第28話 なんで車掌がうちの店を知ってんだか
「すみません。こちらにエネルギーボールは置いてありますか?」
仁志がカウンターのテレビでプロ野球中継を観ていると、声をかけられた。
仁志が声がした方をチラリと見ると、そこには金髪をなびかせ、黒いシックな服を着た美しい女性が立っていた。
「……あるけど、どんな用途のやつをお探しで?」
仁志はテレビ画面から視線を逸らすことなく尋ねた。
「あの……機械人間用のものが欲しいのですが……」
女性が少し申し訳なさそうに答えた。
「あんた、機械人間なのか……。この間買い取りで来た機械人間の客は、もっと見た目がメカメカしかったけどな。あんたは人間と全然見分けがつかないね」
仁志はパッとテレビから視線を外し、感心したように女性を見た。
「地球へ旅行に来るために、最新式のボディを新調したんです。でも、予想以上にエネルギーの消費が激しくて……。宇宙鉄道の車掌さんに『あの店に行けばあるかも』と教えていただいたんです」
「なんで車掌がうちの店を知ってんだか……。まあいいか。ちょうどこの前来たメカメカしい客が、『生身の身体に戻るからもういらん』って、エネルギーボールを大量に売っていったんだよ」
仁志は奥の棚をゴソゴソと漁り、木箱を取り出してきた。
箱の中には、ビー玉のような物体の中で、青い光が渦巻くエネルギーボールが詰まっていた。
「わぁ……! ありがとうございます! 地球に1ヶ月ほど滞在しようと思ってたので、これだけあれば足りそうです!」
女性は嬉しそうに微笑んだ。
「それにしても、生身から機械の身体に替えてもエネルギーはいるんだよな」
「ふふ、それは仕方ありませんよ。でも、病気にならないし、傷ついても痛みはありません。動かなくなったら新しいものに交換すればいいだけですから、とっても便利ですよ?」
女性は少しお茶目な表情を見せると、仁志に向かってウィンクしてみせた。
「へぇ、そんなもんかねぇ……。全部で3万円ね」
女性は代金を支払うと、箱の中からエネルギーボールを一つ取り出し、口の中へ放り込んでそのまま飲み込んだ。
すると彼女の全身から淡い青い光が漏れ出し、やがてスッと消えていった。
「ふぅー……これで一安心です。それでは、失礼しますね」
女性は残りのエネルギーボールが詰まった箱を抱えると、ツカツカと出口へ向かっていった。
「毎度ありー」
女性が引き戸を閉めて店から出ていくと、仁志は煙草に火をつけながら、ぽつりと呟いた。
「機械の身体も、ずっと動くわけじゃないか……。——あ、しまった! 今、試合中だった!」
ハッと我に返った仁志は、慌ててテレビ画面へと視線を戻した。
「よしよし! 1点リードのままだな! 今日こそは勝ってくれよリトルスターズ!!」
仁志は画面の中の選手たちに向かって熱い檄を飛ばした。




