鳥の魔女2
『伝書鳥を活用した通信の歴史は古く、7000年ほど前の魔界ではすでにハンザビア帝国が鳥を使った軍事通信網を活用していた記録が残されているわ。
現代では大多数の通信は車便によるものだけど急ぎの時や車での通行が困難だったり馬車道が整備されていない地との通信を担うのは、やっぱり伝書鳥よ。あなたもそれは経験しているわね。
その点に於いて、魔女協会はまさに他の追随を許さない伝達の速度と正確性を実現している。相互紙を発明する以前から、ある一人の天才が伝書鳥による通信の速度と範囲を従来の二倍にまで引き上げてしまった。
その天才こそ”鳥の魔女”。彼女の手腕によって私たちは私たち同士ではない、外部との連絡と連携力に於いて格段に強化され、魔女たちが世界に羽ばたく原動力の一つとなっていると言っても全く過言じゃない。
多くの産業や経済界、あるいは政治的影響力をもつ個人または組織と繋がり、関係を維持して魔女たちが存分に活躍できる環境を整備するために通信は絶対に欠かすことのできないものの一つ!
それを、現状私たちは”鳥の魔女”一人に依存してしまっているわ。
死人たちを使った通信網や、通信を利用して構築した交友関係を生かした通信網に置き換えられるよう努力してはいるけれど、彼女の力に未だ遠く及んでいないのが現実よ。
年老いた彼女の命がもし尽きたなら……私たちは影響力を大きく削がれるでしょう。
それだけ、彼女が調教し、使役する鳥たちの働きはずば抜けているの。高額な報酬を支払ってもむしろ安いぐらい”鳥の魔女”の影響力は大きい。
だからクロス、私は素通りするように勧めはしたけれど、もしあなたがそうしないというのならば、彼女から何かを得られると思うのならば、それは大きな財産になるわ。
それは間違いなく、あなた一人だけのものではないでしょうけれど』
無数の鳥たちを引き連れて帰ってきたマグナカスは、ドアの前に着地した。
同様に無数の鳥たちも地面に、あるいは彼女の帽子や体に降り立つ様はまるで王に従う臣下か、ご主人様にならうペットである。
出発する時は窓からだが、帰る時は出入り口のドアからゆっくり歩いて帰宅させる。
それがいつものやり方だった。そうしなくては鳥たちは窓で詰まって衝突したり家に激突したりしてしまうのである。
ゆえに、出入り口のドアは固定していないのだった。
のしのしと闊歩し黒衣を引きずり、帽子のつばの端をめくり上がらせながら帰宅する。
「ほぅ」
年老いたフクロウのような、ヒビ割れた低い声が思わず漏れた。
家の中は羽毛がきっちり綺麗に片付けられていたのである。
しかもそれだけではなく、水拭きした形跡がある。
ほうきで埃を払い、雑巾をかけ、カーペットにもブラシをかけてあった。
壁に掛かっている日用品も金物は磨かれ、布製のものは洗濯して干されてあった。
「あ、おかえりなさい!」
天井の開き戸からひょっこり顔を出すクロス。
その頭には三角形の布切れが巻かれ、両袖は二の腕までまくり上げられていた。
「とりあえずすぐに使いそうにないものを洗濯しておきました。羽毛埃に時間を取られちゃったので二階はまだできてないですけど、下の階は完璧だと思います」
嬉しそうに、あるいは得意そうに報告するクロスの声を浴びながら黒い巨体はどしどしと部屋を横断する。
「小癪だねえ」とこぼしながら。
あとをついて歩く鳥たちが騒ぎ始める。
ぴぃぴぃ、じぃじぃ、とねだるヒナのような鳴き声だった。
「はいはい少しは我慢をおしよ」
おっくうそうにごちりながら、帽子と襟に隠された闇の奥からにゅっとクチバシが突き出る。
壁に据えられた棚のような箱、そこに空けられた穴にクチバシがぴったり差し込まれた。
