表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の後宮妃 この恨み絶対に忘れない  私を殺した悪徳妃に復讐を ー処刑された貴妃は、二度目の人生で牙を剥く―  作者: 島崎紗都子
第2章 後宮の頂点に登り詰めるために

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/62

21 懐かしい人

 池のほとりで、星辰と妻の薇蕾は語りあっていた。

「側仕えの侍女があなたの部下に嫁いだから、お祝いをしなければいけないわね」

「ああ、そうだな」

「何がいいと思う?」

「そなたに任せるよ」

 夫の素っ気ない態度に、薇蕾の表情が凍る。けれど、気を取り直し笑みを浮かべて夫に話しかける。

「長年仕えてくれた侍女がいなくなるのは寂しいわ」

 薇蕾の侍女である楚花(チェファ)は恐縮した様子で言う。

「奥さま、何かあればいつでもすぐに駆けつけます」

 薇蕾は笑う。

「楚花、あなたはもう私の侍女ではないのよ」

「そんな寂しいことは仰らないでください、奥さま」

 薇蕾は楚花の頬に手を触れる。

「私のことはいいから、早く子をもうけ、幸せになりなさい」

「はい」

 楚花は涙ぐむ。

「ふふ、ねえあなた、私たちもそろそろ子が欲しいわ。周りから毎日のように跡継ぎはまだかと言われるの。特に母上から……みんなを安心させるためにも、はやく私たちも子を」

「そうだな」

 変わらず星辰の言葉を素っ気ない。

 ふと、星辰は遠くでこちらを見つめている女性の姿に気づき、目を見開いた。


 慧雪!


「……っ!」

 懐かしい女性の名を叫ぼうとしたが、すんでのところで言葉を飲み込み、首を振る。


 なぜ私はあの女人を慧雪だと思ったのだろう。

 慧雪のはずがないのに。

 彼女は陛下に毒酒を賜り、死んだのだ。


 星辰は目を細めた。

 なのに、先程の女性にどこか懐かしさと愛おしさを感じた。


 去って行く女人の姿を星辰は目で追った。

 急に黙りこくってしまったため、妻の薇蕾が首を傾げて問う。

「あなた、どうなさったの?」

「いや……ただ、懐かしい人を見た気がした」

「懐かしい人? 誰でしょう」

 薇蕾は夫の視線の先を追う。

 そこに、女性の姿があった。

「少し疲れた。部屋に戻る」

 歩き出した星辰を薇蕾は慌てて引き止める。

「待ってください。一緒にお花見をしながらお茶を飲む約束では、星辰さまの好物の菓子を作ったのよ」

 腕にすがりつく妻の手を、星辰はやんわりと振りほどく。

「すまない。今日はそんな気分になれない。また今度いただこう」

 そう言って、星辰は妻を残し去って行った。

 薇蕾は悲しそうに瞳を揺らした。そして、すぐに星辰が見つめていた女子の背中に目をやる。

「誰か」

 薇蕾は侍女を呼ぶ。

「はい」

「あの女は誰?」

「お答えします。新しく後宮に入った、雪答応です」

「雪、答応?」

 薇蕾は眉根を寄せた。

「あの女がいかがいたしましたか?」

 余計なお節介だとばかりに、薇蕾は侍女を睨みつける。

「おまえには関係ないことでしょう! 女官長の楚花がいなくなったからって、いい気にならないで! 楚花の代わりなんていないのよ!」

「申し訳……出過ぎたことを言いました。お許しください」

 すぐに侍女はその場にひれ伏した。

「おまえ、雪答応の行動を見張り、逐一奥さまにに報告しなさい」

「かしこまりました、楚花さま」

 楚花の命令に侍女は頭を下げ、逃げるように去って行く。

 薇蕾はこめかみのあたりを押さえよろめく。

「奥さま、大丈夫ですか?」

 すぐに楚花が薇蕾を支える。

「ええ、何でもないわ」

「今日はお部屋に戻りましょう。旦那さまも最近ご公務でお忙しくしていたので、疲れたのでしょう」

 楚花はなんとかこの場を取り繕う。

「そうね、あなたがいてくれて助かったわ」

「奥さま、今日は私がお側についていますから。ゆっくりお休みください」

「ええ……そうね」

 侍女に支えられ、薇蕾は覚束ない足取りで部屋に戻って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