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それなら、こいつと手を組みます ーー詐欺師扱いされて追放されたので、怨霊と手を組んで独立しましたーー  作者: sirosugi


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39 分かっていても、驚かないとは言っていない。

 ある日、城の中、そこはとてもやばかった。

 そのまま静かに誘導された先、たどり着いたのは王城の片隅の離れだった。

 離れといっても下手な宿よりも豪華で大きい。それが植え込みや壁によって周囲から隠されるように建てられた様子を見れば、そこがただの離れではないことはすぐにわかっただろう。


「おい。」

『わかっておる。ここからは一層気を引き締める。むしろ、お主の方が心配だ、即座にぶっぱなんてことするなよ。』

「それは状況次第だねー。」


 馬車が止まる直前にそんなやりとりをしていると、エミリーの身体がすっと薄く透明になっていく。おそらくは俺たちに見える程度まで存在感とやらを消したのだろう。仕組みはわからないけど器用なものだ。これならそこにいると思っていないと姿は見えないだろう。

 馬車から降りて、門の前に立つタチアナさんの背後に立つ。ここからは俺もおいそれと口を開けない。


「タチアナ嬢、今回は遠路はるばるご苦労だった。」

「バーテル卿、アナタが。」

「うむ、今日は私が案内させていただくが、そちらは。」

「こちらはスカルさん。手紙にあった傭兵さんです。」


 迎えてくれた老人に俺は会釈だけをする。相手がだれかは分からないが、タチアナさんの反応から察するに貴族、それもかなりのお偉いさんだ。許可なく言葉を交わすことも許されないこともあるので、避けないな口は開けない。。


「大まかな内容についてはロッド卿から連絡をもらっている。スカル殿、まずはロッドとザパートオチアスの危機を解決してくれたこと、私からも礼を言わせてほしい。」

「・・・。」

「はい、スカルさん、バーテル卿は気さくな人なのでお話しても大丈夫ですよ。」


 いきなり頭を下げるバーテル様にどう反応したものかと思っていたらタチアナさんが、発言の許可をくれた。


「自分は仕事をしただけです。報酬も感謝も充分にいだいているのでー。」

「そ、そうか、だがこれは私の気持ちだ。ロッド卿とは長い付き合いでな、話を聞く限り、スカル殿がいなければ私は古き友を失い、王国は危機に瀕していたと思うと頭を下げずにはいられない。」

「そんな大したことじゃないですよー。」


 なかなかに腰が低い。だというのに立ち居振る舞いからは威厳を感じるのはロッド様と同じくできた貴族様ということなんだろう。


「しかし、パーテル卿でよかったです。父の手紙と紋章があるとはいえ、王城へ登るのは初めてだったので。」

「このような形ではなく、もっと平和な訪問にしてあげたかった。そうだ、先にロッドからの手紙を預かっても構わないかね。」

「はい、どうぞ。」

「ふむ、たしかに。符丁もロッドのものだな。となると・・・」


 余計な手間を省くために顔見知りの彼が呼ばれたのか、それとも顔見知りが近くにいたからこれだけスムーズにことがすすんでいるんだろうか。バーテル様は、手紙をさらっと確認し、数名の兵士とともに俺たちを離れへと案内してくれた。玄関までの道のりも豪華な庭だが、植え込みや東屋などで周囲からは隠されている。同時に色んな気配を感じる。


『うむ、それなりの腕前のがいるが、わっちの存在は気づかれておらんな。』


 返事はしないし、余計な事は言わない。エミリーも答えが欲しかったというよりは状況報告が目的だったと思う。もしも会話が目的なら、建物から漏れるなんとも言えない気配について何か言っているだろう。


「お客人、個々より先は国家機密ともなるため、他言無用で頼む。」

「わかっています。」

「守秘義務は契約の内ですねー。」


 扉に手をかけてこちらを振り返るバーテル様に返事をすると、ゆっくりと扉が開かれる。


「(これはひどい。)」

『これはひどい。』


 扉の向こうはえげつないほど霊障に塗れていた。

 一つ一つは小さく、普段なら気づかずに見逃してしまうし自然に消滅するレベルのささやかなもの。だが、それらが羽虫の群れのように集まり、薄いベールのように屋内のあちこちに点在している。


「うわ。」

「祓っても祓ってもこれだ。気分がすぐれなくなりそうならすぐに言ってくれ。」


 霊感がほとんどないタチアナさんですら、ほほを引きつらせるほどの不快感。屋外に漏れていないのは、この離れが特別製なのか、それとも部屋の隅で疲れた顔で座っている魔法使いたちの魔法によるものだろうか。雑な仕事だなー。


「ロッド卿からの連絡を受け、リムーブを使える魔法使いを集めて壁を張ることで一時的に症状は緩和しているが、根治にはいたらず、周囲への影響もこの通りだ。」

「なるほどー。これは根深いですねー。」


 例えるならば雨の日になんども窓を掃除しているようなものだろうか。拭っても拭ってもとり切れない雨粒や汚れが蓄積し、気づけば落とせないものになっていくあの感じ。おそらくは霊障の核となる霊、あるいは呪いを補足できないままにリムーブを使っているのだろう。それでは一時的な緩和にしかならず、霊障が残り続ける。根本的な解決には、呪いや霊の存在を正しく認識して、リムーブを放つ必要がある。

 それでもこの不快感を消し去るために、リムーブを放ちたくなるが。


『しばし、まて、お主の力だと呪いの核ごと消し飛ばしかねん。』


 とのことなので、あえて手出しはしない。代わりにタチアナさんと自分を包み込むようにドーム状にリムーブを発生させて不快感を和らげる。


「あ、あれ。」

「依頼人を守るのも仕事ですから―。」

「あ、ありがとうございます。」


 敵意はないとはいえ、魔法を魔法を発動させたからか、俺たちの目を見る目がしばし鋭くなるが、それはすぐに驚愕に変わった。


「な、なんだ、その魔法は。リムーブ、リムーブなのか?」

「ですよー。」


 へたっていた魔法使いが飛び上がって声をあげるが、俺は当然とばかりに笑顔で返答した。こういう器用な使い方をしだしたのは最近になってからだが、北部にいたときも遊びでやっていたことなので、このリアクションも予想できていた。


「う、ううむ。たしかに情報通りの腕前か、これなら。」

『ほう、お主の異常さが分かるか、この御人もなかなかの使い手らしいな。警戒せんと。』


 精神衛生も兼ねたはったりに反応したのはダーパル様を含めて、数名。その反応をニヤニヤと楽しそうに確認するエミリーが気づかれないか心配になるが、それは顔にはださず、タチアナさんに任せた。


「と、ともかく、行きましょう。状況は一刻を争うようですし。」

「そ、そうだな。こっちだ。来てくれ。」

 

 気を取り直して更に奥へと案内される。霊障はあれど、その規模が小さいのはお抱えの魔法使いや傭兵たちの仕事が優秀だからだろう。それでも完全に祓いきれずにイタチごっこになっている感がすごい。

 呪いの存在を知っているか、知らないで、これほど差がでるのか・・・。

 これは気合を入れて仕事をしないとならないな。


スカル 「ムズムズするなー。」

エミリー『今は、我慢せいって。』

 お偉いさんの前なので、ちょっとだけ大人しいスカルさん。次回更なる大物との出会いが。

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