表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/43

11.新米冒険者2

「山野さん。先ほどは済みませんでした」

 何故だか伊東は平謝りだった。

「伊東さん何かしましたか?」

「あれっこれ全く気づいてないや」

 紅葉の顔を見た伊東はそう理解し、頭をがしがしと掻き毟る。

「彼氏面して勝手に手続きを勧めたことです。それに肩に手を回したこととか……」


 あっあれですか……思い出した瞬間、紅葉は自分の顔が赤くなるのが分かった。


「ええと言い訳になりますが、ここって女性が一人で登録しようとすると変に絡まれるんですよ。男性連れだと思われていた方が何事もなく進むので……」


 冒険者組合の入口で、紅葉を舐め回すように見ている男の視線に伊東は気づいていた。

 自分が離れた瞬間、男が紅葉に近寄ることは容易に想像できた。

 なので了承は得ずに親密そうに振る舞ったのだ。


「いえっそれは気にしてません。ダイジョブですよ伊東さん」

 紅葉の全否定に少し寂しさを覚える伊東。いや、感じてしまった自分に内心驚いていた。


「ははは。良かった怒ってなくて!」

「それじゃ気を取り直して『魅惑の迷宮』行きましょうか」

「はい」

 二人は『魅惑の迷宮』の入口をくぐった。


「へぇーこんな感じなんですね?」

 エントランスをくぐるとそこは南国のビーチ、高級リゾートかと思う風景が広がっていた。

「伊東さん。私達もう迷宮の中に入ってしまったんでしょうか?」

 紅葉はもうどこかの階層にでも転移させられたのかと驚く。

「いやいやまだ入り口ですよ。入場料払ってませんし」

「ここは管理人の趣味で南国リゾート風の受付になってるんですよ」

「そうなんですね」


「いらっしゃいませ」

「ようこそいらっしゃいました!」

 パレオを腰に巻き付けた迫力ボディの水着美女達がやって来た。


「あら伊東君!」

「伊東ちゃんお久しぶり」

「あっ鏡花ちゃん、静香も久しぶり!」

「キョウカちゃんにシズカ……呼び捨て……」

 迫力ボディのお姉さん達は、どうやら伊東さんの知り合いのようだ。

「もう! 伊東君たら隅に置けないですわね。彼女さんと一緒に来るなんて」

「いやー困ったな」


 絡まれつつ心なしか伊東さんの鼻の下が伸びてるような……

 紅葉は伊東達の会話に混じらないようその場を離れ、カウンター脇のグッズコーナーを物色する事にした。

 あっこれ可愛いかも……額に赤い石が付いた、子ぎつねのような形のマスコットに手が伸びる。

 カーバンクル……これ可愛いから買ってこ。

「山野さんそういうの好きなんですね?」

 振り向いた紅葉は伊東の顔がやけに近くて慌てる。

「ああ! 伊東さん。もうきれいなお姉さん達はいいんですか?」

「ええ。入場手続きは済ませたので行きましょう」

「ありがとうございます。その前に私これ買ってきますね」

 動揺したのを隠すかのようにそそくさと受け付けへ向かった。


「では、山野さん。これに装備品が入ってますので、着替えて貰っていいですか」

 伊東は紅葉が戻ると大きな袋を手渡した。

「着替える場所は向こうなので行きましょう」

「はい」


 紅葉は騎士系の装備品を身に纏っていた。

 胸当て部分が、若干ブカブカなのはご愛嬌、どうせ私は痩せぎすよと悪態を吐く。

 借りている身としては、文句を言う筋合いはないけれど、前の持ち主は豊満な人だったんだろうな。

 伊東さんとどういう関係なのかが気になるところだけど……

「お待たせしました。どうですか?」


 あまり待たせてもいけないと思い、急いで伊東さんの元へ駆け寄った。

「思っていた通り良くお似合いですよ山野さん。サイズが合ったようで良かったです」


 胸は全然合ってませんでしたけどね……ニコッと無言で微笑み返す紅葉であった。


「伊東君。彼女の装備品は今度ちゃんとしてあげなよ! 胸周り合ってないから」


 キョウカちゃんと伊東さんに呼ばれていたお姉さんが早速バラす。


「えっそうでした山野さん? なんか済みません。ピッタリ合うと思ってたんですが……」

「いえいえ。私こう見えて着ぶくれする方なんで……気にしないでください」

 

「伊東さん。それより早速魅惑の迷宮行きましょう!」

 

 紅葉はもう何事もなかったかのように振る舞い、伊東の袖口を引っ張った。




「では気を取り直して……」

「山野さんは迷宮に潜るのが初めてということですので、私の少し後ろから付いて来てもらえますか?」

「はい」

「まず、この魅惑の迷宮ですが、第一層はスライムゾーンです」

「あのまん丸の最弱と言われている奴ですね」

「ええ、ただ集団で来られると厄介です」

 伊東は、片手に盾、もう片方に剣を持っている。

「一層は私だけでも対応できますので、山野さんは周囲を観察して下さい! ご自身の迷宮に取り入れつもりで……」

「取り入れるつもりで……ですね。分かりました」

「あっあとこれを服の内側に入れてください。ポケットでもいいです」

 伊東から渡されたのはお札だった。

「これには、防御魔法が付与されてます。一定時間効果があります。山野さんにスライムが飛んで来ても弾いてくれますので、安心してください」

「いいですね! 遠慮なく使わせて頂きます」

 先頭を行く伊東は、向かって来たスライムを斬ったり、叩いたリ、蹴っ飛ばしたりと危なげなく滅していた。

「へ~伊東さん中々やる人なんだ……」

 紅葉と付かず離れずの距離を保ち、伊東はときおり立ち止まっては、紅葉に迷宮の解説をした。

 二人は順調に迷宮の中を突き進んでいった。

 









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