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第48話 ちょっと俺も試してみていいか?

「サーセーン! 買い取りおなっしゃっす!」


少し前の時代のチンピラみたいな派手な格好をした若い男が、くっちゃくっちゃとガムを噛みながらサングラスを少しずらし、カウンターにドカッと肘をついて仁志に話しかけてきた。


「……買い取ってもいいけど、犯罪まがいの物はお断りだからな」


仁志がスポーツ新聞から目を離さずに釘を刺す。


「何言ってるんすかww? 自分、正義のヒーローっすよww」


男は軽薄に笑うが、どこからどう見ても街のチンピラにしか見えない。


「買い取りして貰いたいのは、この変身ベルトなんすよー」


チンピラ風の男は派手なシャツの前をはだけさせると、腰に装着していたメカメカしいベルトを見せてきた。


「変身ベルトか……。ちょっと見せてくれ」


「いいっすよー」


男がカチッとバックルを外してカウンターに置く。


「あんたヒーローならさ、これ手放したら戦う時に困るんじゃないのか?」


「いやー、自分この前ヤバい怪人と戦ってボコボコに負けたんすけど、基地のジジイがパワーアップした新型を作ってくれたんすわw」


「へぇー、そうなのかい」


仁志はいつものように気だるげだが、男心をくすぐるメカメカしい変身ベルトを前に、内心ちょっとワクワクしていた。


「……で、これどうやって変身するんだ?」


「腰にベルト巻いてー、ポーズ決めて両手広げてー、『変身!』って叫びながらベルトのこの真ん中のボタンを押すんす」


「……ボタン押して起動するなら、わざわざ両手広げて『変身!』って叫ぶ意味あるのか?」


「お約束っすよ、お約束! 」


「そうかい……ちょっと俺も試してみていいか?」


「いいっすよー」


仁志は男からベルトを受け取ると、自分の腰に回して装着し、真ん中の赤いボタンを押してみた。

すると瞬時に仁志の全身が眩い光に包まれ、一瞬にして赤を基調としたスタイリッシュな特撮ヒーローっぽいスーツ姿へと変わった。


「おお! すごいな、俺でも変身できたぞ!」


仁志が自分の手や胸の装甲を見回して感心していると、男がニヤニヤしながら言った。


「その旧型バージョンはスーツ着ても身体能力とか全然変わらないんで、改造人間じゃないと、ただのコスプレと変わらんすけどねーww」


「……じゃあ、元々あんたがこれ着て変身する意味もなかったんじゃないのか?」


「だからお約束っすよー。あとは顔と正体を隠す身バレ防止ね」


男が指で顔にバッテン印をしながら言った。

仁志がもう一度ボタンを押すと、光とともに一瞬で元の姿に戻った。


「よし、このベルト買い取るよ」


「マジっすか! じゃあ10万で買い取って貰えないっすか? 新バージョンのベルトでめっちゃ金かかったから、今月まじでピンチなんすよー」


「10万かぁ……うーん……」


仁志が腕を組みながら考えて唸る。


「なかなかこいつ、売れる場所ないんで! マジ頼むっす!」


男が両手を合わせて拝むように頼み込んでくる。

仁志は改めて手元の変身ベルトを見つめた。


「……わかった。10万で買い取るよ」


「あざーす! 助かったわー! 今度、倒した怪人の武器とかパーツも持ってきますわ!」


男は仁志からホクホク顔で10万円を受け取ると、肩を風で切るように揺らしながら外へと出て行った。


「毎度ありー……」


引き戸が閉まり、男の姿が見えなくなったのを確認すると、仁志は誰もいなくなった店内でそっと腰に買い取ったばかりの変身ベルトを装着した。

そして、誰も見ていないのを確認してから——。


「……変身!」


と小さく呟き、両手を大きく広げながら力強くベルトのボタンを押した。

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