第22話 店がうまく調整してくれてるだろうから大丈夫だろ
「いらっしゃい!」
「2人なんだけど、カウンター空いてる!?」
仕事を終えた仁志と、警察官で幼馴染の昇は、商店街にある馴染みの焼き鳥屋の暖簾をくぐった。
「とりあえず生2つと、串盛りタレで! あと、浅漬けとモツ煮ね!」
昇が素早く注文を済ませる。
「でさ、仁志。さっき言ってた『懐かしい物が手に入った』って何のことだよ?」
「実はこの前、店に火星人が来て——」
「お待たせしました! 生2つと浅漬け、モツ煮です!」
仁志が話を切り出そうとしたタイミングで、店員が注文の品を運んできた。
「「とりあえず、カンパーイ!」」
二人は乾杯すると、冷えたビールを流し込んだ。
「ぷはー……ッ! で、懐かしい物って何なんだよ?」
「これだよ。昔、よく二人で遊んでたレーザー銃。先日、火星人が買取で持ってきたんだ」
仁志はカバンから、火星人から買い取ったレトロな先端球体付きレーザー銃を取り出し、昇に見せた。
「おおッ!? 懐かしいなこれ! 小学生の頃、お前の店の地下倉庫でよくガンマンごっこして遊んでたやつじゃん!」
昇は目を輝かせ、手渡されたレーザー銃を眺めた。
「懐かしいだろ?……ただな、その火星人が言ってたんだけど、撃たれて生体に当たると消滅するらしいぞ……」
仁志が神妙な顔つきで打ち明けた。
「マジかよ……! お前の親父さん、『壊すなよー』ぐらいしか言ってなかったぞ!? っていうか、そんなヤバい物飲み屋に持ってくんなよ!」
二人は顔を見合わせ、呆れ混じりに笑いながらビールをぐっと飲み干した。
「すみませーん、生おかわり2つ! ——それにしても、小さい時は何も気にせず遊んでたけど、冷静に考えると『ただの』って危ない物ばっかり置いてあるよな」
昇は浅漬けをつまみながら、呆れ顔で言った。
「そうか? まあ、店がうまく調整してくれてるだろうから大丈夫だろ」
仁志は何食わぬ顔で、煮込みのモツを口に運ぶ。
「お前が店主としてうまくやれよ!……まあ、政府としては、一応お前の店があって助かって——」
「生おかわり2つと、串盛りタレお待ち! 」
香ばしいタレの匂いを漂わせた焼き鳥が運ばれてくる。
「……まあ、政府としては本当に助かってるよ」
昇は焼き鳥を一口頬張り、ビールで流し込んだ。
「お前も災難だよな。子供の頃、俺と地下で遊んでただけなのにさ」
仁志が苦笑いしながらビールを煽る。
「本当だよなー! 今の政府に、『ただの』に買い出しに行ける人間が他にいないからって、何かあるたびに俺へ電話が——」
昇が愚痴を言いかけたその時、ポケットのスマホが激しく鳴った。
着信元を見た瞬間、昇は反射的に姿勢を正して電話に出た。
「友野です!……あっ、長官殿! お疲れ様です! ……えっ、今からですか!? いや、もう『ただの』は今日の営業終わって閉まってますよ!?」
昇は目の前の仁志をチラリと見る。
仁志は苦笑いしながら、呑気にビールを一口飲んだ。
「明日、朝イチで店に行きますんで、何とか現場で粘ってください! 『ただの』がこっちの都合で夜に開くような店じゃないのは長官もご存知でしょう!? はい……はい……分かりました。申し訳ありませんがよろしくお願いします。はい、失礼します!」
昇はため息をつきながら通話を切った。
「大丈夫なのか、明日で? なんなら今から店に戻って開けてもいいんだぞ?」
仁志がニヤニヤと意地悪そうに昇に尋ねる。
「大丈夫、大丈夫! こっちの大妖怪が目覚めそうとか言ってたから、今回は異世界でも宇宙でもないから政府のそっち系の部署でなんとかなるだろ」
昇は残りのビールを飲み干すと、「すみません、生もう一杯!」と店員に追加を頼んだ。
「でもさ、俺と飲んでるの政府にバレたらまずいんじゃないのか?」
「大丈夫だって! 以前、俺に監視つけたり、盗聴器やら追跡機やら仕掛けようとしたら、途端に『ただの』に辿り着けなくなったんだから。それ以来、上層部も懲りて俺のプライベートには一切干渉してこないよ」
昇が笑う。
「まあ、明日は早めに店開けておくよ。妖怪系の探しとく」
「生ビールお待ち! 」
「気にせず飲もうぜ!」
「「カンパーイ!」」
二人は再びジョッキを合わせ、飲み会を仕切り直した。
「ところでさ、誠司くん最近どうだ? もう12歳だっけ?」
「あぁ、そうだよ。この前さ、珍しく店にやって来て『ほれ薬ある?』なんて聞いてきてさ——」
仁志と昇の飲み会は、まだまだ始まったばかり。




