第46話 花園
「奏さん、こちらの清掃作業は完了しました」
「ありがとうございますハンスさん! 皆さんにも手伝って頂けて」
「とんでもないです」
あの事件から二週間。大遺跡バエルは爆発によって跡形もなく消失した。バエルがあったこの地には今、所々に瓦礫の一部が転がっているだけ。遺跡はあの大魔術の行使によって破壊されたそうで、石も魔力も自然に帰ったのだとエマは言っていた。
その影響で遺跡地域は魔力による地質変化が起き、辺り一面は草花の生い茂る豊かな草原へと生まれ変わっていた。
彼女を含む純血の魔族達は遺跡諸共その痕跡をこの世から消えて無くなった。
「奏ぇー、そろそろよ」
「うん、今行くね」
「彼らの魂に、安らぎがあらんことを」
草原の中心、あの爆心地には石の台座と標が立てられていた。台座にはここで起きた悲劇の記録が彫られ、立てられた十字架にはステラの名前が刻まれている。これはステラと亡くなった名も知らぬ魔族達、そしてこれまでに殺されてきた半魔達を弔う慰霊碑。
これはエマの発案。迫害が引き起こしたこの痛ましい歴史を、繰り返さないよう後世に語り伝えるために作ったもの。そして妹を護りその生涯を終えた愛の人、ステラのお墓を作ってあげるために。
「大丈夫? アルマ」
「……うん。アルマ、大丈夫」
有志で集った騎士団と冒険者達から献花捧げられる中、アルマは神妙な面持ちで姉の名が刻まれた十字架を眺めていた。
式が終わってからも、アルマはお墓の前に立っていた。
「奏」
「ステラ、もういない。悲しくて、寂しい」
「でも、あったかい。お姉ちゃんのこと、思い出すと。どうしてなの?」
「多分それは、ステラさんがアルマちゃんのこと見守ってるからだと思うよ」
「ステラが?」
「うん。見えなくても、もう会えなくても、ずっと傍にいてくれるんだよ」
「それなら、こわくない」
「」
「」
「またね、お姉ちゃん」
『しあわせになりな』
「……お姉ちゃん?」
振り返るとそこには、赤い花が咲き乱れていた。
その花の名前が何だったのかは忘れてしまった。ただ一つ、これだけは覚えている。
たしかその花の花言葉は――
「愛してる」




