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19.草原エリア

「さくら、一旦標準に戻してくれる?」

「はい、紅葉様」


 さくらが紅葉の指示でモニターを操作すると大画面表示から、個々のモニター表示に切り替わった。 

 其々に冒険者達の様子が映し出される。


「モニター③を大画面で出してくれる?」

「はい、モニター③に切り替えますの」


 モニター③に切り替わると一階層の草原エリアが映し出された。


 迷宮の中だというのに、そこでは太陽がサンサン輝いて、見たこともない木々が生い茂る所と膝までの高さはありそうな草が見渡せる限り遠くまで広がっている。

 風が吹いてるのか、時おり草が揺ら揺らと揺れている。


 うん良い景色! なんだかあそこでキャンプしたいなぁ……テント張ってBBQするの!


「山野さ〜ん、一階層は三種類の魔獣を設定してましたよね?」


 ほけーとした面持ちでモニターを見ていた紅葉に、伊東から声が掛かる。


「あっええと、伊東さんオススメの角うさぎと、私がどうしても初回に入れたかったスライム。その他に二種類選んだので四種類ですよ」


 紅葉の返答に伊東は、顎に手を添えながらふむふむと頷く。


 伊東さんお薦めの角うさぎを確認した方がいいかな……


「アギョウ、角うさぎ達の今日の調子はどう?」


 アギョウとウンギョウも部屋に入った頃合いでさくら同様インカムを付けている。


 アギョウはその際角うさぎのリーダーに連絡を取っていた。


 狛犬さんのインカム姿。和洋折衷で良い感じよ。


「はいマスター! 皆すこぶる元気でござる」


「角うさぎ達は異常はないと……うん了解」


 アギョウが話し終わるとウンギョウが、角うさぎ以外について報告を始めた。


「スライム、攻殻アルマジロ、ファイアウルフ等のチェック完了。ウルフに体調不良で病欠一頭であります」


「了解! 病欠ウルフちゃんには、あとでポーション与えてね」


「YESマスター!」


「角うさぎリーダーより伝令!」



 アギョウがおもむろに立ち上がり、敬礼の姿勢をとった。


 おっと、何か次の報告があるらしい。背もたれに深く腰掛けていた姿勢を正す。

 紅葉は続きを促すように頷いた。


「当方本日デビューの仔うさぎあり、マスターには闘いぶりを確認されたしだそうです」


「仔うさぎのデビュー戦ですか~」


 これはいい時に来た的な顔で微笑んでいる伊東がいた。


「モニター切り替えよろしく」


「角うさぎエリアに切り替えますの」








「辺りのスライムは倒しきったな、次に行くぞ!」


 雄吾は後ろに続くパーティーメンバーへ声を掛けた。


 雄吾はこのパーティーのリーダー兼斥候担当だ。


 メンバーから一メートルほど先行して、周囲の気配を探りながらパーティーを牽引する。


「ガサガサガサ」


 右手側から何かが草を踏みしめながら、かなりのスピードで向かってくる音が聞こえた。


「皆注意しろ! 右手からくるぞ!」


 パーティ全体の警戒レベルが上がる。


「あっうさぎちゃん!!かわいい~」


 修道女のミキから緊張感のない黄色い声が上がる。


 草むらから出てきたのは、ピンク色のふくふくとした三匹の仔うさぎだった。


 親指の第一関節位の角が額に生えているところみると、生後六か月だろう。


「何だなんだ。角うさぎの仔どもか見た目可愛いな」


 雄吾は目の前に姿を現した角うさぎに、警戒心を解いた。


「雄吾よーこいつら弱っちそーじゃん。やっつけてさっさと行こうぜ」


 魔獣と敵対する冒険者の対応としては、何ら間違ってはいない。


 健斗以外のメンバーが甘々過ぎるのだ。


「だっ駄目だよ健斗、まだこれって仔どもじゃない、ほっといて先行こうよ」


 楯使いの健斗に無視して先行するように進言するのは、魔法使いのリサだった。


「リサ、こんなんでも魔獣だぞ」


 健斗は何言ってんだ此奴という顔で言葉を返す。


「皆んなどうしたい?」


 雄吾は仔うさぎということもあって、即断は避けた。


「決まってるだろう? 小さくても魔獣だぜ? 倒してなんぼだろうよ」


 健斗はショートソードを構え直し戦闘態勢を取る。


「ええっ倒さなきゃダメなの?」


「仔うさぎは無視して先行こうよ」


 女性二人からは反対意見が出る。


 人間達の意見がまとまらない僅かな時間。


 仔うさぎ達は知ってか知らずか、草むらへとその身を隠した。


「あっくそ! せっかくの獲物が逃げちまったじぇねかよ」


 ショートソードを構えていた健斗はブツブツ言いながら手を下した。


「あんなの殺ったら夢見が悪いわよ」


「そうだよ~」

 

 女性陣は積極的に狩りに行こうとしていた、健斗が諦めたのを見てほっと胸をなでおろした。


 だがしかし、魔獣は舐めていては駄目だということを後々思い知るのであった。


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