第33話 贅沢はできんが、生活に困ってもないだろ?
「只野ー!」
誠司が小学校から靴を履き替えて帰ろうとすると、同級生に声をかけられた。
「なに、小林くん?」
「お前んちって確かリサイクルショップだろ? いま大人気の『バケモノカード』とか置いてないのか?」
誠司はそれを聞くと、うーんと腕を組んだ。
「……うちの店、変な物しか置いてないから、バケモノカードはないと思うな……」
「そうなのか……。リサイクルショップなら、昔のレアカードとかプレミアムカードがありそうだと思ったんだけどなー」
「お父さんに一応聞いてみるよ。じゃあね、小林くん!」
誠司は校門を出ると、そのまままっすぐ父親の店へと向かった。
誠司は商店街の脇にある細い路地裏に入り、『ただの』の引き戸を開けた。
「ん? 誠司か……どうした? 学校帰りか」
カウンターで新聞を読んでいた仁志が、咥えていた煙草を灰皿で揉み消しながら声をかける。
「お父さん、うちに『バケモノカード』って置いてある?」
「バケモノカードか……。カードゲームだろ? うちにあると思うか?」
仁志が苦笑いしながら返す。
「そうだよね……。でもね、いまバケモノカードの古いやつとか、レアカードがすごく高値で取引されてて、うちでも扱ったら儲かるんじゃない?」
「流行って価格が跳ね上がってるようなもの、店に置いてもなあ……。どうせうちの店じゃ儲けられないからな……」
仁志はうーんと腕を組んで唸った。
「どうして? 高く売れば儲かるじゃん」
「この店には変な査定基準があってな。ふっかけて高く売ろうとすると、客も俺も店から出れなくなるんだよ……。しかも、少しずつ店内が薄暗くなっていって、最後は客と一緒に暗闇に閉じ込められるんだ……」
「えっ!? なにそれ、この店すごく怖いんだけど!?」
誠司が店内を見渡しながら声を上げる。
「ほら、俺の友達の昇いるだろ? あいつが以前、政府の買い出しに来た時に、政府側の言い値で金を受け取ろうとしたらそうなった……。まあ、適当な金額にしたら元に戻れたけどな」
「だから、うちの店ってあんまり儲かってなさそうなのかな……」
誠司ががっくりと肩を落とす。
「まあ、贅沢はできんが、生活に困ってもないだろ?」
仁志が苦笑いを浮かべる。
「……そうだね。小林くんには『なかった』って言っておくよ」
「せっかく誠司が店に来たんだ。もう今日は店閉めて、二人でバケモノカードでも買いに行ってみるか?」
「えっ、いいの!? やったー!」
誠司が笑顔をみせる。
仁志は帰り支度をすると、誠司と並んで店の出口へと向かった。
「いま大人気だから、近所で買える店あるかな……」
「電車で電気街にでも行ってみるか? パックの最新のは買えなくても、何かしらあるだろ」
「うん! ありがとう、お父さん!」
引き戸を開けて店から出ると、仁志はガチャリと鍵を閉めた。




