは君らに任せることになるがよろしく頼む。」


言い終えると新橋は部屋を後にした。そして網干ら4人は資料を囲み会議を再開する。


「中央線が使えるなら名古屋までは出られるな。可能なら名古屋と東京の2拠点で進めたい。」


「日本海経由も視野に入れると京都までは確実に行けるかと。」


「しかしこちらから出せる装備も向こうのニーズも分かりません。」


「名古屋を拠点とするなら輸送支援群と調整が…」


「結局、線路状況も上の方針も明日以降だしなぁ。」


日本国内に無数に張り巡らされた路線網をいかに使うか。創設から1年足らずの鉄道輸送隊は、最初にして最大の困難に立ち向かおうとしていた。彼らはまだ、この先に立ちはだかる壁を知らない。

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