第10話 『同じ価値』ってことか
「うほうほ」
ガラガラと店の入口が開き、入ってきた客は全身が濃い毛で覆われ、腰には皮の腰蓑、手には木の棍棒を握りしめていた。
(原始人か……。言葉は通じないなこりゃ)
仁志は客を見た瞬間に会話を諦めた。
入ってきた原始人は、棚に置かれた昭和の黒電話や未知の金属球を不思議そうに手で触ったり、扇風機を恐る恐る持っていた棍棒の先でつついてみたりしている。
「触るのはいいが壊すなよー」
仁志は灰皿に煙草の灰を落としながら、一応注意をする。
原始人は店内をウロウロと探検していたが、店の大型家電と一緒に置いてある黒く四角い石柱——『モノリス』の前でピタッと動きを止めた。
その平滑で光を吸い込むような表面をじっと見つめていた。
そして、しばらくするとカウンターの前にやってきた。
「どした?」
仁志が尋ねると、原始人は持っていた棍棒を、ドンとカウンターの上に置いた。
「何だ? 買い取りか?」
原始人は何も言わず、再びモノリスの場所へと戻り、自分の背丈ほどもあるモノリスを「うほうほ」と抱え上げた。
そしてそのまま、出口へと向かって歩きだした。
(おいおい、モノリスを持って帰る気か?……まぁ、取引成立してないから出られんだろ……)
仁志は止めようともせず、カウンターに頬杖をついたまま原始人の後ろ姿を静かに伺っていた。
しかし——
原始人は普通にモノリスを抱えたまま店から出ていった。
「……普通に店から出れたってことは、この棍棒と、モノリスが『同じ価値』ってことか。ダブついてるからなモノリス」
仁志は原始人が置いていった棍棒をひょいと手に取り、何となく野球のバットのようにブンッとスイングした。




