鳥の魔女4
五日間が経過した。
その間、クロスは家政夫のようだった。
掃除をし、食事を作り、洗濯をしては洗濯物を取り込んだ。
最も厄介なのは水汲みだった。
滑車を使って遥か下の地上にある泉から直接桶で汲み上げるのだが、何せかなりの距離である。
数10mものロープを、先端に水の重りがついた状態でこぼさぬよう引き上げ切るのはまさに苦行僧のそれと言えた。
それも一度ではなく、日に何度もである。それをさらに濾してから煮沸し、冷ましてようやく使えるようになるのだ。
ただ、食材は地下室の備蓄に加え”鳥の魔女”が買って来てくれるものを使えばよかった。
彼女は日に二度、明け方と昼過ぎに鳥たちを引き連れて外出した。
おそらく鳥たちへの調教と訓練のついでに、近くの町や村を回って買い物を済ませたり仕事の受注や集金をしているのだろう。
集団で飛んでいれば”鳥の魔女”率いる鳥たちを落とそうなんていうバカな狩人もいない。
それでも年に一度か二度は矢が飛んでくるらしい。
無論、得意とする念動魔法や自分の体で弾き飛ばして急降下し、愚か者へとただちに制裁を加えているのだとか。主に金銭的な制裁を。
つまり、この五日間でクロスとマグナカスはそのような話をできる程度の間柄となっていた。
“鳥の魔女”からすればクロスには頼みごとをしているという立場でもあるし、この五日間の彼の仕事ぶりにも不満はなかった。
日数の経過とともに、ちょっとした会話になら応じてくれるようになっていったのである。
もっとも、招待状は未だに受け取ってくれないが。
鳥たちを引き取ってここでの世話を引き継いで欲しいという願いは、すでにアッサルートに伝えてある。
「なんとかできないか検討してみるわ」という返事はいささか頼りないものがあったが、お師匠様なら放置はしないだろうという信頼もあった。
もとより困難な願いであるため、上手くいくとしても時間はかかるだろう。
それを承知しているのか”鳥の魔女”も催促などはしてこなかった。
「あの、カルフールの、カプリさん」
昼食のヤマアブラ雑炊を食べながら、クロスは唐突に話を切り出した。
帽子と襟の奥の闇で一つ目がギョロリと動いてクロスを見る。
不気味ではあるが睨んでいるわけではない。ただ見ているだけだ。
「どうやってここからダグナマンバ大要塞まで行かせたんですか? カルフールって、長旅には向かないのに」
「あの子は着いてたのかい、結構結構」
「ええ、雪が溶けたら普通に馬車便で送り届けると仰ってました」
口笛のような甲高い声を数度に区切って響かせる。
その直後、一羽のカルフールが二人の間に降り立った。
でっぷりぶよぶよとした体を揺らしながら首をせわしなく動かし、マグナカスを見上げている。
その体には奇妙な装置が巻きついていた。成型した木と軽石で組み上げたような小さな装置だが、小さなカルフールにとっては浮き輪程度の大きさとなっていた。
「カルフールは寒いとこは平気だが、そうでもない場所じゃすぐ体が熱くなってバテちまう。なら冷やしてやりゃいい」
もう一度甲高い口笛のような音を響かせると、今度は別の鳥がやってきてカルフールの後ろに立った。
この鳥は何度か見たことある。薄水色の羽毛と首輪のような黒い模様、流線型的な印象のある体躯。伝書鳥としてよく使われるナザバトという種類の鳥だ。
ナザバトはカルフールが背負っている装置をついばんで小さな蓋のようなものを開くと、そこに置かれているエサをクチバシで叩くように食す。
ナザバトがそのエサ台を叩くたびにエサ台全体が取っ手のように可動して、カルフールのぶよぶよの体がほんの少しだけ膨らんだ。
「これは……?」
何かが起きているようだが、何が起きているのかはわからなかった。
“鳥の魔女”は呆れるでもなければ得意になるでもなく、淡々と答える。
「皮膚の下に水そそいでんのさ」
皮膚の下に? 水を?
