初夏の嵐-嵐
支部長の 佐藤理央 32歳未婚です
やりたい者が居なかった為母の跡を継いで支部長をやっております
嵐に弄ばれる小舟のような力しかありませんが皆の力を借りてなんとかやっています
15:00空港
welcome!と大きく書かれたプラカードを持たされているわたし。
なんでこんなの必要なの、そう思っていると荷物を持った搭乗客が出てきた。
背の高い修道女がこちらに寄ってくる。
「初めまして、教会より派遣されました聖子・ジャンフラーテと申します」
え?シスター?どういうこと?坊主はどこ行った?
先ずは退魔士協会を目指す。
「日本語お上手ですね、イタリア語とか話せないのでどうしようかと」
姉よ、それなら英語は出来るのかい?肉体言語は得意だろうけどさ?
「母が日本人です、母の生まれた国ということで私が志願したのです」
なるほど助かります、ほんっとうに助かりますう!
「そして私は修道女ではなく 悪魔祓いなんですよ彩香さん」
あれ?結局はシスターが悪魔祓いをするって事じゃないの?
「雰囲気を出すために今日は修道服を着てきました」
サービスサービスゥ!普段はどんななんでしょ?
「私は最初から悪魔祓いとして育てられました、戦闘が専門です。動きやすいパンツにジャケットですね、全てお清めは済ませてあります」
戦闘となるとそうなってしまうのはどこも同じの様だ。
「差支えが無ければ、どうやって悪魔祓いを行うのでしょうか」
姉も興味津々らしい。
「私はこの..」ゴソゴソと胸元から、
「聖なる銀のカイザーナックルを使います」
聖子さん満面の笑みでやけに分厚いカイザーナックルを見せる。
まさに肉体言語であったか、姉の治療も殴って済ませるつもりだったのだろうか。
「今回は治療出来たとの事でしたので、儀式を得意とする悪魔祓いは同行しておりません」
そうかー姉が観光ついでって言ってたの本当だったかー。
生徒と教師のお仕事があるので、わたし達はお相手しないよ!
エクソシストの聖子さんを支部長と秘書さんに預けて帰宅...出来なかったよ。
姉と共に会議室に連行される。
土曜に現れたリッチーが思いのほか強力で、とある吸血鬼がこの地に興味を示したらしい。
聖子さんの御役目は現地退魔士の協力を得て吸血鬼退治というわけだ。
えーっと、わたし達2人以外には支部長と秘書さん聖子さんの5人から増えないんですが。
現地協力員は2人だけですか?
「教会で調査しましたところ、数百年の歴史を持つ木乃伊があるそうですね」
まぁwebにも載ってるしね。
「即身仏です、信仰の対象として数百年を経過しています」
「それほどの物であればさぞ立派な吸血鬼が造れるでしょうね。そうでなくても数百年人々の信仰を集めた木乃伊、さそ神秘の力を...」
支部長が拳でテーブルを叩く。
「人々の祈りを化物に汚されるなぞ絶対にあってはならない!」
えーっと、わたしはやってないけどリッチークラスの吸血鬼と3人でやるんです?それはどうなのよ。
「鬼塚姉妹は強力な退魔士と聞いています、是非とも協力を」
金曜21:00即身仏奉納寺
「で、わたし達は昼夜逆転の生活を強いられているんだ!」
「ランチタイムに襲ってはこないでしょうから」
「まさか今週1度も出勤しない事になるなんて...」
因みに先輩には電話で今週の転移を中止してもらった。
そういや今週顔見てないなぁ。
「今日も退魔士多いね、お姉ちゃん」
「流石に3人だけってって訳にはいかないわ」
3人だけとか止めてください死んでしまいます。
突然攻撃をうける、
『なかなかに強力な結界であるな』
20mの距離にいかにもといった風体の男が結界に手をかけている。
何故こんな近くまで気が付かなかった!
