第11話 秘策と衝撃波
魔王の魂に目覚めたリリイの反攻が始まる…!
アナクの魔神の叫びで会場全体が震える。
突如空間を破って上半身だけを現した巨人に観客席は驚きに満ち溢れている。
「アナク…?これが…君の『魔王の魂』の能力なの
か…!」
ドラクも驚いていたが、すぐさま周りの火から大量の矢を作り、曲射で撃ち込んでくる。
「もっと驚いてろやぁ!」
なんつー数だよッ!前に天使に使われた矢の光魔術、あんなのの比じゃない!
「アナクの魔神!打ち落としてくれ!!」
動かし方はなんとなくわかった。魔神は俺の脳内イメージに近い形で動いてくれる。
しかも意外と素早い動きをしてくれる。
「フラッグが丸裸なことに変わりはない!一発で
も打ち漏らしたら君の負けだ!」
わかってるわ!防御魔術をもう一回使いたいが…それでは俺の魔力がもたない。
「グオオアァァァァ!!!」
魔神の連続パンチでフラッグに降り注ぐ火の矢を迎撃する。
「これだけの攻撃を受けて…無傷か…」
ドラクの言うとおり魔神の拳、体にダメージはない。
魔神の守りがある今なら…!
再びドラクのフラッグを見据えて突っ込む。
「良い能力だ…どうやらその巨人は水と油のように
魔術を弾くようだな。倒すのは無理そうだ…」
「本体が突っ込んで来なければなぁ!」
ドラクは更に周りの火を操り火の剣を飛ばしてくる。
「あっ…ぶねぇぇぇぇ!」
ギィィン!
寸前の所で弾いたが、こう何度も上手くいかないだろう。
速さが足りない。こんな速度では簡単に捕捉されて攻撃をぶちこまれる。
…仕方ない!アレを使う時だ!
「全開放!!」
アウローラを振りかぶり、上空の火の矢に向かって振り抜く。
すると、アウローラから様々な魔術が混ざった斬撃が火の矢の殆どを消し飛ばす。
魔剣アウローラは斬った魔術を吸収する、その吸収した魔術を開放する一撃だ。
「アナクの魔神!力を貸してくれぇーー!!!」
手の空いた魔神は、俺に向かってパンチを繰り出し、
ゴッ!
拳で押して貰い、一気に加速する。
「めちゃくちゃな…!だが、その程度の速度を捉え
られないとでも…」
「闇・幻影魔術 黒闇!」
加速しつつ、術式を素早く描き、発動する。
黒闇は黒い霧を発生させるだけの幻影魔術だ。
ただの黒い霧だから簡単に攻略できる、なんてことのない魔術だ。
「撹乱のつもりか…?強化魔術 視野強化」
「…見えるぞ、リリイ君!まっすぐに俺のフラッグ
へ向かってくる君の姿がな!」
その言葉の通り、火の剣が俺の腹部を掠め、血と肉片が飛び散る。
「ぐあぁぁぁぁ!!」
いっってえぇぇぇぇ!!!熱いし!!
だけど…作戦成功だ!
瞬間、周囲の黒い霧が膨らみ始め、白い閃光となって弾けた。
「なっ…!?め、目がっ…!!」
ドラクは目を抑え、動きを止める。
決まったぜ!これが俺の秘策!魔術崩壊(仮名)だぜ!
前にリキエルとか言う天使と戦った時にも魔弾を使ってやったやつだ。
理論は簡単。術式を不完全にしたまま魔術を発動する。
そうすることによって、その魔術はしばらくすると、形を保てなくなり白い閃光となって弾ける。
魔術の授業で何度も失敗してるうちに思い付いた作戦だ!術式の展開を余裕でスキップできる天才じゃ思い付かないだろ!失敗は成功の母ってな!
そうこうしてるうちにドラクのフラッグはすぐそこだ!
「闇よ!魔の王の黒き闇よ!…」
「やらせんぞ!」
俺の詠唱を遮るようにドラクは火の壁を俺の前に作る。
「俺は負けられない!ちっほけな理由かもしれな
い…だけど!俺には負けられない理由がある!」
壁を斬ると、眼前に防御魔術に守られたドラクのフラッグが迫る。
このチャンスを掴む!その為に一週間努力してきたんだ!
アウローラでしっかりとフラッグを狙う。
「闇よ!魔の王の黒き闇よ!!大いなる破壊を!」
「ぶっ飛ばすぜぇぇぇ!!闇魔術 黒破震!!」
アウローラの剣先から闇の衝撃波を打ち出す。
俺が今出せる最強の魔術だ!中級防御魔術くらいなら容易く破壊するぜ!
バギャアァッ!
防御魔術が壊れた音、そして
ドッグォォォォッッ!!
凄まじい音と共に衝撃波は闘技場の壁を破壊した。
土埃が上がり、ドラクの陣地一帯は土埃に覆われた。
…
やった…やったぞ…!見ろよ(見えない)!フラッグが粉々だぜ!
土埃のせいで上手く見えないが…どうだ!ドラクよ!観客達よ!俺の勝ちだ!!
さてさて、決闘終了のコールはまだかな…?
審判の方を振り返るが、コールをする気配はない。
ガッツポーズをとる準備をしている俺に対して、ドラクは冷静に呟く。
「危なかったよ。本当に」
ドラクが右手を横薙ぎすると、土埃が吹き飛び…
そこには
赤い竜があしらわれた、傷一つないドラクのフラッグがあった。
次回、リリイ絶体絶命
次回もよろしくお願いします。