せっかく説明されても一切理解ができないクロスを見かねてか、詳しく話してくれる。
「寒冷地に入るまでは、伴鳥をつけとく。カルフールがバテてどっかに止まって休みだしたら、伴鳥はメシの時間さ。この装置を開けてエサを食うと、その力でポンプが動かされて装置のタンクから水が出てくる。水はチューブを通ってカルフールの皮膚の下まで刺さってる針から雲泉膜っていう器官を直接冷やして、総排泄口から出ていく」
「雲泉膜?」
「カルフールの分厚い皮膚はいくつかの層に分かれててね、その一番内側が雲泉膜。そこを冷やしゃあっという間に体も冷えんのさ」
「大丈夫なんですか? 体に針が刺さった状態で飛んでも」
「針はちっこいし、なんてったって皮膚が分厚くて頑丈だからね。こんなショボい穴空いた程度でどうにかなんならそもそも体燃やしながら飛ぶなんてできないよ」
カルフールの動きや様子からも、痛みや違和感、ストレスなどは全く感じていないようだった。
せいぜい「装置が少し重いな」程度だろう。
「で、寒冷地に入るってなったら伴鳥は引き返す。その時に装置をつっついて外してから帰るように訓練しときゃ、あとはカルフールだけで目的地までひとっ飛びさね」
「針が抜けた痕はどうなるんですか?」
「勝手に塞がるさ。それぐらいちっさい針だからね」
もう一声鳴くと、カルフールとナザバトは連れ立って二階へと飛び去った。
「でも、そうなるとあんな精巧な仕掛けを使い捨てなきゃなんですね。少しもったいないような」
「ノクトングの奴は頭はイカれちゃいるが払いはいいんだよ」
ノクトング。おそらく”界の魔女”のことだろう。
ダグナマンバ大要塞まで文を届けさせた魔女だ。
「その、”界の魔女”さんって、どんな方でしょうか?」
「なんだいあんたシリネディークにずっと住んでたんだろ? 学会で集まった時に見てんじゃないのかい」
「す、すいません」
じろりと大きな一つ目から咎められるような視線をぶつけられる。
彼女の飼い鳥でなくともついかしこまってしまう威圧感があった。
当の本人は「まあいい」と許してはくれたのだが。
「マルコフの陥穽地帯は知ってるだろ? ハン帝国の”厳粛たる戒聘王”マルコフ帝がムル・マル人を皆殺しにして埋めたら草エレメンタルどもの群生地になっちまった穴ボコ地帯さ。あたしらにゃあ関係ないがね」
当時すでにムル・マル人はハン帝国に従属して長く、マルコフ帝が突然このような蛮行に及んだ理由は謎とされている。
一般的に犠牲者の数は70万人とされているが、無論のこと正確な数字ではない。
むしろハン帝国側の記録に基づくこの数字は実際よりも少ないと言われている。
成果を粉飾して手柄を盛ろうとした者がいたであろうことを勘案しても、殺す側の現場人たちが殺した人数など気にしていたはずはないのである。
大方、あとで役人や上官たちに訊ねられて「10人くらい?」とあやふやな記憶から適当に答えていたのであろう。
数字とはそのようなものであることを、クロスもマグナカスも知っていた。
「そのムル・マル人最後の生き残りが奴さ。あたしらはまだ三人残っちゃいるけど、奴は正真正銘、この世でただ一人のムル・マル人の末裔さね」
「へぇー!」
素直に驚嘆の声をあげる。
ムル・マルの生き残りがいたことにもそうであるし、それが魔女であることにも驚いた。
同時に、理解した。
なぜ”鳥の魔女”が手間をかけ精巧な装置を使い捨ててまでも、彼女の依頼を受けたのか。
それはおそらく、ここに数多の鳥たちがいるのと同じ理由なのだろう。
