第6話 壊れた家族
わたしは東京から電車で1時間ほどのところにある海にも山にも近い場所で、世間に名の知れた大学で日本文学の研究をする父とデパートのアパレルショップで働く母のもと兄に次ぐ女の子として生まれた。
父と母がまだ結婚する以前の若い頃の写真を見ると、父はDAIGOに、母は北川景子に似ていた。そんな両親の間に生まれた兄はカッコよく、わたしは美しく育った、と多くの人たちが思うだろうが、兄は目が細くたれていて羽田陽区に似ていて、わたしは有名人にはいないタイプの不細工な女に成長した。
しかしこれも信じてはもらえないだろうが、兄もわたしも異性からよくモテた。なので決して不幸な人生を歩んでいるというわけではなかった。だが兄もわたしも誰とも交際しないかった。
その理由は深い。
兄の性の対象は妹のわたしで、わたしが好きになる異性は兄だった。
幼かった頃は、仲のいい兄妹だと誰からも微笑ましく思われていたが、中学、高校、と友人たちが異性と交際を始める中、わたしと兄はいつも一緒にいた。
兄が大学3年生、わたしは高校3年生になった。この年齢差はわたしたち兄妹にとってとてもラッキーな年齢差だった。大学入試の受験勉強を教えてもらうという名目で兄はわたしの部屋に自由に入ることができた。両親が不審に思わないのをいいことに、兄とわたしは行為を繰り返した。
しかし天罰とは最も幸せな人間にくだされるらしい。興奮のあまり部屋のカギを閉め忘れ、受験勉強しているはずのわたしと兄の秘め事が母親にバレてしまった。
そうして緊急の保護者会議が開かれた。
その夜、兄は家を出て行方不明になった。母は警察に捜索届を出した。
3日後、兄は遺体で発見された。
兄は自殺したのだ。わたしは兄の自殺の要因はわたしにあると思った、が、そうではなかった。
兄はわたしだけでなく母とも性交渉をしていた。それを知った時、わたしは自分のあらゆる感覚を疑った。わたしは嫌な予感に襲われた。母に相手にされなくなった父がわたしを求めてくるんじゃないか。
わたしの予感は的中した。父がわたしの部屋の合鍵を使って部屋に入ってきたのだ。父がわたしの部屋に入ってきたのは初めてだった。
翌日、わたしは「合宿」という勉強会が友達の家であるといい訳をして、家を出た。そうして母に、自由に使いなさい、と渡されていたキャッシュカードを使って整形し「わたし」ではなくなった。
もうこれで父に凌辱される懸念はない。そう確信していたが、東京のど真ん中で、わたしはポリスに呼び止められ、「わたし」がわたしであることを知られてしまう。
わたしは兄を羨んだ。
わたしには自殺する勇気はない。これからも実の兄を誘惑して死に追いつめたふしだらな妹と世間に認知され、その中で生きていかなければならない。
結局、父と母は離婚し、わたしは経済力を理由に父に引き取られ、そうして、毎夜毎夜、父と、やって、死にたくても死ねない人生を、無声慟哭、生きていかなければならなかった。
最低最悪の人生をだ……。
ところが神さまはわたしを救ってくれた。
父が痴漢で逮捕されたのだ。
あらゆる問題が、これでみな終わる。そう思った。
でも、もう疲れた……。
それが本音だ。




