第34話 お前ならこれ、いくらで買うんだ?
「よしよし! 今回も掘り出し物を見つけられたぞー!」
今日も、常連客の魔導師マーニアが1000円均一のワゴンや怪しい小物の棚を吟味すること2時間、ようやく商品をカウンターへ並べた。
「はいはい、3つで……2100円だな。ほんと、毎回長居するわりには、安物しか買っていかないなお前は……」
仁志は呆れたようにため息をつく。
「仕方ないでしょう! 仁志さんが僕の世界の通貨での支払いをさせてくれないし、僕の持ってきたマジックアイテムの買取もしてくれないんですから! 」
「そりゃそうだろ。お前に大金を持たせたら、居座る時間が今の倍になるだろうから絶対に駄目だ」
仁志は煙草の吸いながら、意地悪く笑った。
「はぁ……。それに、掘り出し物以外にも絶対地下倉庫に凄いものが山ほど眠ってるはずなのに、見せてくれないんだもんなぁ……」
マーニアはがっくりと肩を落とし、丸メガネの位置を直しながらいじけた。
「そうだ。掘り出し物と言えば、この前来た客が置いていったやつで、価値がよく分からんのがあるんだ。お前、ちょっと見てくれないか?」
「え? 仁志さんが価値の分からないものですか?」
仁志はカウンターの引き出しから、以前にヘドロのような粘体が置いていった、透き通った青い石を取り出して見せた。
「店に鑑定させても『ブルージェルから稀に取れる石』としか表示されなくてな。いくらで売るか迷ってるんだ。お前なら何か分かるか?」
「えっ!? ブ、ブルージェルの石ですか!!? ちょっと見せてください!!」
マーニアは目を見開き、青い石を受け取ると、懐から魔法の拡大ルーペを取り出してまじまじと観察し始めた。
「ス、スゴい……! 本物だ! これ、めちゃくちゃ激レアな秘宝ですよ!!」
マーニアが興奮して熱弁を振るい始める。
「前に偉い賢者様に見せて貰ったことがあるんです! この石に魔力を込めると、ブルージェルと同等の粘体を複数体生み出して、それを自由自在に操れるんですよ!」
「……それって、そんなにすごいのか?」
仁志はピンと来ない顔で首をかしげる。
「すごいどころじゃないですよ! ブルージェルは僕らの世界じゃ凶悪な魔物なんです! 物理攻撃は効かないし、魔法も通りにくいし、身体の硬さを自由に変えて攻撃してくるから厄介で……。しかも、ブルージェルを1万体倒して1個出るか出ないかの確率なんです! あとは、大昔に魔物と会話ができたっていう伝説の賢者が、直接譲り受けたっていうおとぎ話くらいですよ!」
「へぇー、そうなのか……。ただの綺麗な石かと思ってた」
仁志はマーニアから石を受け取ると、蛍光灯の光にかざしてまじまじと眺めた。
「で、お前ならこれ、いくらで買うんだ?」
「この店の値段の基準がさっぱり分からないですよ……。ただ、僕の世界の国立魔法機関や王宮魔導師なら、大金を出してでも手に入れようとしますよ」
マーニアが深々とため息をつきながら答える。
「なるほどねぇ。なら、売り物にするのは一旦保留にしとくか。ちゃんと取引したわけでもないしな」
仁志は納得したように頷くと、青い石を再びカウンターの引き出しへと仕舞い込んだ。
「そもそも仁志さん、どうやって手に入れたんですか?」
「ん? 店に入ってきたヘドロみたいな粘体に、親父の置いていった魔石をやったら、置いていったんだよ」
「……どういう状況ですか、それ……」
あまりにも呆気なさすぎる経緯を聞かされ、マーニアは開いた口が塞がらない様子で固まった。
仁志はニヤニヤと楽しそうに笑いながら、マーニアの呆れ顔を呑気に眺めた。