「なにニヤついてんだい、気持ち悪いね」
「えっ、すいません」
口を手で覆って隠す。
その直後に気づいた、自分の顔は別に笑顔など形作ってはいなかったことに。
カマをかけられたのだ。そしてまんまと引っかかった。
「クロス、あんた人の心を推し量るのが得意だって協会長からは聞いたがね」
ヤマアブラ雑炊の最後のひとすくいをついばみ飲み下しながら告げる。
「自分の心を推し量られないようにする術は抜群にヘタクソだね」
それはお互い様だと思うけどな、という思いをよそに置いて「すいません」と謝った。
「いいんだよあたしは別に隠すつもりなんざ無いんだからね」
ギョッと身を強張らせながら跳ね上がる。
完全に思考を読まれている。まるでアーゲルン人と話しているかのようだ。
「それよりあんた、外に停めてある馬車、あれいつまであのままにしとくんだい」
「ああ、あれは私が出発するまであそこで待っててくれるみたいです」
「遠巻きにじっと眺められてちゃこの子たちが落ち着かないよ。ここに呼びな、家ん中にいた方がまだマシだ」
「えっ、わ、わかりました」
「ン、よーわかった」
「え、いいんですか?」
馬車の上でスケルトンのザ・スーは頷き、体を揺らして席にめり込んだ己の鎧を引き剥がす。
「魔女も承知しとるし総帥からはお前さんに従えと言われとるし、ヤダっちゅーワケがねぇもんな」
がしゃ、がしゃと金属とサビを軋らせながら地面に降り立つ。
どうやら久しぶりの感触のようで、どうやって立てばいいのかわからず足の位置や重心を「こうかな?」「こうだったっけ?」とつぶやきながら色々試していた。
いざという時にはこのスケルトンに僕は守られていたんだなぁーという微妙かつ絶妙な感情は、心のうちにしまっておくことにした。
「ども、ザ・スーてもんです。以後おお見知り置きを」
家の中で、まずはカーペットに座って深々と”鳥の魔女”に頭を下げる。
床に手をついた丁寧な礼ではあるが、言葉は軽妙で緊張感は一切なかった。
「お見知り置きを、です」と耳打ちすると小声で「えっ、大きい方がいいんじゃないんですかい?」などと返ってくる始末だ。
「話す死人とまともに会話すんのは初めてだがね──」
低く、しわがれた重々しい声。
その威圧感にも、黒い巨体と一つ目の威容にも、ザ・スーは全く怯んではいない。
「──愉快な奴じゃないか。あの協会長は大した腕前だったねぇ」
とりあえず”外”に放り出されるようなことは無いようだ。
ほっと胸をなでおろす間に、鳥たちがザ・スーに群がり始める。
肩や頭にとまったり、鎧の隙間にもぞもぞと体をねじ込もうとしてくる。
原因は単純だ。スケルトンは何らかの詰め物をして鎧と骨の間を埋めつつ骨格を保護しているのだが、ザ・スーの鎧の中に詰められているのは干し草なのである。
いざという時に馬のエサとしても使えるようにと詰められたものだったが、今は鳥たちにとって親鳥の巣のような望郷の念に駆られる、居心地よい別荘やアスレチックである。
鮮明に思い出せすらしない幼鳥のかすかな記憶とも取れぬ感覚。このスケルトンの中身はそれに訴えかけるものがあった。
父母のあたたかい愛と結びついた、かつての巣の感覚に。
「あっしはこいつらのエサとして呼ばれたんですかい? それとも宿屋として呼ばれたんですかい?」
空洞の目の奥からセキトウインコが頭を突き出す。
とぼけたような不思議そうな鳥の顔が、そのままザ・スーの表情のようにも思えた。
「宿屋なら金も払うがね、あんたはただの客兼置き物さ。そのへんでじっとしときな」
「あい」
