第18話 聞いたら頭痛くなりそうだからいいや
店の地下四次元倉庫で、平治がこっちの世界の珍しいお土産や、魔界での暮らしで使えそうな電化製品・日用品を一箇所に集めていた。
「もう魔界に帰るのかよ親父。2年ぶりに帰ってきたのに……聞きたいことも、親父が酔っ払ってまともに聞けてないんだが」
仁志はため息と共に煙草の煙をふぅと吐き出した。
「わはは! こっちの酒とカグヤさんの手料理が美味すぎるのが悪い! それに仁志、お前だって本当はそこまで深く聞く気なかったろ? なんだ、只野家とこの店の成り立ちでも話してやろうか!?」
「あー、聞いたら頭痛くなりそうだからいいや。おふくろが今も生きてて、魔界で元気にやってることだけ分かったし」
「わはは! この店をやっていくなら、それくらいの適当さと軽さがちょうどいい!」
平治が腰に手を当てながら豪快に笑った。
「それよりさ、店の商品を代金も払わずにそんなに勝手に持って行っていいのかよ?」
未来のポータブル発電機、過去の頑丈な調理器具、異世界の魔法触媒など、かなりの大荷物になっていた。
「なにを言うか! これは店を無事に次の代へ引き継いで引退した者の特権じゃ! お前のじいさんとばあさんだって、引退した時にタイムマシンに荷物を山ほど詰め込んでどっか行ったろ?」
「確かに……。ばあちゃん、元々未来から来たタイムトラベラーだったんだっけ? 『ひさびさに時間旅行行ってくるわ!』って出かけたきり、一度も帰ってきてないな」
「まあ、今頃どっかの時代で生きとるんじゃないか? 知らんがな!」
平治は笑いながら、集めた大量の荷物の周囲の床に、慣れた手つきで魔法陣を描き込んでいった。
「じゃあ、そろそろ帰るとするわ! またこっちに来れそうなら、次は母さんも連れてきてやるからな!」
「おう。元気でな、親父。おふくろに『息子は元気にやってる』って伝えておいてくれ」
「カグヤさんにもよろしくな! それと……孫の誠司はお前に似ず、真面目でかしこい子だからな……。無理にこの店を継がせようとするなよ!」
「わかってるよ。俺はまだまだ引退する気なんてサラサラないから。……まあ、誠司は責任感が強いから、俺が将来引退するって言ったら渋々継いでくれそうだけどな」
仁志は煙草を咥えながら苦笑いした。
「 誠司は苦労するじゃろうな! わはは! それじゃあな、仁志!」
平治が魔石を握りしめながら魔法陣に手をかざすと、光と共に大量の荷物ごと消えていった。
「……さてと。親父も帰ったことだし、今日は店閉めて昇と飲みに行くかな……」
仁志はぐっと大きく背伸びをしながら、店へと戻った。




