第67話 こいつらが何言ってるのか分かるのかよ
仁志が地下で巨大ロボットを動かして遊んでいる頃、上の店舗ではスカイが接客アンドロイドの『先輩』から、店の昔話を聞いていた。
『へぇー! 太平洋戦争の時はそんな感じだったんだな!』
「ハイ ヒトシサマノ オジイサマハ カタクナニ センキョウヲ サユウスルヨウナ ヘイキハ ウラズ タダ クニノユクスエヲ シズカニ ミマモッテオラレマシタ」
先輩が当時の記憶を語っていると、スーッと静かに引き戸が少しだけ開き、30センチほどの鉄の船のような飛行物体が、ふわふわと宙に浮きながら店内へ入ってきた。
『なんだぁ、ありゃ? 玩具か?』
「イラッシャイマセ ナニカオサガシデスカ?」
鉄の船は「ウー! ウー!」と甲高い警告音を鳴らしながら、一直線に先輩の前へと近づいてきた。
そして警告音がピッタリ止まった瞬間、船の側面に並んだ砲門が一斉に開き、小さなミサイルや機銃での一斉掃射が始まった。
『おい先輩!? 大丈夫かよッ!?』
画面のスカイが声を上げるが、あまりにも攻撃のスケールが小さかった為、先輩はビクともしない。
「オキャクサマ テンナイデノ ブリョクコウイハ キンシサレテオリマス」
先輩は穏やかな声で警告すると、バタバタと攻撃を続けるミニチュア戦艦を大きな手でガシッと優しく掴み、慎重にカウンターの上へと置いた。
やがて諦めたように攻撃を止めた船のハッチが開き、中から米粒よりも小さな小人たちが数人、慌てた様子で出てきた。
「〇×△◇!! 〇×△◇!?」
『こいつら、甲高い声で一体なんて言ってんだ?』
小人たちが手振り身振りを交えて必死に何かを訴えかけているが、声が小さすぎてスカイには聞き取れない。
「イキナリ ワタシノヨウナモノガ メノマエニイタラ オドロクノモ ムリハアリマセン ドウゾ オキニナサラズ」
『……えっ、こいつらが何言ってるのか分かるのかよ先輩!?』
スカイが驚愕の声を上げるが、先輩にはしっかりと届いているようだった。
「〇×△◇……◇△」
「デシタラ コチラハ イカガデショウカ?」
先輩は棚の奥から40センチほどのプラモデルのような宇宙戦艦を持ってきた。
「コチラハ ハドウホウガ トウサイサレテオリマスヨ」
「〇×△◇!? 〇×△◇!!」
小人たちは宇宙戦艦を見上げるなり、歓声を上げた。
「ダイキンハ ソチラノ テツノフネ アト オキャクサマノ ゲンゴデータ シュトクノタメ フネノオンセイキロクヲ イタダケレバ ジュウブンデス」
小人たちは顔を見合わせてしばらく相談し合うと、納得したように頷き合って元の船からぞろぞろと全員降りてきた。
「〇×△◇!」
そして、新しく手に入れた宇宙戦艦へと嬉しそうに乗り込んでいった。
宇宙戦艦はふわっと宙に浮き上がると、出口の引き戸に向かって飛んでいき、静かに外へと出て行く。
宇宙戦艦が完全に店の外へ出ると、引き戸がスッと閉まった。
「アリガトウゴザイマシタ マタノゴライテンヲ オマチシテオリマス」
先輩が静かに引き戸に向かってお辞儀をする。
『先輩……平然と対応をしてたけどさ、さっきみたいな小人の客に会ったことがあったのか?』
「イエ ワタシジシンハ ハジメテアイマシタガ ミセノカコノトリヒキデータニ ノコッテイタヨウデス」
『……流石だな先輩! 頼りになるぜ!』
スカイは画面の中で小さな手をパチパチと叩きながら、『先輩』がただ者ではないことを改めて痛感した。