一瞬後に引き抜かれたクチバシが床にばらまいたのは、鳥のエサだった。
乾燥させて砕かれたそれらが撒かれると、一斉に鳥たちが群がる。
それを尻目にまた別の箱の穴にクチバシを突っ込むと、今度は別のエサを撒いた。
それにはまた別の鳥たちが群がり、最後の箱にクチバシを突っ込むと、引っ張り出してきたのはネズミの死体。
若い猛禽たちが彼女の足元に集まり物欲しげに見上げる。
そこへ親鳥のように、一羽に一匹ずつのネズミの死体を与えた。
それも全て済むと、反対側の壁まで歩きこつこつと金庫の鍵をつつく。
壁に半分埋まった金庫は"鳥の魔女"の念動魔法で鍵が動かされ、彼女だけが知っている手順で仕掛けが解かれて扉が開く。
クチバシと一つ目が黒衣の奥に沈み、帽子が襟だけで支えられる。
頭が再び帽子を支える位置に戻った時、クチバシは巾着袋を挟んでいた。
ひとまず巾着袋を金庫の中に置き、それから紐を緩めて中をつまみ出す。
「これ……は輸送費と餌代、これは袋、明日のぶんがこれで……今日のは17通、これが収支で……なんだい未払いが二人もいるね」
ぶつぶつと呟きながら袋の中身をより分けていく。
その大半は手紙と紙幣のようだった。
金庫の中にしまうものと袋に入れたままにしておくものとを慣れたクチバシさばきで分け、済むと袋をくわえて金庫を閉める。
そして扉をまたもやこんこんと叩くと、壁に埋まったまま金庫が180°回転して反対側の全く同じ金庫の扉を表に出した。
それも叩いて開くと同じように袋の中身を次々としまっていく。
ただこちらの金庫は、中に札束がぎっしりと詰まっていた。
それも等級ごとに分別された状態で、冬に備えて餌を貯める小鳥のように金が貯められていた。
「明日使うぶんがこれとこれとこれ……今日の稼ぎがえーと、なんだいしけてるね」
袋から金庫へ、金庫から袋へと金を矢継ぎ早に移動させていく。
「はぁ!? なんだいこれ偶数でまとめられてないじゃないかい! 面倒臭いねぇまったく!」
何か問題が起きたようだ。
「クロォォーース!」
クロスに祖母はいなかったが、祖母に呼びつけられるというのはこんな感じなのだろう。
ばたばたと脚立を出して急いで降りつつ「はいなんでしょう」と下僕か酒場の御用聞きのようにたずねた。
「この金を数えな、何が何枚あるか」
「この結わえつけられてないやつですか?」
「そうだよ。数えたらまとめてそこの紙紐で縛っておきな」
金庫の中に広げられた紙幣を掴む。
クロスにとって今まで見たこともないような大金が金庫の中には収められていたが、不思議と興奮はしなかった。
自分のものではない紙幣は、結局いくらあっても紙にしか感じない。
思い出されるのは統王の言葉。硬貨が持つ輝きの説得力の話だ。
硬貨が放つ輝きと重みに比べれば、確かに紙幣は大金の実感が薄い。
かつての統王の言葉の意味を、クロスはようやく肌の実感として理解したのだった。
指を使ってすらすらと紙幣を数える。
クチバシでこの動きを再現するのは確かに難儀極まるだろう。
「二等が14枚、一等が9枚ですね」
「しかも奇数かい、まったくこれだから新規の連中は……」
体を丸めて黒衣のポケットにクチバシを突っ込むと、そこからペンを一本引き抜いた。
すでにインクのついたそれで、紙幣を結んだ紙紐に『2.14/1.9』とあっという間に書き入れる。
実に器用なクチバシさばきだ。感心する間に、金庫の扉は閉められた。
クチバシの端にくわえておいてた巾着袋を、魚を呑み込むためにくわえ直す海鳥のような動きで改めて持つと、翼を小さく広げて跳躍。
ひとっ飛びで開き戸を通って二階に上がってしまった。
クロスも出しっぱなしだった脚立を使って急ぎ後を追う。
