第2話「能力者」
「ありがとう、助かったわ。」
態勢を立て直し、東雲綾は御子柴犀に礼を言う。
「仲間なんだから助けるのは当たり前だ、それより向こうから来るぞ気を抜くなよ。」
犀はこういう事をさらっと言えるからかっこいいのだ。そう思いつつ碓氷綯音は耳を澄まし音を聴く。
「足音は全部で5人分する。」
「わかった。ここは何とかするから綯音は先に奥にいってくれ。ここは俺たちに任せろ。」 そう言われとので、急いで奥に向かうことになった。
この銀行は2階建ての作りになっていて、最奥と呼ばれる場所は2階にある。階段を上がって少し行くと、そこは少し開けた場所となっていた。目の前には大きな金庫の扉があるはずだったが、そこには何もなく金庫の内側に金庫の大扉のものであったであろう破片が散らばっていた。金庫の中はもう一つ金庫の扉があるようだが、それすらも開けられていた。そして気づく、誰かいる。その誰かも俺に気づいたようで、振り返る。銀色の髪の中年に見える男だ、軍服のようなものを着ている。眼が合う。瞳が碧い東洋人ではないようだ。
男は、
「おいおい、ここは子供の遊び場じゃないぜ。」
と、どうやら挑発してきたようだ。綯音は、
「アンタだってその格好、銀行の職員じゃないんだろ。」
と返した。
数秒の沈黙の後、男が先に動いた。武器を構えたりしないところを見るとやはりギフターと見てよい。通常ギフターは、その強大な能力を持つゆえの弱点がある。それは、本人の戦闘能力の低さや慢心、これらは力があるからこその心の余裕である。俺はそんなことはしない。なぜなら他と違って能力が『音を操る』なんとも残念な能力だからだ。サシなら発砲音を誤魔化すくらいにしか使えないだろう。そしてこいつも隙を見せず確実に殺しに来た。
距離を詰め、男はそのまま拳を振り下ろす。拳に触れないようによけ反撃を繰り出そうとしたその時、床が崩れた。男が触れていたところから床がまるで分解されていくように崩れる。バランスを崩し、足場がなくなり、下のフロアに落ちてしまう。これは迂闊に反撃しなくて良かった。さっきのバラバラの金庫の扉といい床と言い、こいつの能力が分かってきた。
下にいる綯音を上から見つめ、男は飛び降りてきた。あの男は俊敏だが、流石に空中では避けられないと思い、腰のホルダーから拳銃を構え撃つ。奴は避ける素振りを見せるどころか弾道を見極め素手で掴みかかった。すると弾は、小さな音を立ててバラバラに砕け散った。さらに、俺の近くに何事もなかったかのように着地し、そのまま殴る態勢に入る。それを慌てて手元の拳銃でガードするが、それは無残にもバラバラになってしまっていた。これで理解した。こいつの能力は、『触れたものを分解する能力』、それもただ分解するだけじゃない。触れたものを押し出しつつ分解しているのだ、つまり『少しだけ跳ね返している』ということ。弾丸は手に触れた瞬間に前に進まなくなり、バラバラになる。つまり武器は効かない、なんにしろ嫌な能力であった。
「おいガキ。そろそろ観察は済んだだろ。それとも手も足も出なくて逃げることしかできないか?」
少しイラッときた。男は俺の能力が拳銃の発砲の
「冗談はよしてくれ、時間稼ぎだ。」と男に返す。
壁を分解し破片を分解しこちらに飛ばしてきた。目くらましのつもりかと、少しだけ相手から注意を逸らしてしまう。男は大きく踏み込んで、宙を舞っている破片の下からアッパーを繰り出してくる。思わず両手をクロスしてガードをするも、左腕にまともに攻撃を受けてしまう。服の左腕の部分がはじけ飛び、下着けていた手甲が砕ける。直に喰らわなかったのが幸いだ。そんな場面そうぞうしたくもない。距離を取ろうとするが、続けざまに拳を繰り出す。避けきれない。ここで決めるしかないと思い、綯音は相手の右手を左手で掴んでいた。
