15.迷宮のレベル
本文は修正なし さっちゃん呼びをサッチーへ変更
聞いていたとはいえ、手首に吸い込まれるように消えた透明ボードに少し驚く。
「迷宮情報を見たいときは、名前を呼んで指示してください」
「はい、それじゃサッチー。迷宮情報見せてくれる?」
伊東の言う通りに、紅葉は手首に向かって声を掛けた。
あらためて命名するのも面倒で、サッチーのことはそのままサッチーと呼ぶことにした。
《はいは~い。貴方の下僕サッチーです》
呼びかけに応えたサッチーは、紅葉の目の前におおよそワイドサイズPC位の画面を出してきた。
いちいち下僕って言っちゃうのが、何だか釈然としないが、とりあえず今はほっておくことにする。
「表示されたようですので、拝見させてもらっても?」
「あっどうぞ。迷宮情報ってこんな風に見えるんですね伊東さん」
紅葉の了承を得て隣に移動してきた伊東は、展開された画面に目を向けた。
「ええ、基本的にはこんな感じですね」
◇迷宮名:未設定(仮呼称迷宮No.00999)
◇迷宮レベル:3
◇迷宮ポイント数:残1500000/3000000
◇迷宮エネルギー:100/3000000
◇迷宮階層数:2
◇一階層:草原エリア■
◇二階層:森林エリア■(セーフティーゾーン設置)
〇階層増設:三階層増設可
◇迷宮管理人:山野紅葉
◇迷宮管理人所有スキル:治癒術(魔物)、空間収納
◇従魔:カーバンクル×1、狛犬×2
「山野さんの迷宮レベルは3ですか。幸先いいですね」
「これっていいですかね?」
紅葉の管理する迷宮情報が簡易表示されている。
紅葉は、事前説明でステータスが高いと聞いていたが、それが一体何と思っていたが、迷宮レベルに影響が出るらしい。
よほどの事がなければ、通常はレベル1から始まるとの事だから、スタートしては良いってことかな?
「迷宮レベル1だと中々でないドロップ品も、レベル3になる事で出現率が高くなるんですよ」
「……?」
伊東の言うことに今一ピンと来ない紅葉は頸をかしげる。
「ドロップ品が良く出るということが分かれば、冒険者のリピート率も自然と高くなります」
「ああ、言われてみればそっか」
「他所よりもうま味のある迷宮だと思ってもらえれば、売上も良くなりますよ」
次の項目、迷宮ポイント数に紅葉は目を向けた。
迷宮ポイントの1ポイントは一円換算。
新規参入者には迷宮管理協会から手厚いサポートがある。
新規参入者の紅葉も支度金の一部として三百万円受け取った。
それが3,000,000ポイントとして表示されている。
その中から一、二階層のモンスター達や、迷宮に設置する什器等に充てたため、残りがしっかり反映されているというわけだ。
各エリアの■部分をタップすれば、設置しているモンスター達を確認することが出来るようだ。
管理する側に自分はいるんだと実感がわいてくる。
試しに草原エリア■をタップしてみる。
◇一階層:草原エリア
→ 配置モンスター:スライム※、角うさぎ※、甲殻アルマジロ※、ファイアウルフ※、
「確かにポイントを使って購入したモンスター達だ……」
《初心者向けお薦めシリーズから選択されています》
呟いた言葉にも反応してくれるとか……独り言言ってても寂しくないかも
一階層目は初心者向けを念頭に置いていたので、一番目はスライムを選択した。
スライムは外せないでしょ……日本人は結構スライム好きだと個人的に思う。
それ以外は割り振ったポイント内で購入できる、比較的初心者向けモンスターを紅葉は伊東に選んでもらっていた。
モンスター名の後ろにつく※をタップすれば、そのモンスターの詳しい説明が表示される。
角うさぎ※の後ろにある※をタップしてみる。
モンスター名:角うさぎ
特徴:見た目ピンク色の可愛らしいうさぎ。
普段は大人しいが三メートル以内に接近した場合、なりふり構わず猛ダッシュで向かってくる。
必殺技:飛び蹴り
弱点:人参 人参を食べている間だけは3秒間攻撃をしてこない。
「なるほどなるほど」
「角うさぎは女性に特に人気ですからねぇ……僕のお薦めです」
画面を覗き込む伊東は何故だか誇らしげな顔をしている。
お茶目さんか……。
「あと伊東さん。迷宮エネルギーって何ですかね?」
「ああ説明会でも話が出たかと思いますが、簡単に言えば、冒険者から回収出来たポイントですね」
「回収?」
「100ポイントあるのは、きっとプレオープン分でしょう」
「迷宮にやってきた冒険者達の喜怒哀楽が数値化された結果ですよ」
「ある程度ポイントが貯まれば、レアモンスターを出す事が出来ますよ」
「レアか……それはまだ先の事になりそうですね」
今はまだそんな先の事まで考えられない、まだ始まってもいないのだから。
「後々の楽しみにしておきます」
「これを見てるだけでも夢が広がります! いくらでもワクワク出来ますね」
「やり方はいくらでもありますから、気長に行きましょう」
伊東の言葉に頷く紅葉だった。
「そう言えば山野さん。迷宮の名前はどうされますか? プレオープン時は仮呼称のままで大丈夫でしたが、本格的な開業は正式名称が必要になりますよ」
「名前ですか……正直プレオープンの準備ばかりが頭にあって、名前は考えてませんでした」
「開業日まであまり時間は無いですが、遅くても三日前には連絡ください」
「……善処します」
それからしばらくの間、あーでもないこーでもないと従魔達をこねくり回しながら悩むのであった。