二階は完全に鳥たちのための空間だった。
大量の鳥かごと止まり木に埋め尽くされた部屋には、一つだけ横から生えた樹木のような大きな止まり木が壁から伸びていた。
その大きな止まり木の前には宙に浮いた机が壁に据え付けられている。
どうやらそこが"鳥の魔女"の専用スペースのようだった。
「っこらしょ」と止まり木の上に立つと、机に巾着袋を投げ置く。
遠くに向けて鳴く、小鳥の歌のような音が響いた。
口笛の如く高く、オペラの如く繊細な歌声。
まるで山間を望む川のほとりでせせらぎに混じりかすかに聞こえてくる、名も知らぬ鳥の澄み渡った声のような。
それが”鳥の魔女”の口より発せられたものであると気付くのにしばらくかかった程だった。
しかしその声に応えるように、十数羽の鳥たちが下から飛んできた。
種類も大きさもバラバラの鳥たちだったが、皆金属製の足環をはめていた。
彼らは自然と行列を成し、先頭の一羽が机の上に飛び乗る。
「はい」
低く、事務的な一声をかけながら袋から取り出した手紙を器用に筒に入れ差し出す。
鳥がそれを小さなクチバシで突つくと、筒に刻まれた念動魔法の術式が発動。
自動的に帯が鳥の体に巻きつき、手紙の入った筒を固定した。
そして鳥は飛び立ち、窓から外へ出発した。
この光景はクロスにも理解できた。受けた伝書鳥の仕事を、こうやって鳥たちに割り振って放っているのだ。
次の鳥が机に飛び乗る。
その姿と足環には見覚えがあった。
タルギン滞在中にやってきた鷹のポランだ。
「はい」
同様に差し出された筒を身に着け、出発する。
たとえ動物とはいえ、見知った者が今も元気にしているのを見るのは感慨深い。
活躍している様子を見るのも、何故だか嬉しい心地になってくる。
「はい」
全く同じペースで次々に鳥たちへ仕事を割り振っていく。
途中、列に並ぶのに飽きた鳥たちがクチバシでじゃれ合う模様などもあったが、”鳥の魔女”が一つ目で睨みを効かせるとどの鳥もスッと水をかけられたように大人しくなるのだった。
数分もすると最後の一羽が飛び立った。
いまの子たちが”鳥の魔女”が使役する精鋭の一部なのだろう。
残った巾着袋の口を閉じると、黒衣の奥に引きずり込む。
再び顔を出した時には、どこにも袋の姿は残っていなかった。
「クロス」
出し抜けに名を呼ばれ、少しだけ体がびくりと震えた。
だが声は低かったものの機嫌はさほど悪くもなさそうである。
すぐに「はいっ」と応えられた。
「あんた、飯の支度はできんのかい?」
「あっ、えーーーと、簡単なものなら」
「ドゥドゥ・カナルは作れんだろうね」
「作れます、けど、白身魚の干物が沢山あれば」
「ついでに買ってきた、こいつであるだけこしらえときな。他の食材は地下室にあるから好きに使っとくれ」
ごとごとっと黒衣の裾から大量のタリンの干物が転がり出てきた。
14尾ものタリンの干物、これだけあればかなりの量が作れるだろう。
拾い集めて抱えながら「わかりました、早速始めます」と引き受ける。
地下室への入り方はさきほど掃除をした時、カーペットの下にも開き戸があったのを確認して察しがついている。
一階でまだエサを突つき回している鳥たちを優しく腕で払うようにどかしながらカーペットを丸め、開き戸を開いた。
見慣れぬ人間に食事を邪魔された鳥たちの抗議の声にもめげずに。
地下室は半分が倉庫、もう半分が水回りと火気関連をギュッと集約したような構造になっていた。
覗き込むクロスにならって鳥たちも地下室を覗き込むが、中に降り立ちはしない。
勝手に入らないようしっかり教え込まれているのだろう。
むしろ魚を抱えたまま降りていくクロスに「ダメだよ」「危ないよ」とばかりに注意を促すような鳴き声をかけてくる。
ひとまずかまどの前に到着した。
すぐ隣が浴槽なのは気になるが、まずは魚の干物を茹でなくてはならない。
かまどに鍋を据えてタリンの干物を入れ、おそらく飲料用と思われる水を注ぎ入れる。
薪と焚き付け用の枯葉をかまどへ突っ込み、懐から温石を取り出して中央に置いた。
同じく懐から着火器を取り出し、親指でスイッチを押して小さな火を枯葉に移す。
これだけで火おこしは完了だ。あとは放っておいても火が消えることはない。
焚き付けが燃える炎だけで温石は十分に熱を蓄えられるためだ。
その間に他の支度をする。
一番の大仕事はカングと呼ばれる根菜をすりおろすこと。
細かく切ってから石臼等ですり潰す方が楽なのだが、それだと微妙に風味が変わる上に塊が多く残ってしまう。
"鳥の魔女"のことを考えると、今回は妥協はできない。
一階の壁に吊るしてあった調理器具の中にオロシ器はなかったので、自作しよう。
鳥のエサの材料としてクルミが大量にあったので、その殻を使わせてもらう。
半分に割って丸い方が上になるようにまな板に敷き詰め、冷石からの氷魔法で凍りつかせて固定する。
かなり使いづらくはあるが、これでクルミの殻の凹凸で削りおろす即席のオロシ器の完成だ。
腕まくりをしたまま難儀しながらも大ぶりのカングをすりおろしている間に、鍋の湯が沸いてしまった。
料理って、やっぱり忙しい。
茹で上がって柔らかくなった干物を鍋から上げると、ざるにさらして水気を切っておく。
鳥のエサを選り分ける用のざるだったようでそこかしこにカスがひっついてるのは気がかりだったが、水気を切るだけなら大丈夫ということにしておこう。
その間にすりおろし作業を続行。火は消さずに、温石の出力を魔漏法で調整して弱めるだけにしておく。
ごりごりと根菜を削りおろす音と、かまどの火で薪が弾ける音だけが響く。
一心不乱の作業に汗がにじみ垂れるが、料理に混ざらぬよう「おっと」と身を引いて袖で拭き取る。
それほどの労務だったが、不思議なもので料理というのは始めてしまえば疑問も湧かず淡々とやり切ってしまうものだ。
作業の意味や目的も、食べる人のことも、料理の味の出来も、こだわりすらも消え失せてひたすら目の前の作業に没頭して集中すること以外の全てが削ぎ落ちていく。
料理の味をよくするための工程だというのに、最終的にはその料理さえどうでもよくなってしまうのだ。
その静寂の時間がクロスは好きだった。
だが終わらない仕事はない。全てをおろし切ると無意識に「よし」とつぶやく声も漏れてしまう。
おろしたものを潰して水気を切り鉢に移すと、茹で上がった魚の身をほぐしながら骨から外す。
小骨も丁寧に除きほぐし身も鉢へ。14尾ぶんともなるとかなりの量だ。
そしておろしたカングと茹でたタリン干物のほぐし身を鉢で潰しながら混ぜていく。
魚の身がすり身状になるまで混ぜつぶすのだが、その途中で塩と小麦粉とヴァンザルの濁り油を投入。
どんどん混ぜていくと全てが同じぐらい細かく潰された上で渾然一体となり、まるで発酵させたパン生地のような質感のものが出来上がった。
これを、鉄板や鉄鍋で焼き上げるのだ。
湯は捨てずに蓋をしてどかし、別の鉄鍋を置いて火力を上げる。
ヴァンザルの濁り油を表面に塗って温め、切り分けて平らに整形した生地を焼いていく。
オモテ面と裏面両方に焼き目がつけば完成なのだが、鍋に残った油を利用して手早くタレも作るのだ。
砂糖、塩、ボルター穀醤を入れて余熱で沸かしながらのばせばあっという間に濃褐色のタレが出来上がる。
皿に盛った焼き生地にかければスロヴ北西部の郷土料理ドゥドゥ・カナルの完成だ。
