10. OLIVIAー4
あまり優秀さを見せると目を付けられる。それはわかっていたが、とにかく時間がなかった。
水魔法の俯瞰視で街を見下ろし、延焼箇所を把握する。やはり木造建築の密集した下流階級の居住区が中心にやられている。建物が密で、道幅も狭いから、燃え広がりやすく避難もしにくいのだ。だからこそ、火災の対策をと、父には伝えておいたのだが。下流階級の居住区なこともあってか、火災発生からそれなりに時間が経っているのに、救援の騎士や兵の姿も見えない。教会の人間らしき、水魔法の使い手はちらほら。水の聖女は長雨対策で出払っているから、中位精霊の加護持ち神官だろう。
中流階級の居住区や商業区・工業区にも延焼し始めていて、そこには兵士の姿も見える。
命の重さに差を付けるな、屑共が。
内心で悪態を吐きつつも、ユンと共に延焼箇所の外郭へと駆け付ける。
二時間ほど休んだだけだが不思議と魔力がしっかり回復しているようで、これなら一気に終わらせられそうだ。
{すべての炎を喰い尽くせ、水牙!}
「うわ、いきなりぶっ放すなよ、姫さん」
ユンの苦言は黙殺して、続ける。
{冷却せよ、冷霧}
炎も、熱気も、すべてが消えて、煙すら立たなくなる。
「おいそんな掛かり気味に魔法使ってたら、すぐ燃料切れに、」
わかってる。でも時間がないのだ。
{ピックアップ}
{救い待つすべての者へ、命の雫を、広域治癒}
それでも多少は節約しようと、怪我人を選んで一気に治療する。せっかく回復した魔力が急速に失われて、めまいがした。
「おい姫さん!」
倒れかけたわたしを、手を繋いでいたユンが抱き止める。危険だからと馬車に残して来なくて良かった。
意識が遠退く。駄目だ。もう少し。
「ユン、火災の対応は、終わったから、皇城へ、運んで」
「いやいや、これ以上働ける状態じゃねぇだろ。馬車に戻って休めよ、もう」
「駄目なの。わたしが、行かなきゃ」
いま、皇都に水の聖女はわたししかいない。水の治癒師ならばいるかもしれないが、治癒師では聖女の力に及ばないのだ。
「皇城には、ほかの聖女が詰めてんじゃねぇの?姫さんが無理して行くことねぇだろ」
「光の聖女じゃ駄目なのよ。お願い、ユン」
「でも姫さんもう魔力限界だろ。行ってどうなるんだよ」
「着くまでに回復する」
ユンが心底呆れた顔をした。
「下手すりゃ死ぬぞ。わかってんの?」
「わかってる。でもやらないと。時間がないの。急いで」
「わかったよ。たく、あとでちゃんと全部説明しろよな」
ぼやきつつも、ユンはわたしを背負って駆け出す。
「ありがとう。ちょっと寝るから、着いたら起こして」
「はいはい」
ユンの答えを聞きながら、わたしは意識を手放した。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
続きも読んで頂けると嬉しいです




