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番外編 天音---空の名を持つ男1

俺の人生は少し人とは違った。

産まれた時から神代久遠家の当主となる事、連盟の総統となる事を父から義務付けられていた。


ああ…正直ダルいし、やりたくない。

家ではお坊ちゃまと呼ばれ、見習所ではなんでも出来て当然、やっぱり神代久遠家の次期当主は凄い!ともてはやされ、友達らしい友達も居ない。


暴れだして、喚き散らしたいよ…。





外では桜が咲いていた。

屋敷の庭のベンチに腰掛けてウトウトしている所を呼ばれた。


「こいつが橘の倅の大和だ」

存在は知っていた。

うちと主従関係の橘家の子息、橘大和。

こいつが俺にこれからずっと着いてまわるんだ…。

1人の時間はなくなる。


「まぁ、よろしく」

それだけ呟くと、俺は大和の顔もよく見ず部屋に戻った。



大和がやって来て数日が過ぎていた。

俺の世界は何も変わらず、使用人達は相変わらずのお坊ちゃま呼び。

本当に…やめてくれよ。

俺はお坊ちゃまなんかじゃない。

天音って名前なんだよ

イライラしていると、大和が口を開いた。


「天音さんは、その名の通り、空のような広大な心をお持ちなんですね」


「でも、辛そうだ」


困った様な顔をする大和。


「ホントの天音さんは、俺と同じで暴れ馬、ですよね」

ニカッと笑う。


ああ…こいつ、全部分かってるんだ。


「そういうお前も名前の通りだな。大らかで和やかな心の持ち主」


2人の間に風が吹いた。


「俺は天音さんを名前で呼びますよ。しかも呼び捨てでね」


天音は目を見開いた。

俺が誰にも呼び捨てされていない事を分かっているんだ。

天音’さん’、天音’様’ お坊ちゃま。

そう、どれも俺の名前じゃない…。


「…ありがとう」


「天音をこの橘大和は支えてやるからさ、俺の事は信用してくれ」


大和の事は信用していいと思えた。

言葉がなくても分かり合える唯一の人間だ。



それから、俺たちは友達…悪友となった。

2人でイタズラを大人達に仕掛け、時には父に全力で怒られたりもした。


人と違う人生と思っていたけども

それは傍に自分の理解者がいるかどうかだったんだ。








数年の時が流れ、天音は妻を迎えていた。

と、同時に神代久遠家当主、連盟 総統についており、多忙な日々を送っていた。


「あ〜今日も終わんねぇ…ねぇ、橘、帰っていい?」

仕事の時は天音は大和ではなく、橘と呼ぶ。


「終わったら、美味しいパフェあげますから、頑張って天音さん」

大和も仕事上、敬語で話している。


が、既にだらけモード突入の天音。

「だって、俺さぁ3日も帰れてないよ?家すぐ隣なのにさ…澪の顔も見れてないよ」

澪とは天音の妻の名前だ。


「それは俺も同じ」

橘にも最近、女が出来たと聞いていた。


「ほっといていいの?」

「仕事だから、しょうがないだろ。…それにさ、澪さんに会いたいのも分かるよ?もう来週予定日だもんな」


そう、澪のお腹には子供がいる。

もう予定日なのでいつ産まれてもおかしくないから、大和も天音を家に帰してやりたいのは山々なのだが…。

なにぶん、ここのところのテロ騒ぎで書類が山のように残ってしまっている。


「さっ、2人でやって終わらせましょう!」

ドンッと書類の山を天音へ差し出す大和。

ニコニコしていて、逆に怖い。


「鬼」


まぁサボっても終わらないものは終わらない。

将来こんな事、自分の子には押し付けたくないもんだ。



—数日後。


仕事を終わらせた天音は澪の出産に間に合う事が出来た。



「小さいねぇ…元気な男の子だ」

目を細めて、天音は愛しそうにその子を見つめる。



「蒼真」


「真っ直ぐで、爽やかな心を持った男の子に育って欲しいな」


澪が呟く。


「うん、いい名前だ」


守るものを守り抜く、蒼真の誕生だった。


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