第13話 店の外に出たらそこは世紀末だよ
200X年、世界は核の炎に包まれた!
海は枯れ、地は裂け……あらゆる生命体が絶滅したかにみえた。
だが、人類は死に絶えてはいなかった!
「——お客さん、いま2026年ですよ」
目の前に、モヒカン頭にトゲトゲのついた肩パッド、そして剣をブンブンと振り回す男が仁志に迫っていた。
「ヒャッハー! 命が惜しけりゃ、ここにある食料と女を全部差し出しやがれぇぇッ!」
「……」
仁志はスポーツ新聞から目を離さず、カグヤの弁当(人参と筍の煮物入り)をカウンターの上に置いた。
「うちはナマモノは扱ってないから、嫁が今朝作った弁当でよければ食うか? 」
「ヒャッハーッ! いただきだぁぁッ!」
モヒカンは強奪するように弁当箱を奪い取ると、床にしゃがみ込んでガツガツと食べ始めた。
「ほれ、冷たいお茶もあるぞ」
「ヒャッハー! ありがてぇ!……ってか、ここ2026年なのか……?」
仁志から渡された水筒のお茶を飲みながら、モヒカンが首を傾げた。
「そうだよ。多分、こっちはあんたの世界と違って、核戦争が起きなかった世界だな」
仁志は煙草に火をつける。
「マジかよ! じゃあ、このドアの外は汚染された荒野でも世紀末でもねぇのか!?」
「あんたが店の外に出たらそこは世紀末だよ」
「んだよ……期待させやがって……。外に出たら、やたら強い拳法使いどもが暴虐の限りを尽くす地獄の世界かよ……」
モヒカンはガックリと肩を落としてうなだれた。
「……その剣と物々交換で、いいものやろうか?」
仁志はカウンターに頬杖をつきながら、気怠そうに提案した。
「あぁん? 何と交換するつもりだ?」
仁志は重い腰を上げると、奥の棚から肉襦袢のようなスーツを取り出してきた。
「『対秘孔マッスルスーツ』だ。これを着れば、顔以外なら秘孔が突けなくなるぞ」
「マジかよ!? 秘孔を突かれて爆発しないのか!?」
「スーツの上からなら独特な断末魔を叫びながら死なずに済むはずだ。どうする?」
「交換だ! 」
モヒカンは手に持っていた剣をカウンターに放り投げると、ひったくるようにマッスルスーツを受け取り、その場で着込んだ。
「ヒャッハー! 秘孔が突かれないなら恐れるものは何もねぇ! これからは俺の時代だーッ!」
モヒカンは自信満々の顔で、ガラガラと引き戸を開けて元気よく店の外(世紀末)へと飛び出していった。
「毎度ありー。あくまで『秘孔を突かれないだけ』だから、気をつけろよー」
仁志は引き戸の向こうへ消えていったモヒカンに注意を飛ばすと、何事もなかったかのように再びスポーツ新聞のプロ野球のページを開いた。




