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25. 骨身を削る所存

 我々はようやく日の目を見た。


 姫さまにお仕えできる喜びを配下ともども分かち合い。

 今日も法螺貝を高らかに鳴らして戦さ場を駆け巡る。


 骨身を惜しまず、粉骨砕身。骨だけに……


「カカカッ」アゴ骨が途中で外れてしまうが、元へ戻す。


 あの日我等のまえに現れた姫の艶やかなお姿。

 長生きはするものじゃな、まあ通り越してとっくに骨ではあるが。


「お館様。今日はどのようになされますかな」


 物思いにふけっていると我に声をかけてくる髑髏が一人。

 此奴は軍師官兵衛。あらゆる陣形を駆使する戦法が得意な奴じゃ。



「官兵衛よ、さくら殿から届いたデータは確認したか」

「はっぬかりなく」


 官兵衛は鎖帷子を着ているが、器用に袂からタブレットなるものを取り出して叩きだした。


 このタブレットなる物。指骨には反応しないが、姫さまから賜わった手袋を装着すれば、不思議なことにアイコンとやらに触れ動かすことが出来る。


「今日は三組参られると聞いておるゆえ、このように仕掛けるにはいかがか」


 官兵衛がアイコンとやらを叩くと、我の配下を模したドクロが一斉に動き出す。


 仕組みは分からないが我等を模した影絵のような物じゃとか。


 縦横斜めに一進一退の攻防を繰り広げ、どうやら鶴翼の陣を狙っているかに見える。タブレットの中のドクロ達。

 

 みるみるうちに仮想敵陣を翻弄して最後は討ち取った。

 まずまずといったところか。


「あい分かった。それでよいじゃろう」


「この結果は上々でありましたが、戦さは水物。実戦では異なる結果になるやもしれませぬ」

「その時はそれまでじゃ」


「我等は、姫さまの期待にお応えするべく冒険者とやらに一泡吹かせようぞ」


「えむぶいぴ? なる褒美の用意があると聞いておろう?」

「はっ」

「楽しみですな」


 このような姿形になってから、物欲は無くなったはずじゃが骨に良い物をいただけると聞いて心が揺れた。我はカルシウム満載のウェハースが好きじゃな。



「出来る限り本物に近い合戦を繰り広げるよう姫はお望みじゃ」


「でしたら、きっとお気に召されるでしょう」


 姫さまにお仕え出来るこの仕事場は快適である。

 労働時間は守られており、サービス残業もない。

 時折、骨に良いからといただく茶菓子も美味い。




「紅葉さま、髑髏隊に姫さまと呼ばれてますの?」

 三階層のモニターチェックをしていたさくらが作業の手を止めて聞いてきた。



「ちょっさくら、恥ずかしいから他所では言っちゃダメだよ」

「恥ずかしいですの?」


 真顔で問われて急にこっぱずかしくなった。

「当たり前でしょ?」


「山野家なんて遡っても、家来がいたためしもない平々凡々のど庶民よ?」


「ドクロ達が何で私をそう呼ぶか分からないのよ」


 紅葉は髑髏達との初対面の日を思い出す。


 サッチーに言われるまま、タブレットをタップし続け、合戦要員を捻出。


 外に放たれ自由を噛み締めているのか狂喜乱舞の髑髏達。

 よっぽど嬉しかったのねとは思ってたけど。


 予定人数が揃ったところで、一際体格のよい髑髏武士の鶴の一声で、鎧姿の髑髏達が皆こうべを垂れて傅く様は中々壮観だった。


 私も偉くなったもんだといい気分になりわしたけどね。

 一過性のものならその場限りのノリで構わないけど、それがずっと続くのはちょっとどうかと思うわけ。


 この通り私姫さまじゃないから。一般庶民だから。

 他所では広めないで下さい。お願いしますよ


 官兵衛と髑髏達の親分、お館様にはくれぐれも、くれぐれもと念を押しとかなきゃな。


 モニターの向こう側で準備運動をこなしている髑髏達を見ながら紅葉はついため息をつくのであった。


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