3. OLIVIAー3
はっやぁぁぁい!!
ビュンビュンと過ぎ去る景色に、もはや考えられるのはそれだけだった。速い。とにかく速い。
いったい、時速はどれくらいだろうか。たぶん新幹線より速いんじゃないだろうか。上空で良かった。地上で生身で超特急は、さすがに恐怖で死ぬ。
上空だと障害物も目印もないので、そこまで速度が気にならない。本来たぶん、気圧でも速度でもパァンってなる状況だろうけれど、さすがは風の精霊王の加護か、息は普通に出来るし、身体に圧も感じない。
快適爽快な空の旅だ。
快適爽快な空の旅だが。
これ、魔力どれくらい消費するのだろうか。
公爵と王族のハイブリッドなので、生まれ持っての魔力は高い。マイムたんの加護を受けたことで増えたし、その後に魔法の訓練もしていて増えている。
とは言え、三歳の幼女である。多いと言っても、たかが知れている。
魔力枯渇したらやばいな。死ぬんだよな。ギリギリでも良いからもってくれないかな。
思いつつ、ビュンビュン過ぎ去る景色と、グングン減り行く魔力に、冷や汗を覚える。
駄目かな。行けないかな。あとどれくらいだろう。行けるかな。行けて欲しいな。もう少し。あと少し。
唐突に、推力が消えた。徐々に減速、とかじゃなく、一時停止ボタンを押されたみたいに、スン、と。
ああ、目的地に着いたのか。どうにか、魔力は足りたようだ。
ガス欠寸前ランプ点滅くらいの状況ながらなんとかなったことに安堵しかけたとき、気付く。
目的地まで飛ぶことに気を取られて、着地について一切考えていなかった。
やばい、と思うが、下手にこれ以上魔力を使うとたぶん死ぬ。
思う間に、推力を失った身体は自由落下を始めて。
空気抵抗!服を拡げて、せめて空気抵抗を高めよう!
そんな、涙ぐましい悪足掻きをしながら。
「うっぎゃあぁぁぁぁぁぁああっ!!」
わたしは大絶叫と共に、大空から大地へ、綱なしバンジージャンプと洒落込んだ。
{えっ、子供落ちて来るんだけど!?}
{待ってあの子、王さまの加護持ち!}
{助けないと。えっとえっと、えい!}
慌てた声と共に、伸びた木々の枝や蔦が減速を手助けしてくれる。バッキバキに枝折りまくって申し訳ない、って。
「なんの音、って、はぁ!?なんで空から女の子が!」
「どっ、どいてどいてどいてぇっ!!」
「いや退いたらあんた死ぬ、ったくもう!」
落下地点で、ぎょっとしていた少年が、舌打ちして地面に手を突く。
「巧く行かなくても恨むなよ、{耕作}っと」
ボフン、と土が破裂して、落加速度を相殺され、わたしはそのまま、ふっかふかの土のなかに突っ込んだ。
痛い。でも、死んでない。土まみれになりながらも起き上がり、奇跡の生還に感謝する。
「どう!?無事!?!?」
同じく土まみれになった少年が、焦った顔でこちらを覗き込んで来た。愛嬌のある顔の、十二、三歳くらいの少年だ。
「あ、無事です。ありがとうございます」
そうだ、助けてくれたのは、彼だけではない。
ふらふらしつつも立ち上がり、上を見る。
「あなた方も、ありがとうございます。助かりました。枝を折って、申し訳ありません」
{王の加護持ち、丁寧だ}
{優しい}
{良い子だ}
「なにか、お礼を、っ」
お礼をしなければと思うが、視界がだんだん、暗く、
「ちょ、大丈夫?やっぱりどっか、不調が」
「いえ、その、まりょく、けつぼう、で、」
ああ、駄目だ。
{オリヴィアちゃんっ!!}
焦ったマイムたんの声と、冷たい腕の感触を最後に、わたしは意識を手放した。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
次話から六話分別視点が入ります
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