38 事業開始 アレクサンダー目線
38 事業開始 アレクサンダー目線
音楽の演奏がきっかけだった。
だから、手段も音楽にした。単純な話だ。
要は、若い連中に目標を持たせればいい。
あの二つのグループに会い、話を聞くと、同じように自分たちで演奏を楽しんでいる者が、ほかにも相当数いるらしい。
おもしろいと思った。
だから、場を用意した。
練習場所として、空き家になっている貴族の屋敷を借りた。
探してみれば、驚くほど数がある。維持だけされて使われていない屋敷は、想像以上に多かった。
広い部屋、さすが貴族の屋敷、天井も高い。
音を出しても文句を言う者はいない。置きっぱなしにもできる。
それだけで、連中の顔つきが変わった。
週末には王宮のホールも押さえた。
意外とグループが多くて、午前中からの演奏を組まないと間に合わない。
今までなら考えられない時間帯だが、演奏する側も聞く側も喜んだ。
なぜだ?
当然、ただでは入れない。入場料は取る。
金を取ると決めた途端、演奏する側の意識が変わった。
演奏に力を入れるようになり、いわゆる「お利口」になった。
近所にも挨拶をするし、客への対応も丁寧になる。
親に恵まれているグループは、親が入場券をまとめて買い、知り合いに配っているらしい。
構わない。
客が入るなら、それも立派なやり方だ。
三か月も経つと、流れが見えてきた。
人気の出るグループが現れる。上手い下手は関係ない。
なぜだ?
演奏順はくじ引きにした。
公平性を保つためだが、それでも観客は正直だ。
時間を見計らってやって来て、目当てが終われば帰る。
噂は広がり、国外から見に来る者も出てきた。
視察と称して、著名人も顔を出すようになる。
ここまで来たのなら、ただでは帰らせない。
知り合いが来れば、すぐに声をかける。
まあ、有名どころは大抵顔見知りだ。
「半年だけでいい。面倒を見てやってくれ」
そう言えば、大抵は引き受ける。
半年の間に自分の演奏旅行に出て、またここに戻ってくるやつも出て来た。
その流れ自体を楽しんでいるようだった。
第二の拠点にしてくれれば理想だが……そこまでは望まない。
完全な指導など期待していない。
演奏者と指導者は、別の資質だからだ。
だが、練習を見せるだけで、吸収する者は勝手に伸びる。
やがて、演奏者の中から、まとめ役や指導役が自然と現れた。
そこに、若手官僚の志望者を運営として入れる。
責任を持たされ、評価される場所がある。
それだけで、人は伸びる。
ある日、他国から来た男が言った。
「これは、学校ですか?」
わたしは首を振った。
「いや、違う。商売だ」
音を売り、人を集め、才能を回す。
それだけのことだ。
だが、その単純な構造が、妙にうまく回っている。
ミネルバがくすりと笑う。
「ずいぶん楽しそうね」
わたしは肩をすくめた。
「そりゃそうだ」
「金になるうえに、飽きない」
そして何より――
「勝手に育つ」
なぜだ?
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