姉が飛び出し次いで聖子さん、最後にわたし。
今回は姉と聖子さんが前衛、わたしが後衛だ。
聖子さんに清めてもらった銀のナイフでしかける。
『力の強い娘だ、我が花嫁にしてやろう』
「誰が!」
先ずは寺から引きはがし近くの公園まで追い立てる事に成功。
腰から銃を抜いて両手で狙いを定める。
銀製で術式を施した特製だ、ロングマガジンを使用しているが20発しか用意が出来なかった。
正直心もとない。
術式を弾丸に送り込む、貫通力ではなく柔らかく着弾で弾けるように。
2人が少し距離を置いた所で2回トリガーを引く。
着弾、小さな光球となって吸血鬼の体を削る...はずだったが無傷。
『そのような小さき物では我が結界を抜くことなど、フフフ』
対物ライフルなんぞ余計に弾が入手できんわ!残18。
姉が銀のナイフをこちらに放り投げてくる。
「聖子さんスイッチ!」
「sì!」
マグライトを構える、光の粒子が集まって2本の剣と成る。
姉が準備中に3連射、今度は炸裂ではなく貫通力を高める。
1発命中するが結界を抜く事が出来ない。
2発は回避される、避けるなよ危ないだろ!
高低差をつけて地面に着弾するようにしているから大丈夫だけどさ、残15。
それにしても聖子さんはすごい、海外に派遣される悪魔祓いだけある。
敵の攻撃を避けつつ拳の届く距離を維持し続けている。
それでも回避できない場合も多いのだがそこは姉がフォローしている。
聖なるカイザーナックルで確実にダメージを与えているはずなのだが...
『つまらんな、次のフェイズに移行しよう』
ちょっと待て。
頭に向かって3連射。
嫌がらせにはなったらしい、こちらを睨む。
奴の背からズルリと闇が落ちる。
それは見上げる程の体躯の厭らしい顔をした狼だった。残12。
銃をホルスターに戻して刀を抜く。
『見ているだけでは暇であろう?』
次々に闇が生まれ10匹の黒い狼が生まれる。
犬に変身するんじゃなくて生み出しやがった、退魔士のみなさーん出番ですよお!
10匹全てがわたしに向かってくる、流石に無理なんですけど。
全力回避!なんとか他の皆が間に合ったが乱戦に突入。
刀で切りつけるが鈍い感触、これが10匹とかちょっと不味くないか?
『フハハハ、楽しくなってきただろう!』
血が腐ったような匂いが辺りを包む。
流石にこれ以上は...!
「聖子さんは皆と狼をお願い!」
そう言って姉は聖子さんとスイッチする。
「私と遊びたいのでしょう?」
吸血鬼の太い首を鷲掴みにして跳躍する、お姉ちゃん1人だけじゃだめだ!
姉の後を追いかけようとするが、夜空を染める閃光と爆発音によって足を止められる。
丘の上の公園から見える港は、姉の攻撃で無残に姿を変えてゆく。
ひと際大きな閃光と轟音の後、奴の気配が消えていくのが分かった。
それに合わせて10匹の犬が主人に付き添うように消えていく。
5年前の親子喧嘩でも手加減してたんだなぁ、そんな場違いな事を思っていた。
『アレには無理だとわかっていたけれど。貴女のお姉さんすごいのね』
突然声をかけられ振り向きながら距離を取る。
真っ赤なドレス、病的な白い肌、軽くウェーブのかかったスーパーロングのプラチナブロンド。
180cmはあろうか、それになにあの乳なめてるの?でかすぎじゃない?!
まぁお約束って恰好ね。
たださっきの奴と違って強さも不気味な雰囲気も何も感じない。
不意に頤をつかまれ金色の瞳と視線がぶつかる、何時の間に?!
『お姉さんによ・ろ・し・く』
体が動かない!
真っ赤なルージュのすき間からチロリと舌が覗く、顔が近づいてきて...
眼前を拳が通り過ぎる、姉が助けてくれたようだ。
硬直から解放されたわたしは周囲を見回すが、現れた時と同様何もなかったように消えている。
寺は守る事が出来たが、負傷者多数、公園はめちゃくちゃ。
港に至っては見たくもない。
姉が無言で私を抱きしめ大きなため息をつく。
「今日は協会にお泊りね」
土曜10:00協会支部
「ミナサンのお陰でたすかりました」
聖子さんがお辞儀をする、こっちは新たな脅威が舞い込んで気が気じゃないんですけどね!
「今回けが人は出ましたが重傷者や死者が出なくてよかったです」
口元をひくつかせながら支部長がいう、そうだね誰も死ななくてヨカッタネ。
「では無事解決したので帰りましょう、彩香ちゃん」
「そうですねお姉様、さっさと帰りましょう。聖子さんは観光を楽しんでいってくださいね」
姉と2人でダッシュで逃げる。
支部長が何かを喚いている、あーあーなにもきこえないー。




