第66話 平気でサボって遊んでただろ
「暇だな……」
今日は客が一人も来ず、仁志はカウンターで暇を持て余していた。
「……久々に地下の『あいつ』でも動かしてみるか」
仁志は重い腰を上げると、カウンター奥から接客アンドロイドの『先輩』を引っ張り出して背中の電源を入れ、空中にホログラム画面を開き『スカイ』を呼び出した。
「ちょっと地下に行ってくるから、店番よろしくな」
「カシコマリマシタ イッテラッシャイマセ」
『あいよー! 留守番は任せとけ! なぁ先輩、仁志が降りてる間にまたこの店の昔の面白い話教えてくれよ!』
「カシコマリマシタ ワタシガ オツタエデキルコトデ アレバ」
先輩とスカイが仲良く会話を交わしている横を通り過ぎ、仁志は地下倉庫へと降りて行った。
仁志は地下倉庫の奥深く、大型機械やメカ類が保管されているエリアへと足を運ぶと、一体のロボットの足元で足を止めた。
仁志の見上げる目の前には、身の丈40メートルを軽く超える、巨大な合体ロボットだった。
「やっぱいいなぁ、昔の戦隊ヒーローが乗ってた合体メカ。親父が買い取った時は、嬉しくて毎日コックピットで遊んでたっけな」
仁志は懐かしそうに目を細めると、ハシゴとエレベーターを使ってロボットの上部へと登り、コックピットの中へと入ってシートに腰掛けた。
「このシートに座った世界を救える気がしてくる全能感……やっぱり男のロマンだよな。最近は戦隊ヒーローをあんまり見かけなくなったな……」
仁志は手慣れた手つきで、近くに立てかけられていた巨大な大剣をロボットの手で持ち構えさせた。
「元々は5人揃わないと、合体前の各マシンや個別ウェポンを動かせないから、未だにこいつが分離・合体するところは見たことないんだよなー」
仁志はコックピットの中でボヤきながら、巨大ロボットを動かし、空間内で豪快に大剣を振り回してみせた。
「そうだ、今度あの巨人のドンドが店に来た時に、俺がこれに乗って出迎えてやるか! ドンドよりも遥かにデカいからな、きっと驚くぞ」
そんなことを呟きながら動かしていると、ふとコックピットの外部モニターの足元に、こちらを見上げる平治の姿が映し出された。
平治は腕を組み、仁志に向かってどこか冷ややかな目でこちらを見上げている。
「あ……」
仁志はバツの悪そうな顔を浮かべると、ロボットを停止させ、コックピットからそそくさと降りた。
足元へと降りてきた仁志の元へ、平治がツカツカと歩み寄ってくる。
「おい仁志! お前、店番をサボって一体全体何をして遊んどるんだ! わしには『今の店主は俺なんだから手出しすんな』とか威張って店番をさせんくせに、自分はロボットで遊ぶとは何事だ!」
カンカンに怒る平治から説教と文句を言われながら、仁志は——
(……親父が店主だった時は、平気でサボって遊んでただろ……)
と、心の中で言葉には出さず思っていた。