頭を下げながら手をかざし、眼窩からこぼれ落ちたセキトウインコを受け止める。
崩れたバランスを整えようと手の中でばたばたと羽ばたき、それが済むと冷静を保ったまま抱えられているその鳥の姿を見て、クロスは一つ思いついた。
本当はもっと早く思いついてもよかったぐらいの閃きだったが、五日間の平穏な生活をいつの間にか彼も享受してしまっていたのだった。
「マーグカーゴさん、例の件……ザ・スーさんに面倒見てもらうというのはどうでしょう?」
死人ならずっとここにいて暮らしたとしても問題ない。
ザ・スーならば魔女の移動の安全を担う御者であるからして信用もできるだろうし、この状況にもけろっと平気な様子だ。
鳥たちの扱いも少々無頓着だが雑というほどでもなく、命令とあらば大切に扱ってくれるようになるだろう。
困った時には『死人の軍勢』の助けも得られるし、腕も、まあ、おそらく立つ。エルガン曰くではあるが。
きっと最適とまではいかないだろうが、現状では最善の策に思えた。
「はぁ? こいつを?」
当然”鳥の魔女”は疑いの眼差しをクロスとザ・スーの両方へ交互に向ける。
大切な鳥たちを託すという相手を、こんなに簡単に決めてしまうこと自体に抵抗がないはずはない。
だが要請に対し五日間返答がなかったのもまた事実。
急かしはしなかったとはいえ、五日間の無言が不安となって解決策を求める心を養っていたのは想像に難くない。
自覚もないほどの心の内で、静かにそれは育っていたのだ。
「……まあしばらく様子を見るかね」
疑いそのものは切らさず、じろりとねめつけながら妥協を口にする。
渦中の当人などは「どゆこってす?」などとクロスに訊ねているが。
「この鳥たちの世話を”鳥の魔女”さんからザ・スーさんが引き継げないかって話ですよ。彼女は、その、引退を考えているものですから」
「えーっ、あっし馬の世話ならできますけど鳥はできるかなあ」
「世話だけなら大したこたないよ、メシ食わせて運動させてあとは見張るだけさ。バカが鳥をとっ捕まえようとしたら逆にふん捕まえて衛兵に突き出すなり”法の”に始末を頼んだりすりゃいい」
始末を頼むというのは物騒な言い方だが、単に訴訟と補償の手続きをしてもらえという意味だろう、おそらくは。
「伝書鳥の事業はどうすんですかい? あっしにゃ経験のねぇ難しいこって」
「んなもんあたし抜きで出来るわけあるかい。店じまいだよ」
「えーっ、そりゃもったいねえですよ。うちの総帥も惜しみますぜ」
「あんた続けたいのか続けたくないのかどっちなんだい」
意外と息の合う二人なのかもしれない。
圧力や迫力に一切物怖じしないザ・スーは真正面から忖度や同情抜きで”鳥の魔女”と、というより全ての魔女と相対できるのだろう。
だから彼はあらゆる魔女と関わる可能性のある御者を任されたのかもしれないな、などとクロスは微笑ましい想いで成り行きを眺めていた。
「ぜってぇ続けるべきです、うちの総帥や協会長様もそのために心を折っておられるんでしょうよ」
厳密には総帥も協会長もどちらもアッサルートなのであるが、エルガンはその威容と貫禄から死人たちにはあだ名のように総帥と呼ばれていた。
「……まあ、そこはあんたらで好きにしな。ただ鳥たちの世話をおろそかにしたり、働かせすぎたり、ないがしろにしたりするようならただじゃおかないからね! あくまで最優先はこの子らが安全に快適に生活することだってのを肝に銘じときな」
自分が亡くなったあとの話だということを憶えているのだろうか?
どうやってただじゃおかなくするつもりなのだろうか?