量で言えば、だいたい10人前前後はあるが。
干物の茹で汁は塩と適当な具材を入れてスープに仕立てる。
今回はイラヤリという軟体動物の干物があったのでぶつ切りにして入れてみた。
酢漬けにしたものを干して作るためなかなか強烈なにおいがする食材だが、まあなんとかなるだろう。
完成した食事をとりあえず一階に上げ、それから自分自身もよじ登る。
すると、そこにもう"鳥の魔女"が待ち受けていた。
「ふん、なかなかナリはいいね」
憎まれ口を叩き、寄ってくる鳥たちをしっしっと足で払いながらドゥドゥ・カナルを見下ろす。
その体には何羽もの小鳥たちがとまっていた。
「一応スープも作っときました。イラヤリの干物なんて久しぶりに見ましたよ」
「図太い奴だね、あの師にしてこの弟子ありかい」
実はイラヤリの干物は高級珍味として知られている。
現界の西側沿岸で獲れるのだが素潜り漁でしか漁獲ができず、安定供給を確保しているのはグーニレヤントと呼ばれる漁港ただ一箇所のみなのである。
その保存加工品であるからして、高級食材として取引されるのは必然であった。
それを、ぶつ切りにしてスープにぶち込んだのである。
好きにしなという一言だけを頼りにして。
だが"鳥の魔女"はそれ以上咎めるような言葉も吐かず、ドゥドゥ・カナルをクチバシでつまみ上げた。
追従するようにクロスも手づかみで料理を口に運ぶ。
もう片手で鍋ごと置いたスープの蓋を開けながら。
一口かぶりつくと、淡白ながらもにじみ出るような魚のうまみと風味、カングのさわやかな香りと辛味が広がる。
塩の加減もうまくいった。塩味の土台の上にしっかと素材の特徴と美味さが乗って、庶民的かつ野趣もありながら上品な味わいである。
表面は油焼きで歯ざわりよくぱりっと破れ、中はずっしりともちもちの食感が詰まっている。
なかなかにうまい。タリンでは味が薄すぎるかと思ったがそんなこともないようだ。
タレも香りと甘みとうまみを凝縮した爆弾のような代物で、味を一段も二段も引き上げてくれている。
スープにジョッキを突っ込み、直接汲み上げて飲む。
魚とイラヤリから出た磯の香りが充填されたスープはいくらでも飲めそうなほどのうまみに溢れていた。
ほんの少しだけ生臭さはあったがイラヤリの発酵臭と酢のにおいと合わさると不思議に病みつきになる味となった。
直接汲んで飲むのは当然マナー違反だろうが、"鳥の魔女"などは鍋に顔を突っ込んで飲み上げているのだから気にするだけ損というものである。
それよりも、すごいのはドゥドゥ・カナルが消えていく勢いだ。
彼女は一口で一人前をあっという間に食べ下し、間髪入れずに次をつまみ上げるものだからクロスが一人前を食べ切る間に五人前ぶんも平らげている。
ここまでの勢いで大量の食事を流し込んでいくのを見るのは"兵の魔女"アイラン・ヘルゼンデルのとき以来だった。
鳥は自分の体重に近い量の食べ物を入れたまま平気で飛ぶというが、まさにその言葉通りの食べっぷりだ。
「ドゥドゥ・カナルお好きなんですか?」
そう訊ねたつもりだったが、正確に発音できたかどうかは自信がない。
釣られて自分の口にも大量のドゥドゥ・カナルを詰め込んでいたからだ。
それでも、何を言いたいかの意味自体は伝わったことだろう。
「腹持ちがいいんだよ」
ぶっきらぼうにそう答えるわりには次々とかなりのペースでがっついている。
どうやら気に入ってくれたようだ。
全貌の一切を覆ったまま、大量の食事にありつく。
周囲に大量の鳥たちを侍らせながら。
そんな姿を見ていると、なんだか微笑ましいような心地も湧いてくる。
それを自覚した時、なんだか上手くやっていけそうだという無根拠な自信も湧き上がった。




