転移-ようこそ
彩香です
海外旅行したことないんですよね
洋風化物って美味しいんでしょうか(金銭的な意味で)
暗闇の中周りを見る。
日本では、少なくともわたしが住んでいた所では見たことが無い樹木や草木。
特にこのジャイアントセコイアのような真っすぐに、太く、高く伸びた巨木群。
霧が立ち込め神話の中にいるような雰囲気を出している。
えーと、この巨木はカナダだっけ?日本ーカナダ間10,000km位をにひとっ跳びか、今何時?!
土曜01:03
3分しか経過していない、気を失った感覚は無いのでそんなものか。
このような深い森の中の為か空気中にただよう魔力というか気というか、住んでいた地域と違って満ち溢れている気がする。
地元も田舎だから自然(花粉)いっぱいだったけどね!
目を覚まさない先輩の胸にぐりぐりと頭をおしつけクンクンと鼻を鳴らす。
ふむふむこれが雄の匂いか、肺いっぱいに匂いを取り込んでいると目が合ってしまった。
「...なかなか起きないから心臓の音を聞いていたんですぅ」
「立てないので少し手を放して貰えますか...」
あんな事をやっておいて自由があるとでも?さらに強く抱きしめる。
「色々と吐いてもらわないと!そう簡単に逃げれるとでも?」
「ここは危ないので移動したいのです、逃げないので離れていいただけますか?」
何が危ないというのだろう、狼や熊とか?仕方が無いので離して立ち上がるがすぐに腰のベルトを掴んで逃がさないようにする。
抱き着いていてわかったことが、意外に胸板が厚い。もやしっ子じゃなかったの?
先輩の体をじっと見つめていると遠くから移動してくる気配がある。
そちらの方を見ていると...先週のオーガ!しかも3体も!
急に先輩がわたしを抱きしめる、ちょっとこんな時に!
「ちょ!せんぱいこんにゃとこりょでえ!」
「飛びます、離れないで」
耳元で囁かれる、先輩の髪が吐息が耳元にぃ。
慌てていると先輩と共に光の粒子に包まれていく、真っ白な視界の中謎の浮遊感が。
飛ぶって何が?飛行して逃げるって事?混乱していると視界が回復....しない。
どこだここは、いい加減にしろ。
夜目すら効かない真っ暗な中、抱きしめてくる先輩の体温に安心する。
光を、先輩が呟くと小さな光が生まれ部屋を優しく満たす。
洋風で古めかしく質素な内装の部屋、足元には魔法陣...魔法陣?
先輩の目をじっとにらむ、スっと目をそらしながらも腕から離す気配はない。
「逃げませんよというよりここまで来たら逃がしませんので」
ナニをするつもりか!
手を繋いで地下室を出る、本気で離すつもりがないらしい。
小さな灯りを付けながら2階に上がる。
「今日はもう遅いので寝ましょう」
寝室に案内される、もちろん手は繋いだままでドアが閉められる。ベッド1つしかないんですけど。
「な、ナニを「一緒に寝ましょう」
まさかの展開!出会って正味2日も経ってないんですけど!
「やめて!わたしに乱暴する気で「逃げられると困るので捕まえておくだけですよ」
そういってわたしを抱き寄せられる。普段であれば避けたりカウンターできるのになすがままだ。
そのままベッドに押し倒されてしまう。先輩と目があう、やっとの思いで出た言葉は小さくかすれていて....
「シャワーいかせて」
「我慢してください、トイレも自分の目が届かない場合は我慢を」
「トイレも!?」ちょっと冗談じゃない。
「トイレ行きたくなる前に寝てしまいましょう」
そう言って毛布をかける。寝るってただ寝るだけっぽい?
「明日になったら色々回りましょう、今日はもう疲れ..」
そういって先輩は私を抱いたまま眠ってしまった、え?放置っすか?
携帯を取り出すこともできないので諦めて眠ってしまうことにする、明日に説明されることでもあるしね。
こんな状況では朝方まで眠ることは出来なかったが。
からだを揺すられ目を覚ます。
「おはようございます、トイレ行かなくて良いです?」
デリカシーの欠片もない、こっちはあまり寝てないんだよ!
「おはようございます、案内してもらえますか先輩」
トイレに案内される、扉を開く。壺?先輩に振り向く。
「壺ですか?」「壺です」
そっかー、海外は壺か。
「ある意味日本よりハイテクですよ」
そっかー、でもウォッシュレットが無い時点でジャパンの勝利だわ!
ちょっと待って紙がない!ありえん!
「先輩紙が!神である紙が無い!」
「用が済んだらあそこにある水晶みたいなのに5秒以上触れてください、それでわかりますので」
意味が分からない、意味が分からない!しかし我慢の限界である。
「終わったらフタしておいてくださいね」と扉を閉める。
諦めて壺に座って用を足す。
水晶を握る、こんな物がなんだというのだ...その時爽やかな風のようなものが全身を包む。
『生活用浄化魔法は発動しましたか?』扉の向こうから聞こえてくる。
タイミングばっちりだな、覗いているのか?
えーっと...綺麗になったって事?拭かなくて良いって事?拭かないと気持ちが落ち着かないんですけど!
「魔法...ですか。これで綺麗になったんですか?」
『はいそうです、後は壺にフタをすれば中で処理もされるので清潔です』
そうか処理されるのか、しかし拭かないのは気持ちが悪いと思っていると。
『手も綺麗になっていますが、気になるのであればそこの手洗い場使ってくださいね』
手だけでも洗おうか...
トイレを出ると肉の焼ける匂いがしてくる。
「すぐに出来ますので座ってくださいね」そういってオレンジジュースを手渡される。
改めて部屋を見渡す。ログハウスだろうか、先輩ってもしかしてお金持ち?
ジュースに口をつける、日本のスーパーで買ったことある味だわ。
昨日散々乙女の純情弄んでおいてどうしてやろうかと後姿をにらむ。
振り返った先輩がどうぞと言ってトレイを渡される。
トーストにベーコンと目玉焼き、キャベツの千切りにワカメ&トーフのミソスープ。え?お味噌汁?まぁゆるそう。
わたしの向かいに座った先輩と一緒に「いただきます」食べ始める。
こんなもの料理なんて呼べるものじゃないんだから!おいしくなんてないんだからね!
黙々と口に運んでいると、
「今日は観光をして夜になったら日本に帰りましょう」
日本と言われて思いだす、
「姉に連絡したいんですけど、国際電話って携帯でかけれましたっけ?」
圏外と表示されている携帯を覗いて落胆する、だめか。
「あぁ、ここで携帯は使えませんね」
肩を落としたわたしを見ていた先輩が箸を置いて立ち上がる。
「ここは遠い遠い異国の地」
窓に近づきカーテンに手をかけて、
「異世界へようこそ」
勢いよくあけられたカーテンの向うには、
明らかに人ではない、神話や童話、マンガに出てくる生物が闊歩する、大きな街の通りだった。