そんな無意味なことをぼんやりと考える余裕すらクロスにはあった。
「肝はもう無いけど骨身には染みましたぜ!」
がん、と胸を叩くザ・スー。
その拍子に鎧の中から鳥たちが溢れ出た。
どうやら引き受ける方向で話がまとまったらしい。
『まあ、いいんじゃないかしら?』
その夜、クロスが相互紙をかけた相手はエルガンではなく師であった。
『御者の人選をしたのはエルガンだけど人品骨柄に問題はなさそうだし”鳥の魔女”が了解したんなら協会が反対する理由はないわよ。物資面の面倒を見てやるだけでしょうし』
どうしてみんなスケルトンのことになると本人も含めて骨の冗談を言いたくなるのか。
『伝書鳥の事業はどうしましょう、ザ・スーさんは続けるべきだって言ってましたけど』
『そっちは正直厳しいわね〜。組織でもかなわない”鳥の魔女”の仕事を、その組織が引き継げるかって言ったらまあ無理よね。無理やり続けたとして規模は縮小せざるを得ないだろうし、それならそもそも続ける意味もなくなるでしょうね。鳥たちにかける費用や資源が無駄に増えるだけだわ』
『やっぱり、そうですか』
『“鳥の魔女”は事業をたたむって言っているんでしょう? その通りにしたら?』
『確かに口ではそう仰っていましたけど……』
筆が止まる。
いったいどう表現したものだろう。
マグナカス本人は確かに事業をたたむと言い切った。いまアッサルートが記した事情についても当然承知の上だろう。
だからこそ彼女は事業をたたまざるを得ないと知っており、だからこそ彼女は本心では寂しさを感じているのではないだろうか。
マグナカス・マーグカーゴ、その長き人生がどんなものであったのか語るものはない。
だが想像はできる。きっと凄まじきまでの孤独だったのだろう。
自分の種族は絶滅が決まっており、想いを分かち合える家族もなし。
人間には自分が生まれる前から、自分を支えてくれると決まっている多くの背景を抱えている。
社会、民族、文化、歴史、誇り、まごうことなき現実だが、それら全てが彼女には無い。
暗闇の海の中浮かぶたった一羽の海鳥、それが彼女の人生だったのではないだろうか。
星も灯台も波や風すらもない、自分を導く指針など何もないひたすら暗黒の海。
だが道しるべなどなくとも、明かりなどなくとも、無理やり己を動かし目標を定めて飛び立たなければ、泳がなければ、溺れ死ぬだけ。
孤独の中で何かを狂おしく切望しなくては、生きる力すら失ってしまうだろう。
そうして彼女は無理やりに人生の目標を、信念を作り出し邁進することで生き永らえてきたのではないだろうか。
それが学問や魔法や仕事であり、金だったのではないだろうか。
暗黒の空に自ら星をなげかけて、その星を目指して飛び続けたのではないだろうか。
その星が……消えてしまう星なのだと思い知りながら、力尽き墜落するだなんて、あんまりだ。
自分が目指し飛び続けてきた星は、自分が墜落しても変わらずそこで輝いていてくれる。
そう信じながら最期を迎えられないなんて、あまりにも哀れじゃないか。
それがクロスの漠然とした考えだった。
『わかったわ』
そしてそれを、アッサルートは行間で感じ取った。
『それが魔女の人生の助けになるというのなら、あなたがそう信じるのならば、私たち魔女協会は必ず実現させるわ。事業としてではなく、理念の実行として』
胸の奥が熱くなる。
鼻にツンと刺激が走り、目が潤んだのが自分でもわかった。
『お師匠様』
『なに?』
『僕の後見人と師匠と主人が、あなたで良かったです』
返答はすぐにはなかった。
こういう時、まっすぐな好意を思いがけず向けられた時、アッサルートは照れて手が止まる。
統王様がこの人を正室として迎えるというのならば、それは大正解の選択だろう。
賢さやしたたかさだけでは表し切れない魅力を、この人は確実に持っている。
やや経って『いきなりおだてたって私のびっくり顔以外なにもあげられないわよ』と返ってくるその言葉すら、奇妙に微笑ましかった。




