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復讐の後宮妃 この恨み絶対に忘れない  私を殺した悪徳妃に復讐を ー処刑された貴妃は、二度目の人生で牙を剥く―  作者: 島崎紗都子
第2章 後宮の頂点に登り詰めるために

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14 敵が目の前にいる

「茗皇貴妃さまにご挨拶を」

 後宮の妃嬪たちがいっせいに茗皇貴妃に挨拶をする。

 今日は茗皇貴妃主催のお茶会が開催された。

 新しく後宮に入った妃や、親しい者を招き交流を深めようという目的だ。もちろん、陛下も出席すると聞き、妃たちはこぞって着飾り化粧も念入りにほどこした。

 茗皇貴妃が住む(けい)(しよう)宮は華やぎをみせた。

 とにかく陛下の目にとまりたい一心で。陛下に寵愛されなければ、ここへ来た意味がないのだから。

 現在、後宮の主は茗皇貴妃だ。皇后はいない。皇后は雪貴妃として後宮にいた頃、病によって亡くなられた。以来、陛下も皇后を立てておらず、その席は空席のまま。そして、誰もがその座を狙っている。

 茗皇貴妃はこの場にいる妃嬪たちを見渡した。

「楽にしてちょうだい」

「感謝いたします。茗皇貴妃さま」

 妃嬪たちは、それぞれの席に腰をかける。

 茗皇貴妃は妃嬪に用意した席が、一つだけ空いていることに気づき首を傾げる。

「紅貴妃はまだのようね」

 空いている席は紅貴妃のものであった。

「いつものことですわ、娘娘」

「そうね、紅貴妃もお忙しい方。では、先に始めましょう」

 茗皇貴妃の合図とともに料理が運ばれた。宮廷の踊り子たちが踊りを舞い、楽曲隊が曲を奏でる。

 妃嬪たちは思い思いに宴を楽しみ、豪華な料理と酒を味わった。宴も半ばにさしかかった頃である。

「陛下のおなり」

 御前太監の声に妃嬪たちは身繕いをし、居住まいを正す。と同時に、陛下と陛下に寄り添うように紅貴妃が宴の席に現れた。

 茗皇貴妃主催の宴に、妃が遅れるなど本来なら無礼極まりない。だが、共に現れたのが陛下なら、誰も文句は言えない。

 紅貴妃の登場に、一気にこの場が華やいだ。

 豪華な衣装と艶やかな化粧、ため息の出る装飾品を身にまとい、陛下の隣を歩く紅貴妃に、みんなが羨望の眼差しを向けていた。

「昨夜は陛下と一緒だったため、支度に時間がかかったの。茗皇貴妃さま、宴に遅れて申し訳ないわ」

 ふふ、と紅貴妃は頬を赤らめながら言う。

 申し訳ないと言うわりには、態度はそうは見えない。むしろ誇らしげであった。

「いいのよ紅貴妃。陛下も顔色が良い様子。私も嬉しく思うわ」

 茗皇貴妃は微笑みを浮かべ、紅貴妃に席をすすめる。

「ふん、遅れてきたのに、なんて図々しい態度」

「そうよ、茗皇貴妃さまも寛大すぎます。このままでは紅貴妃がつけあがるだけ」

「けれど、今や貴妃で陛下の寵妃。ご実家も勢力があって陛下も一目置いている。誰も逆らえやしないわ」

 茗皇貴妃の侍女たちは口々に文句を言う。

「あなたたち、陰口を言うのはおやめなさい。紅貴妃はここにいる誰よりも、陛下をお支えしているの。陛下に仕える者として喜ばしいことだわ」

「さすが茗皇貴妃さま、お心が広い。後宮の頂点に立つ者の鑑ですわ」

 みんなの視線を浴びる中、紅貴妃は自分の席に向かう途中、慧雪と目が合った。

「紅貴妃さまにご挨拶を」

 慧雪は拝礼する。

 紅貴妃は真っ赤な唇を吊り上げて笑った。

「辛者庫から侍女を拾い上げたそうね」

「はい」

「おまえはその昔、陛下の寵妃でありながら侍衛と恋仲になり処刑された女がいたことを知っていて?」

 知っているも何も、その妃こそかつての自分だ。

 慧雪は視線を落としたまま答えない。もっとも、紅貴妃も慧雪の返事を求めているわけではない。

「雪貴妃という妃よ。そう、おまえと同じ封号を持つ者。そして、その雪貴妃によく仕えていたのが常夜という侍女だった」

 紅貴妃は慧雪の側に立つ常夜に視線を向け、口元に手をあてて笑う。

「雪答応、おまえも不通の罪で、処刑されないように気をつけなさい」

「肝に銘じます」

 忠告を受けたのではない。牽制されたのだ。陛下に取り入れば、雪貴妃のように憐れな末路になると。

「ふふ」

 陛下が主賓席につくと、当たり前のように紅貴妃もその隣に腰をかける。みんなが茗皇貴妃の顔色を窺うように見やる。しかし、茗皇貴妃は表情ひとつ変えない。

「陛下、お酒をどうぞ」

 紅貴妃はしなを作り、陛下の酒杯に酒を注ぐ。

「うむ」

「陛下、ふふ、昨夜はほとんどお眠りにならなかったからお疲れでしょう? 山芋の炒め物をどうぞ。滋養に効きますのよ」

 箸を取り、紅貴妃は陛下に料理をとりわける。

「そなたはよく気がつく妃だ」

「心から陛下をお慕いしておりますもの」

「紅貴妃」

「はい、陛下」

「はやく朕の子を産め。皇子だ」

「まあ」

 紅貴妃は嬉しそうに頬に手をあてる。

 二人の仲睦まじい様子を見せつけられながら、茗皇貴妃は遠慮がちに言う。

「紅貴妃、雪答応がまだ頭を下げているわ。早く座らせてあげたらどうかしら」

「あら、忘れていたわ。雪答応、お立ちなさい」

「感謝いたします」

 ようやく椅子に座ることを許された慧雪は、小刻みに肩を震わせる。

 目の前に自分を殺した相手がいる。雪貴妃が殺された時、紅貴妃はまだ妃の立場だった。自分が死んだ後、紅妃はその位を奪い取ったのだ。位があがり貴妃となり、ますます傲慢な態度で後宮に君臨している。


 許せない。

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