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それなら、こいつと手を組みます ーー詐欺師扱いされて追放されたので、怨霊と手を組んで独立しましたーー  作者: sirosugi


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36/42

36 人を呪わば穴を掘れというものがあるらしい。

 犯人は現場に戻る。

 家から出ているとはいえ、タチアナさんは貴族の子息であり、VIPであることには代わりない。今回の宿はそういった事情を理解している場所であり、宿泊する部屋には、寝室の他に執務室のような部屋があった。

 それを理解している宿の人間が面会の取次をするのは珍しい事ではないらしい。それって、セキュリティとしてはどうなんだろうか。


「ああ、一応、そう言う人がいれば話をしてほしいと伝えてあったので。」

「さようでー。」


 大きい執務室で待ち構えるタチアナさんの背後に立ちながらが疑問を口にするとそんな答えが返ってきた。なんだか知らないうちに、仕事をされていたらしい。


『そりゃ、お主。仮にも辺境伯とおもあろう御人が適当な仕事はしないじゃろ。この宿だってそれとなく護衛が配置されておるし、これからくる客人も監視されておるじゃろうな。』

「すごいねー。」


 もうなんかわからんから、専門家に任せて俺は俺の仕事をすることにしよう。なにせ扉の向こう、階段下から漂ってくる気配が明らかにやばいんだもん。


「失礼します。ボーター様をご案内しても。」

「通してください。」


 ノックの音とともに行われる確認の声に気を引き締める。

 入ってきたのは宿の従業員と、腰の曲がった老人だった。


「ご、御多忙の中、お時間をいただき。」

「ボーターさん、どうしたんですか?その姿。」

「た、助けて・・・。」


 従業員が一礼して扉をしめると、老人はその場にうずくまってしまった。慌てて駆け寄りつつ、俺の目には彼に巻き付きた黒い鎖がしっかりと見えていた。これは呪われてます。


『あの時ほどではないが、なかなかに育っておるな。どうする、このままだと数時間ともたないぞ。』

「この状況、判断の余地もないと思うけどー。」


 一応は雇い主であるタチアナさんを見る。彼女には見えていないだろうが、状況の緊急性は伝わっているらしく、黙ってうなづかれた。ならばやることは1つ。


「リムーブ。」


 やや強引に祓いの力を送りこみ、鎖を引きはがす。そのまま部屋の半分ほどを覆って逃がさないよう閉じ込める。すると老人の顔色は目に見えてよくなった。これは。


『ついで回復魔法をかけておいたぞ。』

「はっいったい。」

「悪いものは祓いましたよー。一時的にですがー。」


 にっこり笑って俺は下がる。老人は己の身体を見回し、ゆっくりと起き上がる。今度は腰が曲がるなんてこともなくまっすぐと立ち、見た目は健康そのものだ。


「これは、一体、どうやって。」

「傭兵の飯タネは高いですよー。」


 ニコニコと笑いながら俺は視線でタチアナさんをさす。話は彼女に丸投げです。


「ボーターさん、一体何をしたのか教えてもらえますか?」

「くっ。」

「ああ、なんなら戻しますかー。」

「わ、わかった。わかりました。すべてお話いたします。」


 老人、ボーターの話はシンプルなものだった。

 

「事の始まりは行商人から頼まれたもので、小遣い稼ぎのつもりでした。」


 最初は、商売敵への嫌がらせを兼ねた小遣い稼ぎだった。商品の効果を試したいという行商人からそこそこの謝礼を受け取って、家畜の乳の出が悪くなると言われるまじないの人形を畑に埋めた。人形の見た目は街の祭りで使うもので、効果もささやかなもので、何よりボーターが見た限りは痕跡や証拠が残るようなものではなかった。

 半信半疑で、喧嘩していた商売敵の放牧場にこっそりと人形を埋めた。するとその場所を中心に、奇妙な霊が目撃されるようになり、商売敵を中心に家畜たちの様子がおかしくなった。