「ガキ、何をした。何故腕が吹き飛ばない。」
「それはな。俺の能力だぜ。」
そういって、男に蹴りを入れる。これがまともに入った初めての攻撃。そして男は驚いているようだ。
「お前の能力は、音を操作することじゃないのか。」
なんだ、気づいていたのか。だが、そういうところも能力者の弱点というやつだ。
「俺の能力は一つじゃない。」
土煙も治まっている。男はさらに驚いたが、同時になぜか嬉しそうだった。
「これは驚いた...ほんとにそんな奴がいるなんてな。お前はどっちなんだ?」
どっち?質問の意図がよくわからない。何の能力か?と言うことなのだろうか。少し考えてから種明かしだ。
「教えといてやるよ。俺のもう一つの能力は、『触れた相手の能力をコピーすること』だ。アンタの分解する能力を頂いて、それを相殺したんだ。」
「なるほどな。お前の2つ目の能力のせいで、俺の能力は通用しないわけか。なんて面倒なことしてくれる。
まあ、俺の仕事は一様終わってるし、後はお前を潰して帰りたいんだがよお。」
「絶対に逃がさねえぞ。」
「じゃあ、力尽くでどかしてやるよ。」
綯音のギフターとしてはインチキくさい能力を聞いて自分の能力が通じないと分かった男はそれでも諦めず真っ直ぐに向かってきた。こいつは、能力がなくても十分強い。避けたつまりが一発モロにもらってしまう。すぐに起き上って、肉薄する。少し能力者としては泥臭い殴り合い。倒しても起き上る、倒されても起き上る...絶対に負けたくない。
倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ.....
「さっさと倒れろ!このクソガキッ!!」
「うるさい!アンタが倒れろぉ!!」
いつの間にか、2人とも熱くなって同じようなことを口走っていた。綯音は楽しくなってきてしまった。右左蹴り頭突き膝蹴りとまるで喧嘩のようだったが、こんなに体を使ったのは久しぶりだった。すると男が疲れのためかよろけた。この機会を逃しはしなかった。
ゆっくりと相手の懐に入る、いや正確にはゆっくりではない、お互いに研ぎ澄まされた精神状態からすればとてもゆっくりに感じただけであった。極限状態の男にも綯音の動きはゆっくり映ったが、自分の身体はその速さについてこなかった。そして、この研ぎ澄まされた感覚が敗因となった。綯音の拳は男の顔を狙ったが、届いたが男の能力によりしっかり入らなかった。男は予想してしたのだ、だからこそ反応した。すぐに反撃する。男の攻撃が入るより一瞬早くとてつもない音の波が、男の耳を襲った。
男の動きが止まる。いや巨大な音の壁に阻まれたというべきか。身体から力がなくなり崩れる。
「普段よりも研ぎ澄まされた感覚は敏感になりやすい。あの距離であんな大きな音、刺激が強すぎたんじゃないか?」
辺りは静まり返っている。しゃべっているのは、綯音だけだ。
「ま、そんなこと言ってももう聞いてないか。」
そう、男は気絶している。綯音は勝ったのだ。勝利を確認すると綯音は緊張の糸が切れその場に倒れこんでしまった。
さて、第2話ご視聴頂きありがとうございます。投稿するのに間があいてしまって申し訳ありません。よろしければ感想などをどんどんお聞かせください。
さて新学期始まりましたね。皆さんは社会人でしょうか、学生でしょうか。4月と言えばやはり桜と出会いの季節ですよね。お花見行ってまいりましたがとても楽しかったです。僕は学生なのですが、新しいクラスにようやく慣れ始めたところです。皆さんはどうでしょうか?もしよろしければこの春にあったエピソードなどをお聞かせいただけないかな、なんて思っております。
それでは、あとがきはこのあたりにして。みなさんまた次回お会いしましょう!




