↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現界⇔異界  作者: MayaMaya
31/40

夜長月-帰宅

千早です

1日は我慢した

許さんよ?

18:00鬼塚本宅

場所を移し、宴会の様な騒ぎになっていた。

着替えたわたしと鬼頭潤が上座に座らされ、お披露目宜しく紹介される。

ほかの家は主に当主が呼ばれていたが、学生も呼ばれている。

次代の当主として紹介も兼ねているらしい。

水を一口飲む程度で料理には手を付けていない。

そんな気分にはなれなかった。

白髪の女はここには居ない。

関係者だったのは分かったが、何をしている人間なのかは全く分からなかった。

本家である父母祖父母と同席する位なのだ、何かしら重要な任を担っているに違い無いのだが。

隣の鬼頭潤が話しかけてくる。

「料理たべねーの?うまいよ」

「いいえ、大丈夫です」

「オレがたべさせてあげよーか?ほら、あーんってさ」

「すみません、すこしお手洗いに」

「いってらー」

席を立つ。


数年前までここで暮らしていたはずなのだが、今では知らない場所の様に感じる。

洗面所で鏡を見る。

酷い顔をしている、そう思った。

気分を変えようと顔を洗う、冷たい水は心地よかったが心までは洗い流してくれなかった。

「使って」

後ろからタオルを渡される。

白髪の女だった。

「...ありがとうございます」

顔を拭き、鏡越しに彼女をみる。

真っすぐなストレートの白髪と白い着物、そして着物から覗く白い肌。

鏡越しに異次元をみているようだ。

鏡の中の彼女に問う。

「ご存じかと思いますがわたしは鬼塚彩香、貴女のお名前をお聞かせ願えますか」

突然後ろから抱きすくめられる。

「お帰りなさい彩香、私の名前は白露」

既視感?

彼女の腕に収まるわたしはそんな感覚に襲われる。

「白露さんは何をしている人なんですか」

安心感?

正体の知れない女に捕まっていると言うのに不安は感じない。

「灯と義人のお友達」

そんなはずはない、ただの親友がこあんな場所に居れるはずが無い。

「そんな顔をしない、今日は良い日」

今度は髪にキスをしてくる、でもそれすら不快では無くて。

わたしは怖くなり強引に離れる。

「何者ですか」

キョトンとした表情から目じりを下げ、

「私は彩香の味方」

「さっきからなんですか彩香彩香って、わたしは貴女を知らない!」

「私は彩香を知っている」

「わたしは知りません!」

ゆっくりと左手が伸ばされ、わたしの頭を撫でる。

「大丈夫、怖くなんてない」

右手が伸びてきてわたしの背を抱く。

「私は彩香の味方」

胸に抱かれる。

「だから安心して」

危機感も恐怖も感じない、安らぎだけがあった。

術式を使われている...

「そんなことはしていない、ただ抱きしめているだけ」

うそだ、だって初めて会う人間にこんな感覚を...

「・・・・・・」


「こちらでしたか」

「灯、彩香の寝所の用意は?」

「出来ております」

腕の中で眠ってしまった彩香を見つめる。

「皆には疲れて寝てしまったと」

「はい、そう伝えます」

彩香を見つめる白露の目は灯が見つめるものよりも優しい。

「鬼頭の子は別の部屋に、流石に今日からは忍びない」

「...はい、承知いたしました」

早速行動するつもりだったのか、それは可哀想でしょうに。

「彩香が使っていた部屋に...」

侍女に案内をさせる。

彩香を起こさぬように優しく抱いて。




「なあ春日、巴。オレ嫌われてるのかなぁ...」

「ジュン、きにしなぐでもいいぞ。娘っ子もゆてだねが、高校でるまでこねっておもてだって」

「んだんだ、これからがんばればいなだ」

「んだなー、今日はじめであたしなー」

空を見上げる、今日は良い天気だ、星が良く見える。

「めんこい娘っ子でねが。ジュンがんばれよ」

「んだなーがんばれよ」

バシッと頬を叩いて気合を入れる。

「んだな、がんばっが」




07:00鬼塚家

快眠したと言って良かった。

だが数年前まで住んでいた部屋を見た時、一気に気分が沈んでいく。

何時の間にか寝衣に着替えられていた。

ハンガーにかけられている制服に着替える。

ポケットのスマホに気軽く。

そう言えば姉に連絡をしていなかった。

「でも連絡し辛いな、大体なんて言えばいいんだろ...」

スマホを見るのが怖かった。

怖くて怖くて、着信ランプも見ないようにしてカバンに仕舞った。

洗面所に向かう、顔を洗っていると何かが破壊される轟音。

音の方へ向かう、玄関に使用人が集まっていた。

その玄関に無表情の姉が立っている、玄関を吹き飛ばしたらしい。

わたしを見つけた姉が、

「彩香帰るわよ、カバン持って来なさい」

うれしくてうれしくて涙が出そうで、

「うん」

声が震えてたった一言しか返せなかった。

部屋に戻ってカバンを手に取り戻る。

父母祖父母と鬼頭家、そして白露が居た。

「千早、貴女には関係の無い事なのよ」

母がけん制する。

「彩香、来なさい」

姉は無視を決め込む、そこに白露が一歩前に出る。

「おかえりなさい千早、朝食を食べて行ったら?」

昨日と同じ優しげな顔をしている。

「貴女やっぱり鬼塚の人間だったのね」

白露に敵意を向ける姉。

使用人が下がる、代わりに父母祖父母と鬼頭夫妻が前に出る。

わたしは姉の方へ行こうとすると、

「彩香!」

鬼頭潤に手を掴まれ、振り向く。

「千早先生大丈夫ですか?」

姉の後ろに先輩が、どうして?

声を上げそうになった時、先輩が険しい表情をする。

「貴女は何者か?」

白露を睨む。

「烏の関係者?鬼塚に何用?」

先輩を見つめる。

「千早先生、ちょっと不味いかもしれません」

「皆下がりなさい」

白露が前に出て、先輩が姉を下げる。


先輩が左肩を押さえ、深い息をつく。

ギギッという歯ぎしりが聞こえ、右の拳を引き絞る。

「手負い?勝てる?」

先輩の突き出された右拳を柔らかく受ける白露。

「無理は良く無い、名は?」

「ぐぐ...うっ...」

膝をつき左肩を押さえ、荒い息を吐く。

「はぁ!はぁ!はぁ!」

先輩を見つめ、何かを考えているような表情の白露。

「彩香、今日は帰って良い」

「え?」

蹲り、立つ事が出来ない先輩。

足袋のまま土間に降り、先輩の右腕を掴み起こす。

「名前は?」

「はあー、はあー」

怪訝な顔で先輩を見つめる白露。

憔悴した顔で白露の瞳を受け止める先輩。

数十秒見つめた後、先輩を小脇に抱えて外に出る。

クツを履いて追いかける。

白露は姉の車の後部座席に先輩を放り込む。

「彩香、今日は帰って良い」

先程までの怪訝な顔ではなく、柔らかな顔でわたしと姉を交互に見る。

「彩香、行くわよ乗りなさい」

助手席に乗る。

「千早、彩香、また来なさい」

姉が車を出す。

角を曲がって見えなくなるまで白露は手を振っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。