 彼に人形を渡した相手は、半年もしないうちに収まると言っていた。その程度なら商売敵が痛い目を見る程度で済むと思って、最初はほくそ笑んでいた。

 だが徐々に状況は悪化していった。

 調査のために訪れた王都の僧侶や傭兵たちに被害がでて、影響は街中の家畜たちにも広がり、ボーターの家にも損害が出始めた。おかげで疑われることはなかったが、内心ではヒヤヒヤしていた。

 そんな中、辺境伯家からタチアナさんが街を訪れ、一連の事件の捜査を始めたという情報が入った。本来ならば正体どころか、その尻尾も捕まれるはずもない犯行の手口である。そう言い聞かせつつ、その耳と目は自然とその動向を追っていた。

 そして、未明になって突然謎の体調不良が彼を襲った。

 死ぬほどの痛みと恐怖。回復魔法や薬も効果を出さない状況に絶望していたとき、彼の耳には家畜たちが調子を取り戻し、そのきっかけがタチアナさん達にあるらしいという情報がはいった。

 藁にも縋る思いで、ここにたどり着いた。


『嘘臭いのーー。』(うそくせーー。)


 同情を引くためのウソ。そう言う印象ばかりの話に顔を背けると同じようにげんなりしているエミリーと目があった。これほど露骨な話はない。少なくともきっかけとか動機は誤魔化している。


「なるほど、うそですね。」

「た、タチアナ様?」

「真意はどうあれ、今回の一件ただの酪農家がおいそれと手をだせるものではありません。今頃、家の者がアナタの家を調べているので証拠も出てくると思いますよ。」

「そ、そんな。」


 まあ、行商人からもらったってのは嘘があるよねー。それとタチアナさんがめっちゃ有能だ。あらかじめ調査のための人員を配置していたのだろう。

 ただ、今までの傾向を考えると。


「そ、そんなことは、我が家にはなにもありませんぞ。」

「それはこちらが判断します。」


 慌てているがどこか余裕がある。おそらく物的証拠はあの人形ぐらいなんだろう。見た目はあれだが、前知識のない人間には、ただの人形にしか見えない。呪いというのはつくづく厄介だ。


「ああーちょっといいですか。」

「な、なんだ。あんた。助けてくれたのは感謝しているが、私は本当に」

「割り込んですいませんねんータチアナさん。」


 タチアナさんに断りを入れてから俺は、リムーブを弱める。すると力場の中に捕らえられていた呪いがボーターに近づいていく、祓われる過程で圧縮されたせいか濃さがまし、今度ははっきりと見える。


「これ、ちゃんと祓ってほしいですかー?」

「ひ、ひいいい。話します、全て話しますから―。」


 ちょろい。そのままべらべらと隣国との関係や連絡方法や次の交渉日時、関係している街の仲間についてもべらべらとしゃべりだした。

 結論からいうと、街の一部の腹黒い連中が数人ほど逮捕されることになったが、証言を的確メモして、どこかに指示をだすタチアナさんはとても有能だった。


「これもスカルさんとエミリーさんがあっさりと解決した上に証拠を残してくれたからです、ありがとうございます。」

「「ありがとうございます。」」


 なんか街の有力者っぽい人や衛兵さん達と一緒に頭を下げられたけど、俺がしたことはただの祓い仕事でしかない。

 すごい、というか怖いのは俺の力を信じ、その後にすぐ動けるように手配していたロッド様の手腕とタチアナさんの実務力だろう。


『あの御人、やはり侮れんのう。』

「そうだねー。」


 娘が関わることに反対していたのはなんだったのか。

 ともあれ、ロッド様からの依頼による初仕事は、表面上はあっさりとかつ、スピーデイに解決したのだった。

 

スカル 「呪いはその後、徹底してすりつぶして消滅させました。」

エミリー『スタッフが優秀すぎて出番がなかったのじゃ・・・。』

 旅は続くよ、これから先も。

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